第65話 キッド10ヶ月のお祝い。名誉の傷跡。

「キッドちゃん、いらっしゃい!!」「キャンキャン!」

なんだかんだで落ち着く実家。定期的に来てしまう実家には、「チャコ」と名付けられた元々捨て猫だった愛猫がいる。


「お邪魔しまーす。」「何か食べる?お腹は?」「空いてないかな。チャコ、こんにちは!…あれ?」「そうそう、チャコったら他所の猫と喧嘩して来たみたいで…」「痛そう…病院は行ったの!?」「えぇ。塗り薬もらって来たから治るまで様子を見るしかないんだけど…。」


よく聞く「縄張り」なのだろうか?チャコは目の上に痛々しい傷を作っていた。犬がマーキングをして歩くのと同じで、猫にも「入られたくない領域」がきっとあるのだろう。


「チャコ、大丈夫?」「ウニャァン」「痛かったね…」「ゴロゴロ…」「ふふっ(笑)可愛い。」


チャコがフフンと鼻を鳴らし、ゴロゴロと喉を鳴らしながら私の足元にスリスリと寄ってきた。

キッド はと言うと、母に抱っこされてユラユラ…。

本当にキッドは甘え上手だ。

そして、今日のメインイベント!!


「キッちゃん!10ヶ月のお誕生日おめでとう!!」

今日で私と出逢って10ヶ月。いつもと代わり映えないけど、お馴染みのケーキでお祝い。


「キッドちゃんおめでとう…って、なんだか重くなったんじゃない!?」「やっぱり?」「なんだかズシンと来る(笑)」「あまり太らせちゃ駄目なんだけど…。」


薬の副作用もあってか、おやつのおねだりが最近激しい。

そして、それに負けてしまっている私がいる。体重の増加は手足に負担がかかってしまう為、注意と言われているのだけれど…。


「キッド、待てだよ!」ジーーーーーーっ…。「その目なんなの(笑)よしっ!いいよ!!」

バクバクバクバク…。相変わらず凄い勢い(笑)まるで数日何も食べさせていないかの様にがっついて食べる。


「チャコも食べるかな?」「チャコはそういうの食べないのよ。」「そっかぁ。」


ふとチャコを見ていると、「グルニャン」と鳴き、キッドの耳をペロッと舐めていた。それを見た私とばぁばは、思わず「可愛い」と声を揃え、微笑ましく見つめてしまった。


…と、思いきや、今度は突然チャコがキッドの手を甘噛みしてきた。

「キャン!」「えっ!!」「こら!チャコ!!」「どうかしたのかな!?」「チャコ!駄目でしょ!?いつもこんな事しないのにっ…」「きっと、なんか言い合いでもしてたんじゃない?(笑)キッちゃん尻尾が隠れてるもん。」「そうなの?チャコ!?」


チャコは人間の性格にしたら気が強い女の子に違いない。それに比べ、キッドは普段おっとりとしていてホゲーっとしている。もしかすると、そんなキッドにチャコは渇を入れてくれたのかもしれない。


「かおり、今夜は泊まって行ったら?」「でも、キッドの薬も用意してきてないし…今度泊まりに来るよ。」「そう。気を付けて帰りなさいよ。」「うん、分かってる。」


こうして、母とチャコとサヨナラした私とキッドは、帰りにペットショップに寄り、沢山のおやつを買い込んで自宅に帰った。

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