第54話 僕は人間になりたかった。

かおりさん…かおりさん起きて下さい。

何だか、目が開きません。どこにいますか?かおりさん。

とても…眠くて眠くて仕方ないんです。


上手く息が出来ません。

かおりさん…どこですか?


「キッちゃん…?キッド!?」


僕はかおりさんに抱き抱えられる。

そして、今までの出来事が頭の中に次々と思い浮かんでくる。


あの日、かおりさんと出逢えた事。旅行をした事。

あの男からかおりさんを守ろうと必死に吠えた事。

ミルキーちゃんやその仲間達との出会い。

かおりさんとの、4時のお散歩デート。


沢山、沢山楽しい事がありました。

また…出来ますかね?

ミルキーちゃんと、また会う約束もしてるのに…こんなんじゃダメですよね。


「クゥン…」「キッちゃん、苦しいの?」

かおりさん大好きなんだよ。

離れたくない。もっともっと側にいたい。

遊びたいよ。お散歩デートしたいよ。


でも、苦しいんだ…。


「キッちゃん、逝けるなら逝きなさい。」

「もう、苦しい思いはしなくていいのよ。」


僕の目の前に、かおりさんの姿が見える。

これは…幻だろうか?

沢山の涙を流し、僕の身体を撫でてくれている。


「キッちゃん。キッちゃん。」


かおりさん、僕は人間になりたかった。

とても叶わない夢だけど、もし次生まれ変われるとしたら。


次は必ず人間としてかおりさんに会いに来るからね。

そして、かおりさんと恋に落ちて…必ず「人間同士の恋愛」をするんだ。


「ありがとうね。本当に…今までありがとう、キッちゃん。楽しかったよ。幸せだったよ。」


それまでの少しのお別れ。

かおりさん、僕はかおりさんといて幸せでした。


あの日、かおりさんに見つけて貰えて、かおりさんの彼氏として今までの日々を過ごせてとてもとても幸せでした。

ねぇ、かおりさん。かおりさんはどうだったかな?


大好きな大好きなかおりさんへ。



いつでも、側にいるからね。だからもう泣くのはやめて?最期は笑ってよ。

ずっと、ずっと愛してるよ、かおりさん。








私にできることって何だろう?

私には何ができるだろう?


不器用で未熟な私が、

あなたにできる事って何だろう…。


その答えに、私はいつかたどり着ける事が出来るのかな?



平成27年。とある春の木漏れ日がさす暖かい日。

大型ショッピングモールで、私はあなたに出逢った。出逢って間もなく、私はあなたに一目惚れをした。


あなたは私の家に来ることになった。


初めて会った人の、どういう人かも分からない人の家に行くという事は、とっても勇気がいることだったでしょう。


これから私はあなたに何をしてあげたらいいのだろう?どうなっていくのだろう?喜びと期待しか浮かばない。嬉しさを抱えたまま…ううん、嬉しさしかない中で、あなたは私の家に着いた。


「ただいま。ゆうたさん。今日から家族が増えるんです。この子が新しい家族。可愛いでしょ?」


「はぁ?勝手に買って来たのかよっ!?何が新しい家族だ!知らねーよ。俺はソイツの面倒なんてみねぇからな。全部かおりがやれよ。」


「大丈夫。あなたに迷惑はかけないから。私が責任を持ってこの子を育てるから。だから、家族として迎え入れていいでしょ?」


「ふんっ!勝手にしろ‼️」



あなたを私ははこれから一生をかけて守り抜いてみせる。あなたは一人では何も出来ない。だから、私を沢山頼って欲しい。


だって、私は…



人間なのだから。


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