第39話 11ヶ月のお祝い。出逢った場所へ…

「今日は何の日だっ!!」

匂いで分かりますよぉー!!これは「お祝い」の匂いですね!?


「キッちゃん!11ヶ月のお誕生日おめでとう!!」

やっぱりね。ふふん。僕のお鼻はまだまだ元気ですよぉ!?

かおりさんがたまに僕に隠れておならしても分かるんですからね!!臭いです!!


「キッちゃん、待て出来るかな!?」ボーーーーーッ…。一応「待て」の儀式です。


「見えないもんね…仕方ないか。いいよ!!」

うひょーー!!バクバクバクバク!!あちらこちらにポロポロ溢すのはごめんなさいです。でも、相変わらず美味ですねぇ。


かおりさんは毎回違う味のケーキを用意してくれる。

今までは見た目も楽しめたが、それが出来ない今は味を思う存分楽しむしかない。


「どう?美味しい!?」バクバク…。「すっごい食欲(笑)これ食べ終わったらお外の空気を吸いに行こうね。」


「今のうちに出来る事を。」


かおりさんの想いが最近特に強く伝わる。

いつ、何が起こるか分からない僕の病。僕だってそうだ。

かおりさんに沢山の僕の記憶を残したい。それも「楽しい」と思える記憶だけを…。


「まだまだ寒いねー。大丈夫!?」少しだけ寒いけど、やっぱりお外の空気はいいですねぇ。かおりさんに抱っこしてもらっていて情けないですが、ちゃんとおしっことうんちはまだ外で出来ます。

ただ、足が中々上げれなくなってきたので、恥ずかしいですが女の子みたいにしておしっこしますが…。

そこは誰も見てない所で内緒です。


「また近々、ミルキーちゃんの所に行こうね。」「キャウン!」「結婚させてあげたいな…ミルキーちゃんと。」


えっ!!

結婚…実はもうしてます。

「仲良し」だと簡単に結婚できますよ!?スピーディーにスパパパーンと終わらせました!!…出来る男です、僕は。


「キッちゃん、新しいオモチャ買いに行こうか!!ベッドももっとフカフカのやつ!!」

かおりさんの性格は今更ながらせっかちだ。

こうと決めたらすぐ行動。僕は車に乗せられ、大型ショッピングモール…

そう、僕がかおりさんと出逢った場所へと到着した。


「うわぁー…懐かしい!」


「キャンキャン」「ウォンウォン」「ギャンギャン」


皆が一生懸命吠えている。

匂いをクンクンすると、沢山の犬と猫…それから違う動物の匂いで目まぐるしいです。


「おい、お前!」「え?僕ですか?」「俺を持って帰れ。」「い、いや、それはかおりさんの了解がないと無理です!」「この檻から早く出たい!」「き、聞いておきますっ!!」


「ねぇねぇ君!!」「僕…ですよね!?」「君、お兄ちゃんいらない?」「どういう事ですか!?」「僕がお兄ちゃんになってあげるよ!だから連れて帰って!」「か、かおりさんに聞いて見ます。」


僕もかおりさんに出逢う前、ここに並ばれていた。

「キャンキャン」と吠えながら、人間の顔を見ては媚を売ったりもした。

まだまだ小さかった僕。そこにかおりさんが現れ僕を見つけてくれた。本当、「運命」だと思う。


ここで売れなかった犬や猫は、「里親会」や「譲渡会」と呼ばれる所で飼い主様を探す。

運が良ければ最高の飼い主様に巡り会え、そうでなければ虐待をされ、悲しい犬生を閉じる時もある。


僕はラッキーだった。

こんなにも優しいかおりさんに巡り会えた。

それだけで幸せ…そう思わなければいけない。


「キッちゃん、帰るよー。」


何もしてあげれなくてごめんね、みんな。

ここにいるみんなが、どうか幸せに暮らせることを願ってます。

僕はみんなにお別れを言い、この場を離れた。





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