第38話 君を想う日。僕の視力が奪われた日。

「ミルキーちゃんは、やっぱり笑顔が1番可愛いです!」「キッドさんに会えたからです。」「身体がうまく動けなくなっても、僕達は変わらず夫婦だよっ!」「ありがとう…キッドさん。」


悲しい現実は変わらない。変えようとしても変えられない。

でも、こうして寄り添う事でお互い「前向き」になれる。

寂しくもない、怖くもない。2人なら…。


ん?なんか僕、ミルキーちゃんに「恋」していませんか!?

気のせいですか!?

僕は変わらずかおりさんが1番なんですから!!



「キッちゃん、そろそろ帰ろうか?」「……」「出た(笑)また無視(笑)」「またいつでも来てね。かおりさんは本当に私の娘の様な存在なんだから。」「ありがとうございます。はい、是非また…」


「ミルキーちゃん、また必ず会おうね!」「えぇ、キッドさんも早く良くなって下さいね。」「ミルキーちゃんは無理しないでね。」「キッドさん。」「何?」「大好きです。」


こうして、僕は狸寝入りしていた所をかおりさんに抱き抱えられ、車の中へと押し込められた。


「キッちゃん、ミルキーちゃんと会う度に仲良くなるね!」「キャオオオーーーウオーーン!!」


届け…

ミルキーちゃんにこの声が。

「一緒に乗り越えよう」

この言葉が、どうかミルキーちゃんに届きますように…。


「さ、帰って少しだけお散歩して夜ご飯食べようね!!」「キヤゥン!」


帰路に向かう僕とかおりさん。

この景色を、あと何回この目で眺める事が出来るだろう。

必死にしがみついて、出来る所まで頑張りたい。

今日はそう前向き考えられる日でした。

きっとそれはミルキーちゃんのおかげ。

「仲間」とは言わない。だって、それぞれ違う心の痛みだから。


かおりさんも、ミルキーちゃんのご主人様も、とても悲しい心の傷を胸に抱えながら僕達のお世話をしてくれている。

それを忘れず、1日を過ごして行こう。


…そう、改めて実感した日でした。


それから1週間が経過。

突然、今度は僕のもう片方の目がほとんど見えなくなってしまった。


それにいち早く気付いてくれたかおりさん。

僕が歩く度に壁に頭をぶつけて歩く事に異変を感じ、すぐに病院へと連れてってくれた。


「…両目のほとんどが見えていません。」「やっぱり。頭をぶつけて歩くんです。」「今後は身体全体にも支障が出てくるでしょう。」「えっ!?」「その時期は分かりません。」「どつすればいいですか?」


・角には柔らかいクッション素材の物を貼ること。

・新薬が出たのでそれを使います。それを飲んだら最低2時間はお水のみにして下さい。

・暫くすると、排泄が困難になってきます。オムツを着用させてあげて下さい。


どちらも真剣な表情。

僕の病が悪くなっているのが分かる。そう気付かされる。

それでも、僕はかおりさんと一緒に病を乗り越えて行くしかない。

目が見えなくても、まだ臭覚がある。聴覚もある。


かおりさんと一緒に生活する為に、僕は頑張るしかないんだ。


帰り道…

かおりさんは車の中で声を張り上げ、泣いていた。










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