第30話 肝に銘じた言葉。新しいお友達。

「それじゃぁ…」「はい、ありがとうございました。」


「じゃぁのう、若いの。」「おじーちゃん!」「なんじゃ?」

「…沢山、長生きしようね。」「お主も病気に負けるでないぞ。」


短い出逢いと別れ。

それでも学ぶことが沢山あった。沢山教えてもらった。

考え直し事すらなかった。「犬生としての寿命。」


ずっと、いつまでも一緒にいれる訳じゃない。

このまま楽しく暮らせる訳じゃない。


それをおじーちゃんはちゃんと教えてくれた。

まるで本当のおじーちゃんみたいに…


「キッちゃん、沢山ワンちゃんいて楽しいね!」

…まぁ、ドッグランに比べたら全然いい場所です!

それに、お手紙が沢山あって…ゆっくりだけど楽しく拝読してますよぉ!!


「よぉ!!」「ん?」

声を掛けて来たのは、それはそれは大きな犬。

…これはトラウマが甦ります。


「ちっちゃくて可愛い!チワワちゃんですよね!?」

かおりさんに話し掛けて来たのは男の人。

僕はヤキモチを妬いて吠えまくる。


「キャンキャン!!キャンキャン!!」「お前、俺のご主人様に威嚇すんなよ(笑)」「男の人は嫌いです!!」「ナンパじゃねーから心配すんな!」「…ナンパってなんですか!?」「とにかく、俺のご主人様は安心って事!!」


「大きなワンコちゃんですねー!?」「ゴールデンレトリバーです。まだ2歳なんですけど、力は強いです(笑)」


「おいお前、もっと飯食ってデカくなれよ!」「これでも食欲は誰にも負けません!!」「俺のするウンコなんて人間並みだぜ!?」

…この犬、ちょっと下品ですね。

でも、まぁ面白いから許しますけど。


「チワワちゃんのお名前、聞いてもいいですか?」「キッドっていいます。そちらのワンちゃんのお名前は!?」「グランドです。」


「何だ、お前キッドって名前なのか?」「どうして分かるの?」「俺は頭のいい犬種なんだぜ!?」「僕もです!」「あはは!お前可愛いなぁ!!俺の弟子にしてやるよ!」

オラオラ系のグランドは、大人しそうな顔して中身は強気。きっとやんちゃ坊主なんだろう。


抱っこされている僕のお尻をクンクン嗅いだ後、「ウォンッ」と吠えた。


「なんだグランド?遊びたいのか!?」「キッちゃん、下に降りる?」かおりさんがそっと僕を地面に降ろす。すると、グランドは僕の周りを走り出した。


「な、なんですか!!」「走って遊ぼうぜ!」「僕、走れないんです。」「あ?何でだ?」「そういう病気なんです。」


そう言うと、グランドは悲しそうな顔をして僕に話してくれた。


「俺の家にもう一匹犬がいたんだ。でも、ついこないだ病気で死んでしまってな。今回の旅はご主人様な癒しの旅なんだ。」


クゥーンと鳴き、僕の顔を舐めてくれたグランド。

その家族を思い出したのだろうか?切なそうに何度も何度も顔を舐めてくれる。


「お?グランド、新しい友達が出来たのか!?」「キッちゃん、良かったねー!」


「おい、キッド。」「何ですか?」「どんなに遠くにいても、俺はお前の事を忘れない。」「グランド…」「今日から俺とお前は友達だ。きっと、絶対また会おうな!!」


「次は思いっきり走り回ろうぜ!!」


「ウオオオウォーーーーン!!」グランドさんが「頑張れ」と遠吠えをしてくれた。だから、僕も頑張って「頑張るよ」と吠えた。


「キャオォォーーーン!!」


「何か…人間には分からない犬同士の絆があるんですね。」「また、何処かで会えるといいですね…。」


サヨナラをした後も、グランドは何度も何度も僕を振り返っては尻尾をブンブン振って「またな」と合図をしてくれた。


様々な出逢い。

それはこのペンションにいる間、ずっと続いたのです。

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