第28話 悲しい一言。

「キッちゃん、この辺でちょっと休憩しようか!」

かおりさんは僕を抱っこし、お外の空気を吸わせてくれる。

クンクン…

とても冷たい空気が鼻の中に飛び込んで来ますね。

…お手紙は全然ありません。残念です。


「少しだけ歩こうか?」

かおりさんがおろしてくれ、僕はヒョコヒョコとぎこちない歩き方で歩く。かおりさんは自動販売機で温かいココアを買っていた。

すると、知らないおばさんが突然かおりさんに声を掛けて来た。


「あらっ!チワワ!?家でも飼ってるのよ!」そのおばさんは僕をジーっと見るなり、首を傾げて再びかおりさんにこう言った。


「歩き方、おかしいわね?」「あ、ちょっと病気で…」「病気!?怖いわねぇ~。」「でも、きっと治るって信じ…」


「うちの犬、健康で良かったわぁー。やっぱり、多少高くてもいい犬を買うべきよねっ!!」


「え…?」かおりさんの顔色が変わった。「どういう事ですか?」「え?だから、安い犬を飼うと後々病気とかメンテナンスが大変になるのよねぇ。」「それは、うちの子への文句ですか!?」「違うわよぉ(笑)次、また犬を飼う時は気を付けなさいって言うアドバイス!!」


一瞬の出来事。

かおりさんは買ったばかりのココアをそのおばさんに投げつけた。


「痛い!!何するのよっ!?」「動物は家族同然ですっ…!!値段なんて関係ない!!」


「人間と同じ、「出逢い」じゃないんですかっ!?」


あの男にさえ歯向かわずに来たかおりさんが。

どんな時も笑顔で怒鳴る事なんてしなかったかおりさんが。


初めて泣きながらおばさんに対して大声を張り上げ、怒鳴り散らした。


「何をムキになってるの!?教えてあげただけじゃない!!」「そんなアドバイス…逆に迷惑です。あたしはこの子と幸せに暮らしてるんです。楽しくて毎日が本当に幸せなんです!!」


「もっと相手の立場を考えて発言して下さい!!」


「何をしてるんだ。」「あ、あなた…」「うちの妻が、何か?」「あ、あの…」「おっ、可愛いチワワちゃんだねぇ。…ん、怪我してるのか?」


突然現れたおじさんが、僕をひょいと抱き上げ、顔を擦り付けて来た。


「何ヵ月ですか?」「9ヶ月です。」「名前は?オスかな?」「はい、キッドです…」「キッドくん、早く怪我治るといいなぁ。話せない分、苦しいよなぁ。」


「次、もし会う時はうちのチワワと仲良く走り回って遊ぶんだぞ!!」


この人は凄く優しい匂いがします。

顔のモジャモジャが僕と同じです。まさか、あなたも半分犬ですか!?


「ありがとうございます。」「妻がもし失礼な事を言っていたら申し訳ない。」「あ、いえ…」「僕、実は獣医なんです。」「え?」「キッド君は…脳炎じゃないですか?」「そ、そうなんですっ…」「やっぱり…でもね、奥さん。諦めないで下さい。」「え?」


「沢山頑張ってる子達がいます。長生きしてる子もいます。」

「諦めるのが1番良くない事です。頑張りましょう。」


おじさんが僕をかおりさんの元へと戻してくれた。

「うん、可愛い顔をしてる。キッド君、頑張るんだぞ!!」「ありがとうございますっ!!」「さて、行くぞ!!」「え、えぇ。」


おじさん、ありがとう。僕を励ましてくれたんだよね?

そして、かおりさんの事も。

少し遅めのサンタクロースですね!

僕は頑張ります!!


こうして、休憩を終えた僕とかおりさんは、再び車を走らせ…とある県に到着した。
















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