第27話 9ヶ月のお祝い。かおりさんとのプチ旅行。

「キッちゃん!今日からママはお家にずっといます!!」

ある日の朝、かおりさんは仁王立ちになって僕の前に立ちはだかった。

何ですか!突然っ!?

そんな朝から大きな声で吠えるなんてレディーとして恥ずかしいですよっ!!


「これからは、ずーっと一緒にいようね!それから…」


かおりさんがキッチンへ向かう。すると…

やったぁ!!やりましたぁ!!


「9か月のお誕生日おめでとう!!」


かおりさんはちゃんと僕の誕生日を覚えてくれている。

どんな時も僕を優先してくれて、僕を大事にしてくれる。

それがずっと今でも続いている事がとても嬉しくて幸せ…。


「キッド、待て!!」シーーーーン。出ました、「待て」の儀式。

「いいよ!!おめでとう!!」バクバクバクバク…

うーーん!やっぱり最高!お口の周り、ベタベタお構い無しですぅー。


「9ヶ月かぁ…もっともっと一緒にいようね!」「ンギャワン!」「食べてから返事でいいよ(笑)」


最近、お薬の副作用でおしっこが近い。なので、ママしゃんはお部屋におしっこが出来るコーナーを作ってくれた。

かおりさんには申し訳ないですが、お散歩以外はここで粗相をさせて頂きます…。


「キッちゃん、お天気いいしベランダでブラッシングしようか!」

僕はかおりさんに抱っこされ、ベランダへと出る。

そして、クシクシと心地よいブラッシングタイム。僕はウトウトしながら横になる。


今日は風が強い。色んなお友達のお手紙が運ばれて来る。

それは、色々な感情が詰まったお手紙…。


「喜び」「怒り」「悲しい」「楽しい」…。


今の僕はどれに当てはまるだろう?

楽しい?それとも…悲しい?


「キッちゃん、気持ちいい?」「ブシュッ!!」「あ、もしかして寒い!?中に入ろう!!」


かおりさんは慌てて僕を抱きしめ、家の中へと入れてくれた。

…そう。僕は「風邪」も許されない身体になってしまっていた。「余計なウィルスが頭にいかない様に…」病院の先生がママしゃんに注意していた事を覚えてる。


でも、まだまだ僕は大丈夫ですからね!!

半分の身体が不自由になったって、もう片方があります!!

これからも、大好きなかおりさんを守って行きますよぉ~!!


「ねぇ、キッちゃん。今年のお正月は初日の出を見に行かない?」

何ですか、「お醤油は暑いので」って何ですか!?

今度は何を見るですか!?


「先生に聞いてみてOKが出たら、車で少し遠出して、2人で初日の出を見たいなぁ。」

何かよく分かりませんが、かおりさんとなら何処へでも行きますよ!!沢山色んな旅行デートをしましょう!!

そして、沢山思い出を作りましょう!!

2人だけの楽しい思い出を、沢山…


そして、今年も終わりが近付き、病院も年末年始はお休みに入る。最後の病院で、僕は「とても穏やかな進行状態です。」と言われ、プチ旅行のOKサインが出た。


「お正月、初日の出デート。」

12月31日。かおりさんと僕は沢山の暖房器具を積み込み、とある県を目指して車を走らせた。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る