第23話 お薬は断固拒否します!!

「キッちゃん、病院行くよー!」

えー…、断固拒否したいです。最近病院ばかりで嫌です。


と、反抗しても僕はヒョイとママに担がれて車の中にポーン。

あっけなく可愛らしい抵抗は儚く終わった。


「…先生、どうでしょうか?」「うん…」


「壊死性白質脳炎で間違いないでしょう。」


先生は写真の様なものをジーっと見ながら静かな声でそう言った。


「そんなっ…!!」「今から話す事を、落ち着いて聞いて下さい。」


「現段階で完治する治療法が見つかっていない事。」

「ステロイド治療と免疫抑制剤を投薬する事で、進行を遅らせる事が出来る事。」

「この先、徐々に発作頻度が増え、旋回運動や多動も出てくるのを念頭に入れて置くこと。」


「完治…しない?」「うちの子も痙攣発作と闘いながら、それでも元気に頑張ってます。薬との相性さえ合えば、寿命は伸びます。」「どれくらいですか?」「症例では、長くて1年半、短くて半年と言われています。」「半年…?」「これはあくまでも症例です。キッドちゃんは強い。頑張ってくれるはずです。」


「私も、キッドちゃんを患者として見れない部分があります。一緒に全力でキッドちゃんの命を守りましょう!」


ママしゃんが泣いている。

どうしてかおりさんが泣くの?何か痛い事されたの!?

僕が守ってあげますからね!!


「グルルル…」「幸い、キッドちゃんはまだまだ元気です。初期段階で見付かったので薬の投与も早く開始出来ます。」「キッドはまだ8ヶ月の赤ちゃんなんです!!」「頑張りましょう。私も最善を尽くします!!」「宜しくお願いしますっ…!!」


この日から、僕の苦いお薬犬生が始まった。

かおりさんはご飯に混ぜて薬を出してくる。僕はそれをペッと吐き出す。

その繰り返しにかおりさんは苦笑い。


「キッちゃん!?(笑)」「……」「何知らん振りしてるの!?」「……」


だって、食べたくないです!!なんか変な味がして嫌です。

せっかくのご飯がまずくなってしまいます!!


「こうなったら…」かおりさんは台所に向かい…クンクン。

僕の大好物のお肉を持って来た。


「茹でササミのお肉、キッちゃん好きでしょ!?」「キャンキャン!!」「おりこうだねー!!はい、どうぞ!!」


ハグハグ…ゴクン。

ん?何か今お薬混ぜませんでしたか!?


「やっと飲んでくれた…こりゃ大変だぁ。」

騙しましたね!?

明日は絶対に飲みませんからね!!明日は騙されませんよっ!!


そして、次の日も。またその次の日も。

僕はお肉という誘惑に負けては騙され続け…病院当日。


「…うん。薬が聞いてるみたいですね!!」「良かった!!あの、散歩を今もしてるんですが、今後も大丈夫ですか?」「問題無いですよ。これからも投薬頑張りましょうね!!」「はい!ありがとうございます!!」


そして、車の中…


「キッちゃん。良かったね!悪くなってないって!!」

…駄目です。今夜こそは絶対に飲みませんからね!!


僕はそう心に誓い…、でも誘惑に負けるのであった。


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