第19話 8ヶ月の誕生日。身体の異変。

「キッちゃん8ヶ月のお誕生日おめでとう!!」

やったぁ!お誕生日お誕生日!!かおりさん早くちょうだい!!


今日で僕は8ヶ月の犬。人間でいうと何歳になるのかな?

かおりさんと同じかな?そしたら結婚出来ますかね!?


「よーーし、キッド。待て!!」シーーーーーン。

は、早くして下さい。これは残酷過ぎます…。

「よしっ!いいよ!」バクバク…

「相変わらず凄いねぇ(笑)でもね、今日はもう1つプレゼントがあるんだよ!!」

なんですか!?またこれですか?流石にお腹いっぱいで…


顔の前に差し出されたのは、虫の様な人形。

「キッちゃん!それ!」「……」「あ、あれっ!?もう一回ね!」

かおりさん。僕はもう8ヶ月ですよ!?こんな玩具では騙され…


「ブビーブビー!」


ダダダダダッ!!何ですか、この玩具はっ!!音がなるじゃないですか!!

僕は首をブンブン振り回しながら人形と戦う。


「良かった。気に入ってくれたんだね。実はね、ママ働きに出なきゃ行けなくなるの。だから、キッちゃんに少し寂しい思いをさせちゃうんだ。」


「働き」って何ですか?何で寂しくなるですか!?

ずっと一緒にいられないんですか!?


「朝は早いんだけど、夕方のお散歩には帰って来れるから…我慢してね。」僕は意味が分からず首を傾げる。


「ママも本当はキッドと一緒にいたいんだけど、それじゃぁ生活して行けなくなっちゃうから…。お仕事、頑張るね。」


こうして、かおりさんは次の日から朝になると僕をお越し、朝ご飯を食べさせた後「お仕事」に出掛ける様になった。

僕は退屈しのぎにプレゼントで貰った虫の人形で遊んでみたり、自分の尻尾を追いかけて回ってみたり…


でも、やっぱり今までずっと一緒にいたかおりさんがいなくなるのは、とても寂しい。


「クゥーン…クゥーン」


鳴いてみても、かおりさんの「どうしたの?」という声は聞こえない。


「キャンキャン!!」


吠えてみても、かおりさんの「キッちゃん」という姿が見えない。


そして、最近僕の中で少しだけ不思議に感じていた事。

片方の目がボヤけて見えない。

なんでかな?眠いからかな?


そんな事を考えていた時…。


「ガチャガチャ」


「ただいまっ!キッド!!」

あっ!かおりさんだ!!

「キャウーン!!キャンキャン!」「ごめんね。寂しかった!?」「クゥーン…」「ごめんね。よし!お散歩行こう!!」

大好きな僕だけのかおりさんが帰って来た!やったぁ!!

お散歩デート。やっぱり片方の目がボヤけるけど、そんな事は気にしない!!

お手紙拝見…クンクン。うーん、これはパスです。

こっちは!?


「キッちゃん、明日はママ休みだからずっと一緒にいようね!!」「キャン!!」


お散歩デートが終わり、僕は夜ご飯を食べる。

そして、夜はかおりさんとの団欒。幸せの一時…。

すると、ジーっと僕の顔を見ていたかおりさんが僕に近寄ってきた。


「キッちゃん、ママの方を真っ直ぐ見てごらん?」

え?見てますよ?どうしてですか!?

「どうしてずっと顔を右に傾けてるの?どうしたの?」

かおりさんが心配そうに僕の目を見つめる。


「やっぱりおかしい。明日病院に行こう。」

…げっ!!び、病院って…お尻にブスーッの所ですかっ!?

ぜぜぜぜ絶対に嫌ですーーっ!!


次の日の朝。

僕は有無を言わさず車に乗せられ、病院へと連れて行かれたのであった。

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