第12話 新しい仲間。僕の大先輩。
「キッちゃん、お出掛けするよ!!」
お出掛けですかっ!?今日は何処ですか!?海ですか?
車に乗せられ、ユラユラ…。案の定、今日も僕は車酔いしております。
そして、到着した場所はママしゃんの匂いが強いお家。
「ただいまー。」「あら、かおり。お帰りなさい。」
ん?お帰りなさい!?ここはママしゃんのお家なんですか!?
でも、なんだかこのおばあちゃんは不思議な匂いがする。
ママしゃんの匂いもするし、なんだか「暖かい」感じが伝わってくる…。
「ニャーオ」
…えっ!!!「ニャーオ」!?ここには猫がいるんですかっ!?
「あっ!!チャコだ、久しぶり!」「ニャオーーン。」
「チャコ」と呼ばれる猫は、なんとママしゃんにスリスリと身体を擦り付けているではないか!!
「き、君!ママしゃんは僕のだぞ!」「新入りの癖に生意気ね。でも、可愛い顔してるから許してあげる。名前は?」「名前?名前はキッドだけど…。」「キッド。素敵な名前じゃない。あたしはチャコ。この家に来て5年位かしら…」
「元々は野良猫だったのよ。」
チャコが教えてくれた。
実のお母さんと離れ離れになり、チャコは段ボールに捨てられた。食べ物も飲み物もなく、雨の中必死に雨乞いをしながら辿り着いた家がここの軒先だったという。
「家においで。」
温かいタオルにくるまれ、ミルクを差し出してくれたのがママしゃんだったとチャコは言った。
「そうだったんだね。」「あの時、かおりさんが私を助けてくれなかったらって思うと…本当に感謝なの。」「今はママしゃんと離れても大丈夫なの!?」「えぇ、今はおばあ様やおじい様がとても可愛がってくれるし。やっぱり私にはこの家が1番落ち着くから。」「そっかぁ。」
僕とチャコが話してる間に、ママしゃんは楽しそうにママしゃんのお母さんとお話をしていた。
「最近どうなの?」「仲良くやってるよ!?」「本当に?かおり、DVをする人は何度も暴力と優しさを繰り返してくるのよ?」「大丈夫。お母さん、心配しないで。それよりも、キッドどう!?可愛いでしょ!?」「うん…。キッド、ばぁばの所においで!」
「おいで」と言われたので、僕はトコトコと近くに寄っていく。
「おりこうさんねぇ!!人間の話が分かるの!?」「キッちゃんに沢山話し掛けてるからね!ね?キッちゃん。」
分からない言葉の方が沢山あるけれど、少しずつ覚えてきた人間の「言葉」。勿論、聞きたくもない言葉も覚えてしまっているけれど…。
「ニャーオ」「チャコは、こっちにおいで!」
あ、ママしゃん…。
ママしゃんがチャコを抱き上げ、喉元を撫でてあげるとチャコは「ゴロゴロ」と喉を鳴らしてご機嫌の様子。
「キッちゃん、ママの事お願いね。何かあったら助けてあげてね!」そう言って、ばぁばは僕にクッキーのおやつをくれた。
…ばぁばの匂いはママしゃんに似ていて何だか落ち着く。
すると、さっきまでゴロゴロ言っていたチャコが、ママしゃんに抱かれながら話し掛けて来た。
「キッド。かおりさんから何か悲しい匂いがするの。」「分かるの!?」「猫は聴覚もだけど、臭覚がとても優れてるのよ?」「実は、ママしゃんが…」「動物は人間程何も出来ない、不甲斐ないの。でも、鳴く事や抵抗は出来る。」
「かおりさんを守ってあげてね。」そして。
「男は女を守るものなのよ。」
チャコに背中を押され、僕はますますママしゃんへの想いが強くなる。
「守ってあげなきゃ」
チャコが言う通り、僕は犬。出来る事は限られている。
だけど、その中でも「限られている」事をして、ママしゃんを助けてあげたい。
だって、男の僕は女のママしゃんを守ってあげなきゃってチャコが教えてくれたから…。
その日の夜。
今日は何故か男は機嫌が良かった。
ママしゃんの肩に手を回してみたり、抱き締めてみたり。
ママしゃんは困っていたが、喧嘩を見るよりは全然いい。
機嫌がいい理由は分からないが、男は僕にもおやつをくれてとても優しかった。
毎日こうならいいのに…。
そう思いながら、今夜はママしゃんと眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます