第11話 犬の連鎖反応。みんなで一致団結!!

「飯の品数が少ない。」「ごめんなさい。」「おい、脱衣所にタオルが用意されてねーよっ!!」「す、すみません!!」


今夜もママしゃん「いびり」が始まった。

ママしゃんは何度も謝りながら、一生懸命家の中を走り回る。


「ビール!つまみ出せよ!」「今すぐ出します。」「つまみ、これだけ!?昼間何やってんだよっ!!」「ご、ごめんなさいっ…!!」


どんどんヒートアップしていく悪口。

僕は吠えるタイミングを計る。

ママしゃんはまだ耐えている。頑張っている。

僕は、そんなママしゃんをケージの中で見つめていた。


数時間後か経ち、男が飲んでいるものが増えていくと…それは突然として起こった。


「こらぁっ!!もうビールがねぇじゃねーかよっ!!」「だっていつも8本飲んで終わりだからっ!」「今日はもっと飲む日なんだよっ!何で冷やしてねーんだよ!!このバカ女っ!!」


男がママしゃんにテレビを付ける時に使うものを投げた。

そして…


「土下座して謝れよ。」「え?」「「ビール冷やしてなくてすみませんでした」って、土下座して謝れって言ってんの!!」「そ、そんな事でっ…」「いいからやれっ!!」


ママしゃんは男に頭を掴まれ、無理矢理床に座らされる。

掴まれた頭は床に叩き付けられ、ママしゃんは泣きながら声を絞り出す様に言った。


「申し訳ありませんでした…」


今だっ!!


「ギャオオーーーーーン!!ギャンギャン!!ギャオオオーーン!!」

届いて欲しい。

ミルキーちゃん。ママしゃんを助けて…


「ギャオーーン!ギャンギャンギャン!!ギャオオオーーン!!」


「うるせぇな!!外に聞こえんだろーが!!」

男がケージを蹴っ飛ばす。でも、僕は辞めない。


「ギャオーーン!ギャオオオーーン!!」「キッドには絶対手を出さないで!!」


鳴き続ける事数分。すると、何処からか僕の声に反応するかの様に吠える声が聞こえた。


「ワオーーーンッ!!ワオオオオーーーーン!!」

ミルキーちゃんだっ!!夜の風に乗って聞こえてくる。

犬は臭覚だけじゃない。聴覚だっていい。

ミルキーちゃんもママしゃんを応援してくれている。


「負けないで」と…。


「ギャオオーーーーーン!ギャオオオーーン!!」「キッちゃ!?どうしたの!?」「蹴飛ばされる前に黙らせろ!!」

「キッちゃ…」


「ウオオオーーーーンッ!!ウオーーーーン!!」

「ワオーーーンッ!ワンワンワンッ!!ワオオオーーン!!」

次々と聞こえてくる犬の遠吠え。


ミルキーちゃんが集めてくれた仲間。

沢山の犬達の鳴き声が、一斉に外から家の中へと入ってくる。


「負けるな。」

「俺も参戦するぜ!!」


「な、なんだぁ!?」「この辺のワンちゃん達みんなが吠えてる…!?」


負けないで、ママしゃん。

こんなにもママしゃんを応援してくれる「仲間」がいる。

いくらでも吠えてあげる。吠え続けてあげる。


だから、どうか負けないで…。


「あーっ!うるせぇ!!もう寝るっ!!布団敷けっ!!」「え!?あ、はい…!!」


やったぁ!!今日はこれで終わりだ!!

ママしゃん、良かったですね!!

ミルキーちゃん、他の犬さん達…本当にありがとう。


「キッちゃん、ありがとう。沢山吠えてくれたから、他のワンちゃん達も連られちゃったのかな!?」「キャンキャン!!」「キッちゃんに助けて貰っちゃったね。本当にありがとう。」


ママしゃんを助けられた僕はご満悦。

意味知らないけど、今日は足を高くして寝れるぞぉぉ!!


この日の夜。

僕はお腹を出し、ふんぞり返って夢の中へと落ちたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る