たらればは無意味だと、わかっていても

 * * *



 軽やかな音が、わたしの鼓膜を揺らす。

 サイドテーブルに手を伸ばす。


 振れた冷たいそれを手繰り寄せて、液晶画面を見る。

 朝五時を告げる数字。

 だけどそれよりも、わたしはそこに出た名前に、目を見開いた。

 それこそ、一気に眠気が覚めるくらいには。

「もしもし」


 このとき、もしも電話に出なければ。

 偶然充電が切れていれば。

 それか、あの電話から、着信拒否をやめていなければ。


 きっとわたしたちの未来は、もう少しマシだったかもしれない。

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