とりあえずは、自己紹介を。
* * *
わたしが教室に入る頃には、染桜くんも杜矢さんも来ていた。
杜矢さんは、染桜くんの席のところにいる。
窓から入った日光がきらきらと二人を輝かせていて、なんだかマンガの一ページみたいだ。
一瞬見惚れてしまってから、ハッと我に返り、歩き出す。
「おはよう」
席に着きながら挨拶をすれば、おはよう、と二人分返ってきた。
机にかけたリュックから袋を二つ、取り出す。
「これ、昨日のお礼」
ありがとう、と二人に差し出せば、二人はまん丸に目を見開いた。その反応に驚いて、固まってしまう。
渡したのは、家にあった個包装されたお菓子を詰め合わせたものだ。
なにが好きかわからなかったから、とにかくいろんな種類を詰めた。嫌いなものでもあったのかな。こういったことは初めてだから、もしかしたら、変なことをしてしまったのかもしれない。
「えっと」
伸ばした手を引っ込めようとしたときだった。
「別にいいのに。でも、ありがとう」
すっと目を細めて笑う杜矢さん。
まるで刃物の化身です、といったような冷たさをまとっていたのが、嘘のように和らぐ。
「ひぇ……」
「え?」
思わず漏れた声に、杜矢さんの眉間にしわが寄る。
一気に空気が冷たくなって、さっきとは別の意味で漏れかけた声を、寸でのところでなんとか堪えた。
ごくりと固唾を飲む。そのとき、横からハハッと軽やかな笑い声が聞こえた。染桜くんだ。
「薫、笑うとまた雰囲気変わるから。びっくりしちゃったんだよね?」
俺もいただくね、と袋を受け取ってくれた染桜くんの言葉に、こくこくとうなずく。
「杜矢さん、ザ・美人なんだけど、笑うと雰囲気が柔らかくなって、穏やかになるの」
「つまり、普段の私は雰囲気が硬くて怖いってこと?」
「ええ!? 違うよ!」
慌てて首をぶんぶんと横に振れば、ふふっと杜矢さんが笑う。
「え?」
「冗談よ、冗談。ありがとう」
「えーっと……?」
綺麗な白い指で袋をいじりながら、杜矢さんは口の端を上げる。
「薫でいいわ。これから一年、よろしくね」
「あ、俺も。茜って呼んでほしいな」
目の前で、文字通りモデル顔負けの美形が二人、微笑んでくる。
心の中で小さく悲鳴を上げつつ、私も微笑んだ。
「舞白って呼んでくれたら嬉しいな。よろしくね」
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