第16話

 冒険者ギルド。

 それは冒険者の管理や、依頼人と冒険者の仲介や、モンスターの部位やマジックアイテムや魔装や魔石といったアイテムの売買などを行う組織である。


 冒険者ギルドは世界各地に支部が設置されている。大変グローバルな組織だ。下手したら、一国家を超える力を持っているのかもしれない。


 冒険者は冒険者ギルドと契約――と称するのが正しいか――し、クエスト(依頼)などを請け負う職業である。

 冒険者になるのに、特別な条件はない。基本的に(よほど大罪を犯してない限り)誰でもなることができる職業だ。


 冒険者は七種にランク分けされている。パーティーランクと同じだ。

 上から、

 S・A・B・C・D・E・F。


 最初は全員F級だ。

 そこからクエストをこなすことによって、ランクが上がっていく。逆にクエストを失敗し続けると、ランクが下がってしまう。

 クエストは毎日たくさん追加され、たくさん消費されていく。どのクエストを受注するかは、冒険者しだいだ。


 一人ではなく、複数名でクエストをこなすことも可能だ。

 その場合は、固定のメンバーでパーティーを組む、あるいはそのクエストのみの急造パーティーを作るかの二択。

 固定パーティーなら、冒険者ギルドにパーティー登録をすることも可能だ。パーティーも冒険者のようにランク分けされる。


 俺はF級冒険者だ。そして、ネルもF級冒険者らしい。


「あれ? ネルってAランクパーティーだったんだろう?」

「パーティーで華々しく活躍する前に、クビになりましたからね。だから、まだF級なんですよ……」


 ネルは苦々しい顔でそう答えた。


「レンは?」

「俺はただ単に成果をあげられなかったから」


 だから――F級。


 俺は一応Bランクパーティー〈聖刻の剣〉のメンバーだったのだが――いや、はたして俺は〈聖刻の剣〉の正式なパーティーメンバーだったのだろうか?

 はなはだ疑問だ。


「パーティーの名前、どうする?」

「安心してください。ちゃんと考えてあります」


 パーティー登録をするのなら、名前を決めなければならない。


 なぜかはわからないが、大抵のパーティーが気取った名前をつけている。俺の所属していた〈聖刻の剣〉もそうだし、ネルの所属していた〈漆黒の双翼〉もそうだ。

 気取った名前をつけなければならない、というルールでもあるのか?


 Fランクパーティーが気取った名前をつけていると、名前負けしているように感じる。なので、できるだけ普通の――気取っていない名前をつけたい。でも、あまりに平凡な――記憶に残らない名前もどうかと思う。


「なんて名前?」


 俺は不安を抱きながら、ネルに尋ねた。

 ネルもすごく気取った名前をつけようとするのでは?


「そう急ぐでない」


 にやっと笑ってそう言うと、ネルは冒険者ギルドの中へと消えていった。

 俺もネルの後を追って、冒険者ギルドの中へと入った。

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