第13話
俺たちが住んでいるのは、クランベル大陸に存在する大国――ラインツ共和国の首都アイレスだ。大国の首都なだけあって、アイレスは世界でも屈指の――というと、誇大表現かもしれないが――大都市である。朝でも夜でもアイレスは活気に満ち溢れている。
アイレスは周囲を巨大な壁に囲まれた城郭都市である。どうして城壁が作られたかというと、アイレスの外にはモンスターが多数生息しているからだ。
これは、アイレスに限った話ではない。
モンスターは世界のあちこちに生息している。場所によって生息するモンスターの種類は異なるが、基本的には人間に対して敵対的だ。
モンスターというのは、動物を凶悪化させた生き物――とでも表現すればいいか。動物だって十分凶悪じゃないか、と指摘されると、ぐうの音も出ないが。
ともかく、モンスターは凶悪な生き物なのだ。よって、冒険者などによって日々始末されている。
モンスターを狩れば、金が手に入る。それは、皮や肉といった部位が売れたり、モンスターによっては懸賞金がかけられたりするからだ。
アイレスの外に広がる草原にも、モンスターが生息している。といっても、生息しているのは弱小モンスターばかりだが。
こんなところにドラゴンみたいな強いモンスターが住んでいたら、他の都市に向かうのも――そして、アイレスを訪れるのも――一苦労だ。アイレスが人の往来が激しい大都市になることもなかっただろう。
俺とネルは門からアイレスの外に出た。
俺は草原をゆったりと移動するスライムを見つめながら、
「それで……どうやって俺のスキルを検証するんだ?」
俺のスキル――〈限りない支援:アンリミテッド・バフ〉はパッシブスキル。何もしなくても常に効力を発揮する。だがしかし、『仲間にバフを与え続ける』というスキルの効果が、ネルに付与されているのかどうかはわからない。
これがアクティブスキルや魔法なら、能力名を発する、というわかりやすい発動条件があるんだけどな……。
「簡単です」
ネルは準備体操をしながら、
「魔法を一発撃ってみればいいんです」
さらっとそんなことを言った。
いつもと何かが違っていたら、〈限りない支援:アンリミテッド・バフ〉がネルにかかっているという証左になる。何がどう違うのかを調べれば、スキルの具体的な効果がわかるというわけだ。
「……俺に当てるなよ?」
「善処します」
善処します、と言ったやつが実際に善処した例を、俺は寡聞にして知らない。
ネルに魔法を当てられたら、俺もきっと病院送りだ。下手したら死にかねない。だが、ネルから距離を取ったら、スキルの効果が発揮されないかもしれない。スキルの効果範囲がどれくらいなのかはわからないが、きっとそう広くはないだろう。
俺は覚悟を決めた。
死ぬ覚悟だ。
大げさかもしれないが、そのくらいの気概を持っておいたほうがいい。
「では、行きますよ?」
ネルは深呼吸をすると、小さな声で詠唱を開始した。
そして――。
「――〈燃え盛る炎:バーニング・ブレイズ〉!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます