レイドバトル
第38話 スキルボードとサブ職業
――翌日。
俺は見晴らしの良い草原に立っていた。
当然、昨日も今日も魔物を倒してスキルポイントのデイリーボーナスは取得している。
まあ、効果が高いスタートダッシュの方のデイリー特典はもう無くなっちまったけどな。
で、今の俺のステータスはこんな感じ。
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ステータス
名前:タイガ
職業:村人
レベル:37(限界値40)
HP 402/402→472/472
MP 0/0
・能力値
筋力:63
体力:15
魔力:3
敏捷:25
器用:15
幸運:3
所持スキル:食いしばり レベル2
:鑑定 レベル1
残能力値ポイント:0→24
残スキルポイント:80→100
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思えば、本当に強くなったもんだ。
斬馬刀で巨木でも岩でも簡単にナマスみたいに刻めるようになったし、恐らく、今の俺の実力は――
――Bランク最上位と同等か、あるいはそれ以上。
Eランクで駆け出し、Dランクで一人前、Cランクでベテラン。
一般的に、Bランクっていうのが人間を辞めるかどうかの境界線だと呼ばれている。
ひょっとすると……っていうか、恐らく、今の俺はAランクの領域に片足を踏み出している。
と、それはさておき、能力値の割り振りをどうするか……だ。
現状、≪嫉妬の女帝≫とか言うのが来るって話だから、迎撃の態勢を整えなくちゃならん。
で……、そこでキーポイントになるであろうのは、ステータス上の魔力の項目だ。
俺はしばらくはソロでやっていくって決めた。
だから、いつまでもレベルアップ回復に頼り切りってわけにはいかんよな。
まあ、今までは≪魔力≫上げても使用用途が無かったのでスルーしていたってのはある。
だが、今は目星があるので、今回はここに手を付ける。
ちなみに、同じく手付かずの幸運は……本当に良く分からん。
なので、とりあえずは今回は様子見で、幸運にも2ほど振ってみようか。
それで……魔力だな。
スキルポイントが100溜まれば、スキル取得ができるみたいな話を、前に≪神の声≫が言っていたから……恐らくはこれで回復能力を得ることができるはずだ。
ってことで、俺は「スキルボード」と、システムにオーダーを出した。
すると、やはりいつもどおりにデジタル画面が俺の眼前に現れた。
はたして、鬼が出るか蛇が出るか……と思っていると、画面にデカデカとサブ職業選択画面との表示が現れた。
「サブ職業選択?」
と、そこで神の声が響いてきた。
――職業:村人
――特性:すっぴんの能力により、他の職業スキルでの≪ファウンデーション≫を施すことが可能です
――取得したサブ職業を土台に、それぞれの任意の職業スキルツリーを取得していくことができます
――ただし、それぞれの固有職業のステータス補正、及び初期保有固有スキルの能力は得ることができません
――なお、取得制限は無く、それぞれのサブ職業取得の際にスキルポイントを100消費します
――現在の段階で取得可能な職業を開示します
・剣士
・騎士
・回復術師
・魔法使い
・グラップラー
・アーマーナイト
・蛮族
・アーチャー
・シーフ
・ビーストテイマー
まあ、この中なら回復術師だ。
どう考えても、ソロプレイではこの辺りは必須だろう。
サブ職業はいくつも取れるみたいだから、その次の候補は危険察知能力や逃走能力の高いシーフか、あるいは耐久力が爆発的に上がるタンク役のアーマーナイトってところだな。
攻撃系の職業も勿論欲しいが、とりあえずは死なずに生還ってのが一番の目標だし。
ってことで、職業を選択するなら回復術師一択だ。
だがしかし、ここで俺のステータスが問題になってくる。
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ステータス
名前:タイガ
職業:村人
レベル:37(限界値40)
HP 472/472
MP 0/0
・能力値
筋力:63
体力:15
魔力:3
敏捷:25
器用:15
幸運:3
所持スキル:食いしばり レベル2
:鑑定 レベル1
残能力値ポイント:24
残スキルポイント:100
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そうなんだよな。
――MPがゼロなんだ
回復術師はいわずもがなで魔法職なので、MPがないと回復できないわけだ。
と、そこで俺は清水の舞台から飛び降りる気持ちでこう呟いてみた。
「魔力値に……7だ」
すると、頭の中で例の如くに≪神の声≫が響いた。
――魔力補正が一定値を超えました
――プレイヤー:タイガは魔術の初歩真理に辿り着きました
――脳内に魔力回路が形成されます
――MPの概念に目覚めました
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ステータス
名前:タイガ
職業:村人
レベル:37(限界値40)
HP 472/472
MP 0/0→215/215
・能力値
筋力:63
体力:15
魔力:3→10
敏捷:25
器用:15
幸運:3→5
所持スキル:食いしばり レベル2
:鑑定 レベル1
残能力値ポイント:15
残スキルポイント:100
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魔術の初歩真理ってのが何かは分からん。
が、まあ、子供が自転車に乗れるようになるみたいな感じなのかもな。
一度乗り方を覚えてしまえば、どうして昔は乗れなかったのかは分からないみたいな。
あるいは、水泳のようなものかもしれん。
恐らく、MPが急に生えてきたのもそういう理屈なのだろう。
ともかく、読み通りだ。
これで安心してこの言葉を宣言することができる。
「回復術師を取得する」
すると、ピコンっと効果音が鳴って、俺の体が光に包まれた。
で、画面に収まり切れないほどのスキルツリーが現れた。
スキルツリーの一番最初には小火球(ファイアー)と、回復(ヒール)の二つがあって、それぞれが樹形図のように伸びていくって感じになっている。
小火球(ファイアー)の方のツリーは一本道な上に途切れていて、火壁(ファイアウォール)というところで終わっている。
ちなみにこれは、中級魔法の中では下位に属する魔法だ。
それで、回復系統はかなり長いツリーが枝分かれして伸びていて、最後の方は石化回復、猛毒回復、上位回復魔法(ハイヒール)なんかで終わっている。
まあ、回復術のエキスパートらしいスキルツリーだと言えるだろう。
恐らくは魔法使いを選んでいたら、最初の二つは同じで攻撃と回復の品揃えの充実度が逆になっていたってとこだろうな。
で、どうやら、スキルツリーのそれぞれの魔法の項目を指でタッチすると、取得に必要な消費スキルポイントと共に魔法詳細も分かるという仕様になっているようだ。
と、そこで俺は「はてな?」と小首を傾げた。
普通、ゲームとかだったら、スキルツリーっていうのは……。
この場合は、スキルポイントなんかを消費して下位の魔法を取得していって、一コマずつスキルツリーを進めていって上位魔法を取る条件をクリアーするって感じだよな?
だけど、これはどうにも……スキルツリー上のどこにあるスキルでも取得できるみたいだし、スキルポイントの消費もゼロとなっているみたいなんだ。
はてさて、どういうことだろうと思っていると、神の声が聞こえてきた。
――市民権・準市民権を所持し、なおかつ村人職を選択した方に対する特例について
――前回のカタストロフィ後、支配的プレイヤー種族が人間に変更されたため、村人職に死亡が相次ぎました。システムメンテナンスにより職業:村人の人間種に適した難易度調整が行われました。
――下級職におけるスキルについて、スキルツリーの進捗状況に関わらずに任意の3スキルが、スキルレベルマックスの状態でスタートダッシュボーナスとして付与されます
カタストロフィ……? 支配的プレイヤー種族? メンテナンス?
村人職に死亡が相次いだって……?
前々から思っていたことではあるんだが、実はこの世界は地球の超未来のデスゲームか何かなのか? いや、それにしては……。
ともかく、システムの謎については一旦保留だ。考えても分からんし。
っていうか、任意だと? 任意って……好きに3つ取っても良いってことだよな?
それってつまり、上級の回復魔法をいきなり獲れるってことだよな?
と、そこで俺はニヤリとほくそ笑んだ。
――良し、来た! これは来た!
ともかく、今は難易度調整とやらに感謝しておこう。
とりあえず、回復術師が扱える最高の回復魔法である上位回復(ハイヒール)を取るのは確定だ。
そうして他に何を取ろうかとスキルツリーを眺めたところで、俺は「はてな?」と小首を傾げた。
と、言うのも画面のスキルツリーの下の所に、独立して項目が用意されていたんだ。
何じゃこりゃと思いながらタップしてみたら、こんな記載が出てきた。
・聖域の守護結界 回復術師アビリティ:レベル3(MAX)
HPについて50%のプラス補正。
また、体力についても20%のプラス補正。(この補正におけるHPにおける体力値ボーナスは無し)
※ 市民権所有者限定アビリティ
・癒しの右掌 回復術師アビリティ:アビリティレベル3(MAX)
回復魔法の数値に70%のプラス補正が与えられる。
※ 市民権所有者限定アビリティ
それを見て、俺は絶句した。
――50%や70%のプラス補正……だと?
おいおい、これってバフ効果が絶大な類のシステムだったのかよ。
しかし、そもそも俺はこの世界でアビリティなんて言葉は聞いたことないぞ?
――これもひょっとして、俺だけ使える能力みたいなノリなのか?
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