第29話 キビリス村防衛戦 ~オーク200体相手に無双する~ その4
「さて……始めようか」
そうして俺はオークの群れを睨みつけたのだった。
オークたちの瞳は赤く光っていて、極度の興奮状態に達しているのは明らかだ。
確かに、さっきの俺の投げナイフで一瞬だけ奴らの動きが止まった。
が、すぐに激情に身を任せたように、森の中のそこかしこで「ウボオオオオオーーーっ!」とオークたちの雄叫びが聞こえる。
そうして、先鋒のオーク3体が俺に向けて飛びかかってきたのだ。
――ブオン
重低音のうなりをあげて、斬馬刀の無骨な刀身が月夜に煌(きら)めいた。
「あぎゅっ!」
「ぶへらっ!」
一振りで、2体をまとめて一刀両断。
猛烈な速度と、巨大な質量による一撃だ。
中身をまき散らしながら、分断されたオークの肉体が回転しながら飛んでいく。
「ブフォオオオオオオっ!」
で、巨剣を振って体が崩れた俺に向けて、残ったオークの棍棒が迫りくる。
「よいしょっと」
斬馬刀を振った勢いのままに、くるりと回転する力を利用し……いや、上手く調整して棍棒を避ける。
そうして、更にやはり回転する力をそのまま利用して、今度は元から持っていた長剣でオークを斬りつけた。
「ギョヘリッ!」
ドサリとオークが倒れ、間髪おかずに第2陣のオークがやってきた。
斬馬刀の一振りで、今度は3体を斬り捨てる。
そして――。
斬る、斬る、斬る、斬り続ける。
テトリスなんかの単純作業のゲームのように、ただただオークを斬り捨てていく。
オークの動きを確認し、適切な動作を考え、攻撃を躱(かわ)して、斬る。
やることは、ただそれだけだ。
いや……これは本当にテトリスとかと同じだな。
ただただ頭を真っ白にして、条件反射に近い単純作業――ただし、これはゲームではない。
ミスれば死だ。
――余計なことは考えるな。
どう斬るか、どう避けるか。ただそれだけを考えろ。
思考ではなく、反応。
反応ではなく、反射。
オークの攻撃を避け、避ける動作をそのまま攻撃に利用する。
斬馬刀を振り回し、振り回した力をそのまま利用する。
無駄を省き、反射的に最適効率を追い求め続けるんだ。
「ギャアアアっ!」
「パムっ!」
「タワラッバアアアアッ!」
斬馬刀の直撃を受け、頭を爆裂四散させ。
あるいは、長剣に斬られ、貫かれ。
思い思いの断末魔をあげながら、オークが動きを止めていく。
――レベルがアップしました
既に20体は切り伏せただろうか。
例えるなら、俺は今……戦場に現れた竜巻のようなものだ。
斬馬刀を振り回すことによって発生する回転の力のベクトルに逆らわず、身を任せる。
回って回って、ただただ2刀を振り続ける。
そして、2刀が描く旋風で、次々にオークを肉塊へと変えていく。
――だが、相手は100以上だ
一手でもミスれば、そこに付け込まれて流れは変わる。
無駄な動作が入れば、そこで終わり。
詰将棋に似た感覚――今はただ、俺の持てる全ての能力をそれに傾け、全身全霊で切り伏せる。
「ブギャっ!」
「あみらばっ!」
「ブモオオオオオオっ!」
そして頭の中に響く神の声。
――レベルがアップしました
――レベルがアップしました
10分以上は剣を振り回していただろうか。
気が付けば、優に100を超えるオークがその場で死体となっていた。
さすがに連中も半数以上を失って、俺への突撃は一旦……完全に止まったようだ。
戦場に訪れる、つかの間の無音と静寂。そして――
「うおおおおおおおおお!」
と、教会の屋根の上から俺の戦闘を見ていた村民たちが歓声をあげたのだった。
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