第23話 ベテラン冒険者さんと話をしてたらオークに囲まれました
さて。
あれから三日かけて、俺は北の国:アルナダに辿り着いた。
ちなみに今のステータスはこんな感じ。
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ステータス
名前:タイガ
職業:村人
レベル:26(限界値30)
HP342/342→352/352
MP0/0
・能力値
筋力:48
体力:10→15
魔力:3
敏捷:12→15
器用:13→15
幸運:3
所持スキル:食いしばり レベル2
:鑑定 レベル1
残能力値ポイント:5→15→5
残スキルポイント:40→60
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非常用にポイントは5を残しているのは変わらずで、今回は器用にも少し振り分けてみた。
投げナイフ系は多人数相手の遠距離戦や奇襲に使えるし、5感が鋭くなる敏捷とも相性が良いしな。
あと、これは棚ボタなんだが、器用を上げたら剣技も何となく上がっているような気がする。
何て言うかな。
変幻自在とまではいかないんだけど、今までにはできなかった自在な剣筋の軌道になっているような……。
まあ、数値的には微差なので気のせいかもしれないけど、多分気のせいじゃないだろう。
なにしろ、このシステムってぶっ壊れだからな。
と、それは良しとして、この国はやはり北国だな。
季節はまだ秋の始まりだっていうのに、涼しい……どころか、寒い気がする。
元々、俺がいた国と地理的に近い関係もあって、文化的にはほとんど違いはない。
ただ、やはり雪国ということもあって、冬の生産低下から貧しい人間が多いというのは聞いている。
前の国でもアルナダ出身って言ったら盗賊を疑えみたいな滅茶苦茶な話もあったし……まあ、貧困から治安がよろしくないのは事実だ。
で、冒険者ギルドに向かった俺は滞りなく登録を済ませた。
何をするにも金だし、レベルアップやデイリーミッションの条件である魔物の討伐をするにも、やはりギルドは丁度良い。
ステータスプレート上は村人レベル15(レベル限界値)ということで驚かれたんだが、そこは無理はないだろう。
どこの誰が好き好んで村人なんて言う適正職業で限界までレベル上げるんだって話だからな。
まあ、食うに困ったワケありの人間なんかは村人のままギルド登録することも珍しくは無い。
さすがに限界レベルはそこそこ珍しいけどな。
と、それはさておき。
俺が認定された冒険者ランクはEランクだ。
つまりは、駆け出し冒険者相当ということになる。
元々の俺の実力もEとDの間位で、この国では俺は何の実績もないので妥当なところだろう。
前の国では≪暁の銀翼≫の一員である功績から、一人前のDランクをお情けで貰ってたって感じだしな。
ってことで、ギルドで仕事を受けた俺は今……4人の仲間と共に焚き木を囲んで野営をしているわけだ。
「しかし、Eランク冒険者の私がそんな大事な依頼を受けても本当に良いんですか?」
「ああ、頭数は重要だからな。なあに、最初からタイガのことを戦力としては期待してないから大丈夫だ」
今、俺と一緒にいるのはソロの冒険者たちだ。
冒険者ランクでいうと、ベテランと呼ばれる領域のC級が3名に、D級上位が一名、そして俺となる。
「でも、村の防衛任務ですよね?」
リーダー格のCランク上位の壮年の男――ホフマンさんにそう尋ねると、彼は人懐っこい笑みと共に大きく頷いた。
「ああ、厄介なオークの群れが現れてな。村から外れた場所に住んでいる、変わり者の爺さんの家と畑が軒並みやられたらしい」
「冬眠前のオークは、大きな群れだと餌を求めて簡単に村を食い潰すって話ですからね」
「で、大量発生した食欲旺盛なオーク達に国の騎士団はてんやわんや……最終的に手が回らずに冒険者にお鉢が回ってくるのもお約束ってことだな」
と、そこでもう一人のCランク冒険者の、魔術師の女がプクっと頬を膨らませた。
見た目は20代後半くらいかな、まあ……かなり美人だとは思う。
「って言っても、半ば公共事業だから依頼金も安いのよね。散々に税金を取ってんだから、みんなが困ってるこういう時くらい気前よくやってほしいもんだわ」
その言葉で一同が「ははは」と苦笑したところで、ホフマンさんにこう尋ねた。
「で、これから向かう村にはオークの群れが現れるんですよね?」
「そうだな。オークの群れが現れるのは明後日の満月の夜だ。連中の力も一番上がる特別な夜だし、村を襲うならその時期で間違いない」
まあ、この辺りは冒険者なら誰でも知ってる話だな。
魔物が持つ魔核は月の満ち欠けに反応する。
そして、その力は満月の夜に最大に発揮され、なおかつ凶暴性も最高潮となるんだ。
普段は満月前後の数日は、ほとんどの冒険者は稼業を休みにする。
だが、今回のように≪網を張る≫ような場合は、逆にそこを狙うわけだ。
「しかし……」と、魔術師の女は肩をすくめた。
「この時期のオークは、若い女を巣穴に持ち帰って子供の苗床にするんでしょ? 私みたいな可憐な乙女的にはやっぱり抵抗あるのよねー。攫われたら大変だし……オークに犯されるなんて悪夢だわ」
「どこの世界にCランクを気軽に持ち帰れるオークがいるんだよ。それに、若いってのも無茶がある。若作りしてるが、お前さんの実年齢は俺と大して変わらん――」
「ホフマン! 年のことは言っちゃダメ!」
そうして、一同に爆笑が起きたわけだ。
っていうか、20代後半に見えるが、実年齢はいくつなんだろうか。
ホフマンさんは50歳に届いてそうな感じだけど……あ、魔術師さんの首筋を見れば確かに……そんな気もするな。
女魔術師は秘薬で色々やってるから、年齢は不肖って聞いたことあるけど、なるほど……こういうことだったのか。
と、そこで俺も思わずクスっと笑ってしまった。
うん。
何というか、普通に良い人そうだな、この人たちは。
こういう人たちには戦場では命を落としてほしくない。
が、まあ、この人たち自身が言っているように「どこの世界にCランクを気軽に持ち帰れるオークがいるんだよ」って話だ。
普通にオークと一対一で戦うなら、Eランク冒険者でもどうにかなる。
で、今回はオークが50近い数って話だから、こっちも相当に戦力は整えている。
はっきり言ってしまえば、俺を除いた4人でも村に被害を出さないという縛りがなければギリギリ何とかなる戦力だろう。
そして、村には俺たちに先行してこの人たちと同クラスのC級やD級上位の戦力が滞在しているらしい。
更に、他にも街の衛兵たちが後から応援に来るそうな。
ちなみに俺と衛兵さんの仕事は後方支援だ。
つまりは村人が避難している建物や、簡単には再建できない村の重要施設を守ったりって感じだな。
いくら手練れのC級とは言え、その身は一人しかないわけで。
細かいところまでは手が回らないのをフォローする形だ。
「まあ、タイガには誰も期待してないから! 存分に後方で村人を守ってちょうだい! 全力で助けを求めてくれたら、戦闘担当の誰かが急行するから!」
「つっても、俺たちが全部やっつけちゃって、タイガの仕事はないかもだけどな」
ガハハと笑うホフマンさんたちだが、別にこれは嫌味を言ってるわけではない。
役割分担ってのは大事な話で、そこを無視してチームワークを崩してしまうと無駄な死人が出ることは、俺も含めて良く知っている。
で、今の会話は、それとなく……それぞれの立場と役割を明確にするための会話って言う側面もあるんだろうな。
「ええ、戦闘の時はお願いします。俺は貴方たちが来るまでの時間稼ぎに、衛兵さんたちと一緒に全力を尽くしますよ」
と、満足げに彼らが頷いたその時、俺は背後を振り返った。
そして数秒後、後れてDランク上位のシーフ職の男が声を荒げた。
「オークだっ! 囲まれてるっ!」
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