第21話 レイドミッションへの誘い

 さて……残りは戦闘不能になった二人だ。


 一人は胸元に短剣が突き刺さった巨体の男。


 それと、右肩にナイフが突き刺さっている細い男だな。


 巨体の男は虫の息って感じで、細い男は脂汗を流して顔色も悪いが、まあ生きている。



「どうする? まだやるのか?」



 と、俺が言葉を言い放ったその時、神の声が耳に届いた。




 ――プレイヤーキルを確認。特別報酬をゲットしました




 どうやら、虫の息だった巨体の男がこと切れたようだ。


 で、細い方は黙っていたので、俺は剣を構えたまま数歩近寄った。


「ヒッ!」


 まるで……というか、そのままの意味で化け物を見るような目と表情だ。


 すぐさま、男はその場で土下座して、地面に向けて頭を擦(こす)り付ける。


「ゆ、ゆ、許してください! 命だけはご勘弁をっ!」


「と、言ってもな……お前等を生かしておいちゃ、これから先も罪のない人間が殺されるわけだし」


「た、た、助けてください! お願いします!」


 うーん。


 どうしようか。とりあえず俺も無駄に人殺しをする趣味もないし、賞金首としてギルドに引き渡す方向でも良い。


「でも、ギルドに引き渡してもそのまま死刑だぞ? お前をこのまま無罪放免で逃がすわけにもいかないし」


「そ、それでもっ! 今この瞬間に殺されたくないのが人情ですっ!」


 まあ、そりゃそうだな。


 俺が向かっていた街は魔物の大氾濫で滅亡したようだし、ここから一番近い人里も分からない。


 道案内に利用は……できるか。

 と、なれば、まずは武装解除させて手を縛ろうか。


「ああ、分かったよ。ただし、ギルドには絶対に引き渡すからな」


「ありがとうございますっ!」


 土下座の姿勢を解除して、男は地面に擦りつけていた頭を上げて、そして――



「死ねっ!」



 男が投げてきたのはナイフだった。


 奇襲って言ったところか……まあ、読めてたけどな。


 裏切りや騙し透かしについては、以前に≪暁の銀翼≫からこっぴどくやられている。


 何度もこんな手に引っかかるほど、俺はお人好しじゃあない。


 無論、警戒はしていた。


 だから、対処できる。


 ステップを踏むように足を動かし、体躯をズラす。


 そうして、ついさっきまで俺がいた空間をナイフが「スカっ」と通り過ぎていった。



「もう、これなら殺されても文句は言えないよな?」



「あ……」



 そのまま長剣を大上段に構えて、脳天唐竹割り。


 ドシュっと、打撃音と斬撃音が混じったような音が聞こえ、脳漿と血の赤い薔薇が咲いた。


 そしてドサリと男は崩れ落ちる。



 ――プレイヤーキルを確認。特別報酬をゲットしました


 

 しかし、特別報酬か……。


 と、俺は周囲を見渡し、敵の気配がないことを確認してからステータスウインドウを呼び出した。


 特別報酬……これか。


 本当に能力値ボーナスが10ポイントって書いてるな。これはありがたく受け取っておこう。


 で、現在のステータスはこんな感じだ。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ステータス


 名前:タイガ


 職業:村人


 レベル:24→25(限界値30)


 HP332/332→342/342


 MP0/0


・能力値

 筋力:48

 体力:3 

 魔力:3 

 敏捷:3

 器用:13

 幸運:3



 所持スキル:食いしばり レベル2

      :鑑定    レベル1


 残能力値ポイント:4→14→16

 残スキルポイント:30

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 さて、とりあえず今回は敏捷や体力の数値にも振ってみようかな。


 普通に刺されて死にかけたし、体力を上げればああいうこともなくなるのかもしれない。


 で、魔力も何となく想像がつく。

 が、魔法のスキルを持っていない今の俺には無用の長物だな。


 いや……違うか?

 魔法耐性とかにも……関係してくる……か?


 うーん、魔力に振るかどうかは悩みどころではある。


 と、そんなことを考えていると、俺の耳に神の声が届いた。 




 ――オールキル達成! おめでとうございます! 


 ――システムへの功績が評価された結果、ボーナスクエストの権利が与えられました!


 ――有償魔虹水晶を手に入れるチャンスです


 ――なお、クエスト失敗時はプレイヤー死亡も含めた苛烈なペナルティが課せられる場合があります


 ――ボーナスクエストに参加しますか?


 ―― YES  NO


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