第16話 蜘蛛との死闘 ラスト

 ナイトウォーカーが俺に短剣を突き刺してくる。


 やはり、一撃で致命傷を負うが……もうこっちは慣れたもんだ。




 ――食いしばり発動!




 後はこのまま壁から引きはがして、一緒に落ちれば問題ない。

 そう、いつもどおりにな。


 壁から真横から生えてる感じだから、抱き付いてブラさがれば終わりってところか。


 が……、そうはならなかった。


「なっ!? 壁と足が同化してやがるだと?」


 揉みのあい状態で、俺は思わずそう叫んでしまった。


 実際問題、ナイトウォーカーの足は、壁から生えている状態で微動だにしない。


 壁に広がった陰――闇の中から生えている足は、抜けるとか滑るとか、そういう性質のモノではないらしい。


 それはまるで闇の中に根が張っているように……って、おいおい、どうするんだよこれっ!


 そして、狼狽する俺には構わず、ナイトウォーカーはひたすらに短剣を繰り出してくる。


 

「アイテムボックスっ! 持ち物を取り出す! 300キロ分の石を全部だ!」



 揉みあい状態のまま、片手でナイトウォーカーの胴体をガッチリと抱きかかえる。


 で、もう片手の腕でアイテムボックスをやっぱり抱えるようにして持つ。


 アイテムボックスは……アイテムを呼び出している状態なら、中にキッチリ荷物が入っている。


 つまり、石の重量が300キロ、そこにプラスで俺の体重約65キロっ!




 ――トータル365キロで、重さでゴリ押しだっ!





 しかし……いかん。

 俺の筋力をもってしても、片手では持ちにくいせいか、アイテムボックスを支えきれないっ!


 ズルリと滑り落ちそうになったところで、俺は力の限りに叫んだ。


「ステータスオープン! 筋力ボーナスポイントを全て割り振るっ! 残り全部だ!」



 よっし!

 取り落としそうになったアイテムボックスだったが、何とか踏みとどまった!



 ――さあ、どうだ!



 期待と共にナイトウォーカーの様子を伺うが、やはり微動だにしない。


 これでも……落ちないだと!? 400キロ近い重量だぞ!?


 変わらず続くナイトウォーカーの剣撃。


 ダメだ。


 重量負荷ではどうにもならない。


 俺はアイテムボックスを引っ込めて、短剣を取り出した。


 そのまま、体躯を捻って、壁から生えているナイトウォーカーの足に向けて剣撃を繰り出した。


 

 ――落ちろ、落ちろ、落ちろ!


 

 200メートルからの自由落下は、地面への激突まで6秒程度。


 食いしばりの無敵時間は15秒だ。




 ――モタモタしている暇はない!




 1発目、剣撃がナイトウォーカーの足に炸裂する。


 落ちろ!



 2発目、剣撃がナイトウォーカーの足に炸裂する。黒い影の体に微かに切り傷が入った。


 落ちろ! 落ちろ!



 3発目――落ちろ、落ちろ、落ちろおおおおおおおおお!



 と、そこで――ナイトウォーカーの足から「ビリビリ」と、音が鳴った。


 それはまるで、紙で作った影絵が破れるように――。




 ――そして始まる自由落下。




 な、な……何とか……なった。


 これで相打ちは確定したわけだが、問題は色々とある。


 まずは、結構時間を食ったので、落下衝突までに無敵時間が間に合うかどうかだ。


 HPが1の状態で、無敵時間でもないのに落下の衝撃を受けると、そこで間違いなくゲームオーバーとなる。


 しかし、そこを今から心配しても仕方ない。

 やるだけのことはやった……後は運否天賦に任せるだけだ。


 ほどなくして、ドギャシャンと爆音が鳴って地面に激突するが、俺の意識は飛ばない。


 良し、ここは……何とかクリアーだな。



 そしてもう一つの問題。


 他のナイトウォーカーとミスリルゴーレムがどうなっているかということ。


 無敵時間が終了したようで、急速に視界がボヤけてくるが、周囲にナイトウォーカー達の姿は見えない。


 どうやら、まだ連中はミスリルゴーレムの相手をしているようだ。


 ここも……賭けには勝った。


 ギリギリ……本当にギリギリのところで競り勝つことができたようだ。と、その時――




 ――レベルが上がりました



 ――レベルが上がりました




 神の声を受けて、俺はその場で呆れたように笑ってしまった。



「ちゃんとレベル2……上がるんじゃないかよ」



 まあ、レベル2上がる必要経験値が200とした場合、クイーンスパイダーで60、ナイトウォーカーで150とか、そんな感じなんだろうな。


 それで合わせて200を超えて、レベルが2上がったってところか。


「まずは回復だ」


 体が急速に楽になっていく。

 立ち上がって手足を動かし、完全に回復したことを確認し、再度周囲を確認する。


 やはり、ナイトウォーカーの姿はない。

 本当に一安心ってところだ。


 と、俺はようやく溜息と共に一息ついたんだが、そこで更に神の声が聞こえてきた。




 ――出口ボス:クイーンスパイダーの討伐を確認


 ――オーダーミッション「職業:村人 レベル制限解除試練・I」クリアー


 ――条件達成につき、レベル制限を本解除します




 ――また、チュートリアル終了につき、メニュー画面にて課金ショップ機能のロックを解除しました





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 ステータス


 名前:タイガ


 職業:村人


 レベル:22→24(限界値30)


 HP312/312→332/332


 MP0/0


・能力値

 筋力:39→48

 体力:3 

 魔力:3 

 敏捷:3

 器用:13

 幸運:3



 所持スキル:食いしばり レベル2

      :鑑定    レベル1


 残能力値ポイント:9→0→4

 残スキルポイント:30

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