第11話 レベル100オーバーがいるモンスターハウスからゴーレムが遊びにやってきました



 翌日――。



 試しに俺は竪穴を登ろうと思った。


 本番ではナイトウォーカーの横穴を上がった先にあるところから登ることになる。

 だが、今回は落ちても大丈夫なように地面から出発だ。


 竪穴の半径はおおよそ10メートルってところだな。



 ――それで、ナイトウォーカーの攻撃範囲は5メートルとなっている。



 で、うっとおしいことに、壁に張り付いて影になっている時、こいつらの動きはクッソ素早い。


 まあ、だからこそ、俺は竪穴の壁を昇るのにナイトウォーカーの巡回を最大の難関と思っていたわけだが。



 俺も筋力値のおかげで相当な速度で登ることはできるとは言っても、10メートル上がるのに1分くらいはかかるんだよな。



 と、いうのも、壁には突起物が少ないんだ。

 壁の凸凹を掴むどころか、指をひっかけるようなだけの場所が連続している場所もあって、そうなるとぶっちゃけかなり厳しい。



 それでも10メートル1分で登れてしまえるところが、筋力値39の恐ろしいところではあるんだが。



「やっぱり駄目だ」


 ナイトウォーカーの網に引っかかりそうになったので、地面に飛び降りてみた。


「グフっ……」


 落ちてきた高さは10メートル程度か。

 受け身も取ったし、レベルアップの恩恵もあってか、そこまでのダメージは受けない。

 が、軽く悶絶する程度には痛い。


 落下の衝撃として、普通に耐えることができるのはこの辺りの高度が限度だな。


 と、そこで俺はステータスウインドウを呼び出した。

 さっきナイトウォーカーを討伐した際のミッション報酬を受け取るのと、現在のステータスを確認するためだ。





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 ステータス


 名前:タイガ


 職業:村人


 レベル:20→21(限界値30)


 HP292/292→302/302


 MP0/0

 MP0/0


・能力値

 筋力:39

 体力:3 

 魔力:3 

 敏捷:3

 器用:13

 幸運:3



 所持スキル:食いしばり レベル1


      :鑑定    レベル1


 残能力値ポイント:2→7

 残スキルポイント:10→20

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 能力値に割り振ることのできるポイントは……残り7ポイントだ。


 そして、これが今の俺の使えるカードの全てだ。


 とりあえず、明日以降もスタートダッシュミッションをクリアーすればプラスで5ポイントのボーナスを得ることは可能だ。


 で、そのために必要なのは、自分よりも低レベルな魔物を5体狩ること。


 ナイトウォーカーはもう無理なので、現実的にはこれを5日繰り返せば能力値が5×5の25となるわけだ。


 今の手持ちのポイントは7なので、7+25で32となる。


 これまでの経験上、大体、能力値30で人間を辞めることができるらしい。


 ジャイアントスパイダーの相手をしながら壁を登っていくためにはこの恩恵は是非とも享受したいところではある。


 例えば、敏捷あたりに30ポイントを振り分けるとしよう。


 そうすれば、あるいは竪穴をナイトウォーカーが巡回している地帯は素早く突破できるかもしれないしな。


 だが……と、俺はモンスターハウスがあったほうの横穴を見て溜息をついた。


 魔物を探して、横穴を使って……もう一度あそこに行くのか?


 あの時は気が動転して確認していなかったが、ひょっとすると俺でも倒せる魔物もあの地帯にいるのかもしれない。


 けれど、いないかもしれないし、そもそもあそこに足を踏み入れて生きて帰れる気もしない。



 ――普通にレベル100オーバーの魔物もいたしな

 

 





 さあ、どうしたもんかと思っていると、俺は「ん?」と小首を傾げた。



 と、言うのも、何だかナイトウォーカー達の動きが変なんだ。


 いつもは一糸乱れぬ感じに規則正しく動いているのに……あろうことか、モンスターハウスの方の横穴の前に20体程度が整列を始めている。


 何事かと思って様子を見ていると、ナイトウォーカーたちは横穴に向けて整列したままモンスターハウスに向けて歩いていってしまった。





 幸いなことに横穴は広い。

 ナイトウォーカーたちとすれ違ったとしても、俺が壁に張り付いている状態ならやりすごすことはできるだろう。


 そう判断して俺はナイトウォーカーたちを追いかけて、横穴へと足を踏み入れたのだった。



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