第10話 脱出計画の綻び
と、まあ――。
俺はジャイアントスパイダーとの一戦を終えたわけだ。
で、一日中動きっぱなしだったので、さすがに睡魔が襲ってきた。
ナイトウォーカーの巡回経路に絶対に入らない場所を陣取り、座ったままで背に壁を預ける。
暁の銀翼では、夜の見張りは俺の仕事だったからこの辺りはお手の物だ。
と、そこで俺は自嘲気味に笑った。
――夜の見張りだけじゃない
魔物の解体だってそうだし、炊事や洗濯……汚物処理。
全部、全部、面倒は俺の仕事だった。
いや、ここで恨みを言っても仕方ないか。
おかげで遠征で生きるために必要なことは一通りできるようになったわけだから。
そうして、俺は半分目を開いたまま、ウトウトと浅い眠りについたのだった。
一眠りを終えた後に、ステータスウインドウを呼び出した。
実はこのウインドウ、右上のほうに日付と時刻……それと階段状のマークのようなものがあるんだ。
マークの関係は何のことだかわからんが、日付と時刻の便利機能によると、どうやら午前零時を過ぎて日付も変わったようだな。
それで、画面の左に並んでいる項目を確認してみる。
1 ステータス確認
2 アイテム使用
3 イベント(NEW)
4 持ち物確認
5 報酬
6 メッセージ
イベントに新着があったので確認してみる。
すると、先日終了させたミッション系のイベントが復活していた。
内容も見てみたんだが、前回のデイリーミッションとスタートダッシュミッションと全く同じ内容だった。
なので、今日は予定通りにレベル上げとミッションをこなしていこう。
と、まあそんなこんなで。
ナイトウォーカーを狩るべく俺は、横穴を昇った先にあるいつもの場所に辿り着いた。
いや、狩るって言ったらちょっとカッコ良すぎるので訂正しておこう。
ぶっちゃけ、自爆戦法は本当に痛いから嫌なんだ。
けれど……まあ、ここは仕方ない。我慢一択だ。
で、俺はいつものとおりにナイトウォーカーを見つけて、隅っこのほうに隠れた。
そうして、ナイトウォーカーの背後をとって、胴タックルの要領で死なばもろとも……と、ばかりに投身自殺を決行した。
100メートルばかりの垂直落下。
訪れる衝撃。そして死ぬナイトウォーカー。食いしばりで生き残る俺。
うん、全てが想定通りで、ただただひたすらに辛いことを除けば何の問題もない。
そして聞こえる、神の声。
――レベルアップしました
――レベルアップによる回復を利用しますか?
―― →YES NO
ん?
と、そこで俺は違和感に気づく。
とりあえず、全回復は最優先だからそれを終えておこう。
で、元気になると同時にステータスを確認して、そこで俺は≪衝撃の事実≫に気が付いた。
前まではレベルが2ずつアップしていたけど……今回は1だ。
やっぱり、さっきのはやっぱり聞き間違いじゃなかったのか。
えーっと……。
つまり、俺自身のレベルアップに必要な経験値の量が増えているということだ。
いや、これを想定していなかった俺がマヌケに過ぎるってことだな。
つまり、これから先レベルアップを重ねるとナイトウォーカーを倒したと同時の回復ボーナスが得られない可能性があるということになる。
恐らく、1回か2回は可能だろう。
が、確証が無い以上は、それでも危ない橋となる。
更に言うと、それが3回目4回目となると、滅茶苦茶危ない気がする。
最悪、崖から転落してナイトウォーカーと相打ちで……レベルが上がらずに共倒れということもあるのだ。
HP1ってのは、つまりは瀕死でロクに動けん状況だからな。
回復ができないとなると、そのままそこで野垂れ死にとなる可能性は極めて高い。
つまりは、俺の脱出計画の全ての起点となる……自爆戦法からのナイトウォーカー駆逐作戦は、現時点をもって破綻したのだ。
「これ……どうすんの?」
そう呟くが、この洞窟内には俺の問いかけに応える者はいなかった。
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ステータス
名前:タイガ
職業:村人
レベル:20→21(限界値30)
HP292/292→302/302
MP0/0
・能力値
筋力:39
体力:3
魔力:3
敏捷:3
器用:13
幸運:3
所持スキル:食いしばり レベル1
:鑑定 レベル1
残能力値ポイント:0→2
残スキルポイント:10
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