第9話 能力値【器用】の実力

 能力値を割り振ると同時に、再度、全力で投擲を開始する。


 一発目……外した。


 2発目……外した。


 3発目……命中!


 よっし、読み通りの感じだな。


 さっきとは違って、外したにしてもかなり惜しいところに石が落ちていく感じだ。


 で、石の直撃を足に受けたジャアントスパイダーはそのまま壁から引きはがされて落ちていく。


 うん、ここも想定通りだ。


 ちなみに、俺のすぐ側を落下していったんだが、ジャイアントスパイダーの大きさはバスケットボール程度の本体に1メートル程度の足がついている感じとなる。


 それで、これは想定外だったんだが、20メートルくらいの高さから落下しただけでジャイアントスパイダーは地面で動けなくなっていた。


 蟲関係の魔物は見た目の割に体重が軽い。

 だから、この程度の高度なら行動不能にはならないと思っていたが、ここは嬉しい誤算だ。


 さて、お次のジャイアントスパイダーに向けて……もう一回!


 一発目、外した。

 2発目……命中!


 それでやっぱりジャイアントスパイダーは壁から引きはがされて落ちていく。 


 次に俺はナイトウォーカーから奪った短剣を2本腰の鞘から抜いて、壁に突き刺した。


 まあ、短剣の上に乗る形で、これで盤石な足場も確保したってわけだな。


「さて……ここからが本番だ」


 残りの蜘蛛は3匹だ。


 射程圏内に入ったところで、一匹に石を投げる。


 うっし、足場のせいもあってか一発命中だ。


 続けざまにもう一匹!


 これについても、2発目で当たった。


 よしよし、格段に命中精度が上がっているな。


 足場を固めたのが効果テキメンのようで、本当に良い感じだ。


 で、最後のジャアントスパイダーが残ったわけだが、そこで俺は石の投擲を辞めた。と、言うのも――



 ――敢えて、近くまで寄らせるわけだ



 何故なら、ジャイアントスパイダーについて一番驚異的なのは、そのものズバリで毒攻撃となる。


 毒牙で攻撃を受けると、高確率で状態異常≪毒≫になってしまい、徐々のHPが減るだけなく、神経毒か何かの影響か力が入らない状態になってしまうのだ。


 ヒーラー系統か薬があればどうにかなるが、今の俺ではそれは到底望めない。


 もしも、ロッククライミング中に体が動かなくなったら目も当てられないからな。


 だから、この状態で問題なくジャイアントスパイダーを処理できるかどうかを試す必要がある。


 俺は腰から剣を抜いた。


 攻撃力ならナイトウォーカーの短剣だが、この場合はリーチがモノを言う。


 で、ジャイアントスパイダーがこちらに近づいてくると同時に足に向けて剣を振るう。


 シュパパっと、小気味良い音と共に、ジャイアントスパイダーの足が斬れて、最後の一匹も落下していった。


 おいおい、マジかよ。


 蜘蛛は厳密に言うと昆虫ではないけど、この系統の外殻を持っている奴らは防御力が高いって相場が決まっている。


 それが、熱したナイフでバターを切るように……ヌルリと斬れた。


 これが筋力値の補正って奴か……自分で自分が本当に信じられない。


「何とか……なりそうだな」


 そうして俺は、眼下に転がる巨大蜘蛛の死体を見て安堵したのだった。

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