53.高性能
「これで、あんたに最高の鎧を作ってもらいたいんだけど……」
「お、おおおっ、これは……!」
あの有名な鍛冶師のところに俺たちは来ていて、お金とともに例の甲冑の破片を全部渡したところだった。
「――みたいな感じでお願いできれば……」
「なるほどなるほど……それで、デザインとかは……?」
「ああ、それなら……ハイレグでいいかな?」
「りょ、了解っ!」
一応本人の意思を確認するためにちらっと振り返ると、後ろで隠れるように座り込んだミスティから笑顔でOKサインが出たので、このままの通りのオーダーで鎧を作ってもらうことに。
というか、ああいう座った状態でも彼女は目立ちまくってて、通りすぎていく住民が決まって仰天した顔で指をさすほどだったし、中には青ざめながら逃げ出す者までいた。
いくらパワーを制御できるようになったといっても、これじゃあ普通の生活を送るのは厳しいし、彼女の存在自体が見世物のようになってしまう。それでアイシャのポーション屋台が繁盛する可能性もあるが、そういうのは俺が望むことじゃないんだ。
「そういや、自己紹介がまだだったな。俺はラフェルっていうんだ。よろしく、ミスティ」
「わっ、わたひはアイシャでしゅっ! ミシュヒーしゃん、よろひくでしゅうっ!」
「俺はルアンだ。よろしくなっ、ミスティ!」
「わたくしはジェシカと申しますの。よろしくお願いしますわ、化け物染みたデカ女ミスティ」
「「「ジェシカ……」」」
「つ、つい口が滑ってしまいましたわ、ホホッ。申し訳――」
「――わははっ、本当に面白いお方だな、ジェシカどのは!」
「「「「えっ……?」」」」
なんと、ミスティはあれだけ棘のあるジェシカの言葉を笑い飛ばしてみせた。慣れてないと結構きついと思うんだけどな。
「ミスティ、そこは怒ったほうが……」
「ラフェルさんの言う通りですよぉ! 私なら毒瓶投げてますっ」
「俺ならゲロ吐くまで腹パンしてるぜ」
「お、恐ろしい連中ですことっ……!」
「いや、よいのだ、ラフェルどの、アイシャどの、ルアンどのっ。ジェシカどのは本当のことを言っただけ。昔、私が悪口を言われて泣いていたときは、いつも父からあの丘へ連れていってもらい、この雄大な景色を眺めながら笑い飛ばせと言われていたので、自然にそうすることができるのだ。こんな化け物染みたデカ女だが、どうかよろしく頼むっ!」
「「「「……」」」」
なんかいい人過ぎてしんみりとしたムードになっちゃったな。油断すると意地の悪さが露見してしまうジェシカとは真逆のタイプか。
「――ただいま完成いたしましたっ!」
「「「「「えぇつ!?」」」」」
俺たちの上擦った声が被る。新しい鎧を注文してから一時間も経ってないような。さすが有名鍛冶師なだけあって、作るスピードも超一流だな……。
「本当に凄いな、あんたは……」
「いやー、自分の腕が凄いというよりもですね、この鎧の成分があまりにも特殊かつ優秀なものでして……。おそらく、想像以上の効果が期待できるかと思います!」
「「「「「おおっ!」」」」」
早速ミスティに有名鍛冶師の作った鎧を着せてみることに。
「「「「ミスティ――?」」」」
あれっ、ミスティがいなくなった……? さっきまでそこにいたのに、鎧を渡してからすぐに忽然と姿が消えてしまった。あ、そうか。着替える場所を探しにいったのか。
「――私ならここにいるが……」
「「「「えっ……?」」」」
すぐ近くからミスティの声がして、探してみたら間近にハイレグアーマーを着たピンク髪の幼女がいた。ま、まさか……。
「ミ、ミスティ、自分の姿をよく見てみるんだ……」
「……え……?」
ミスティが自分の姿をまじまじと見たかと思うと、まもなくうつ伏せに倒れてしまった。よっぽど驚いたのか気絶している。まさか、あの大女がここまで変わるなんてな……。
「あはは、気絶なさいましたか。そりゃ驚かれるでしょうねえ」
有名鍛冶師が苦笑いを浮かべながら様子を見にやってきた。
「この鎧には高度な魔法が施してあって、パワーを抑える効果があるだけでなく、伸縮自在で姿でさえも縮ませるというとんでもない効果もあったんですよ……! なのでラフェル氏に言われた通りにですね、なるべく目立たないようにと姿を縮ませる効果を引き上げたわけなんです! これを脱いでもそのままですが、また着たときに元に戻そうと本人が思えばできますよ!」
「「「「な、なるほど……」」」」
彼の説明には、甲冑姿のミスティと死闘を繰り広げた俺たちだからこそ納得できるものがあった。とはいえ、まさかここまで縮むとはな……。
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