41.一回休み


「「「「えええぇっ……!?」」」」


 驚きの声がこれでもかと被る。


 俺たちはあれからギルド協会に戻ったわけだが、またまた特例ということでワンランク昇格、Cランクとなったんだ。未だかつてここまで昇格の早いギルドなんてあっただろうか……?


「あの鍛冶師様は実はとても有名な方でして、今回の依頼攻略によって引退を撤回なさったということで、あなた方に対して多くの冒険者様から感謝の声が届いているんです……」


 受付嬢も感激のあまりか涙目、涙声になってる。


 あの鍛冶師、大物っぽい人だとは思ってたが想像以上の人だったんだな。それと同時にやたらと好意的な視線を周りから感じるから、特例が続いたのもただの偶然じゃなくて、現在進行形でギルド協会に貢献しまくってる俺たちだからこそガンガン適用されてるのかもしれない。


「よーし、この調子でもう一回依頼をこなすぞーって言いたいところだが、少し休んでから依頼を――」


「「「――賛成っ!」」」


「……」


 みんなやたらと反応が速かったなあ。まだ言い終わってないんだが……。


「ラフェルさんっ、何か美味しいもの食べたいですねえ!」


「俺も俺もっ。ラフェルだけが頼りだぜ!」


「ラフェル様とのお食事、期待しまくりですわっ!」


「わ、わかったから、みんな背中をそんなに押さないように……!」


 まあそれだけ休憩を待ち望んでたってところか。俺としてはどんどん依頼をこなしたいところだが、休むことも重要なのは自分が回復術師なだけあって理解しているつもりだ。金貨3枚も手に入ったし、フェリオンの名物料理でもたっぷりといただくとしよう……。




 ◇◇◇




「「「「はあ……」」」」


 鞭打ちのあと釈放され、フェリオンの町の駐屯地をあとにするギルド【聖なる息吹】の面々。いずれも著しく疲弊した様子だったが、回復術師カタリナによって回復魔法を施されると、一転してすっきりした表情に変わった。


「ま、まあ牢獄とはいえ粗末な宿に泊まったみてえなもんだし、少しだが飯も食えたし、いい休憩になったぜ。あとはギルド協会で良さそうな依頼を探すだけだなっ!」


「そ、そうねえ。怪我の功名ってやつ? いい依頼が見つかるといいけど……」


「ですねえ。なんせ僕たちはずっとラフェルさんに任せきりでしたし、冒険者ランクでいうといずれもC級ですから。そのせいかまともな依頼が見つからないというか……」


「「「……」」」


 クラーク、エアル、ケインの物欲しげな視線がカタリナに集まるのも時間の問題だった。


「な、何ジロジロ見てるんだい。胸はいいけど顔は慣れてないんだよ。あたいは確かにA級冒険者でしかも回復術師だけどさ、あのラフェルみたいになんでも一人で器用にこなせると思ったら大間違いだよ。もしあたいまでも便利な道具みたいに扱うつもりなら、あの試験官みたいに拷問してやるからそのつもりでいな!」


「「「ひっ……」」」




 ◇◇◇




「んー……よし、今度受ける依頼はこれにするか」


 金貨1枚丸々使ってフェリオンのあらゆる特産品(超高級)に舌鼓を打ったあと、俺が次に選択した依頼はこれだ。


 ランク:C

 依頼者:とある豪商の使用人

 期限:本日まで

 報酬:要相談

 依頼内容:

 町の中心から北のほうにある屋敷の入り口にて、誰の悪戯か存じませんがを横たわった状態で置かれたため、ご主人様が大変困っております。明日ここで大事な商談があるゆえ、取引先の気分を害さないためにも早急に撤去をお願いできないでしょうか。あまりにも重いゆえ、相当な腕力が必要になるかと思います。


「「「おおっ!」」」


 依頼の貼り紙を見たみんなの反応がこれまでになく良いのは、もちろん豪商といういかにも金持ちそうな言葉が出てるからなんだろうが、俺としては選んだ基準はそこじゃなくてこの騎士の銅像というところなんだ。


 なんでこんなものが豪商の屋敷の入り口に置かれているのかという点も興味深いが、何よりも最初の依頼人である甲冑姿の人物と何か関係があるんじゃないかとピンときたからだ。


 もちろん、大事な商談というだけあってライバル商人かなんかの嫌がらせで銅像が置かれた可能性もあるわけだが、そのときはそのときで普通に撤去すればいいだけのこと。


 なんだか依頼をこなすうちに徐々に迫ってきてる気がするな。建物、街路樹、有名鍛冶師の武器と心……この町に幾つも刻まれた損壊部分の原因という、俺たちが最も知りたい謎の核心部分に……。

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