第11話 荒々しく、若々しく、よく食べる
『ご飯出来たわよ〜』
俺と椎名さんがスマフラで熱い戦いをしていると、椎名さんのお母さんの声が壁に着いてあるスピーカーから聞こえた。
「よし、キリもいいし行こう」
丁度決着が着いた。
「う〜ん……負けたけど楽しかった〜!鷹宮、夜もスマフラしようね!」
「もちろん」
「やった!……あ、行く前に聞きたいんだけどデリーのコマンドってスティックをこう動かせばいいの?」
「あ〜こう、下斜めに動かせばコンボ中にも出しやすいかな」
「……どう?」
「だからこんな感じで……」
「……私の手使って直接教えてくれない?」
「いいよ。こうやって親指をぐにっと斜めに。コンボしてる時の勢いに乗せて……って椎名さん?」
「……っ!うしっ!ありがとう鷹宮」
嬉しそうにガッツポーズを取る椎名さん。
「あ、手触っちゃってた。ごめん」
「……いいよ。むしろウェルカム!」
「……」
ノーコメントで。
―――
「えぇ、これ全部夜ご飯!?」
所狭しと机の上に乗せられた大皿に大盛り継がれたおかず達。
「うん。そうだよ。ほとんどお母さんと妹が食べちゃうんだ。痩せの大食いってやつ」
「マジか……」
「私は最近までデブの多め食いだったけどこの2人はいくら食べても太らないんだよね……多分お母さんの血」
「じゃあいっただっきまーす!」
「いただきますっ」
この時間を心待ちにしていたかのようにバクバク食べ始める椎名さんのお母さんと妹さん。
「鷹宮、次から取り皿に自分の食べる分取っとかないと直ぐに無くなっちゃうから気をつけて。はい、鷹宮が好きそうなおかず取っといたよ。ご飯はそこに炊飯器あるから自分の好きなように食べて」
そう言って美味しそうなおかずが乗ったお皿を俺に渡してくれた椎名さん。その面構えはまるで歴戦の猛者。
「あ、ありがとう」
なんか家にいるのにバイキングしてるんだが……
「……やっぱり鷹宮のご飯の方が美味しい……」
椎名さんがもくもぐ食べながらそんなことを言う。
「いや、普通にこっちのがうまくない?」
俺がそう言ったら、椎名さんのお母さんがこちらに来た。
「鷹宮君」
「はい?」
「食事や料理に大切なのはね、愛よ」
いきなり変なことを言い出した椎名さんのお母さん。
「……愛?」
「そう、愛よ。好きな人が作ってくれた料理なんて、食べる側からしたら美味しいに決まってるでしょ?」
「お母さんうるさい!」
「あらあらうふふ、それで本題だけど、鷹宮君料理が上手って聞いたのよ。私になにか作ってくれないかしら」
「いいですよ」
まだこれだけあるのに全部食い切るのか……
「鷹宮、あの鶏皮ポン酢作ってくれない?」
「いいけど……鶏皮とかあるの?」
「おつまみでよく食べるからあるわよ~厨房は出たらわかると思うわ~」
「は~い」
お金持ちもつまみに鶏皮とか食べるんだ……と思いつつドアを開けるとそこには高そうな服を着た、端正な顔立ちの椎名さんのお兄さんがいた。
「て、てめぇかぁ!?真名をたぶらかしたのはっ!」
すごい剣幕で出会い頭に睨まれ困惑する。
「え~っと」
「あら、あなた~お帰りなさ~い」
後ろから椎名さんのお母さんのそう言う声が聞こえて驚く。
「え!?椎名さんのお父さん!?」
「てめぇにお義父さんなんて呼ばれる筋合いはねぇ!」
荒々しく、若々しく、よく食べる。椎名さん家の親はサイヤ人かなにかか?
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