第8話 制裁
「鷹宮」
「椎名さん?」
「来てくれてありがとう……」
椎名さんに耳元でそう言われる。手が少し震えていた。
ヤバいって可愛いって。
「どういたしまして。今はざまぁしよ」
「……うん」
椎名さんが藤瀬に向き直る。
「それで、今さっきの話だけど椎名さんはストーカーなんてしてないよ」
「な、なんでそう言いきれるのよ!?てかあんたには関係ないでしょ!?」
「あるね。何故なら俺が夏休み期間中毎日、椎名さんの痩せる手伝いをしたから」
「なんでっ」
「夏休みが始まる前に椎名さんが藤瀬に告白するところを見ちゃったんだ、偶然ね。そしたら藤瀬が断るどころか椎名さんにこう言ったんだ、『お前みたいなデブスが僕と付き合えるとかマジで思ってんの?お前が僕らのグループにいられたのは僕が少し優しくしたら良い金ヅルになってくれたからだよ?』って」
「はぁ!?そんな事皇輝が言うわけ……」
「言ったんだ。証拠は無いけど。でも、うちのジムの監視カメラに俺が椎名さんのダイエットを手伝った映像が残ってるから。他にも沢山ね」
「私は、藤瀬君への憎しみでここまで変われたんだ。いきなりデブスの私が変わったのは今さっき鷹宮君が言ったことを言われたから」
「どっちにしろなんで藤瀬は椎名さんがストーカーになった、なんて嘘ついたのかな?」
「う……」
目まぐるしく瞬きを繰り返す藤瀬。
「椎名さんがもう学校に来ないとでも思ったんじゃない?自分が言ったことで椎名さんは学校に来ないんじゃないかって」
「え、あ……」
口ごもって何も言えない藤瀬。
「それに玲奈さん……だっけ?椎名さんが藤瀬のグループにいた時の扱い、完全に金ヅルだったんでしょ?」
「っ、それは……」
「そして、そこの藤瀬の側近男!」
「は!?側近男!?お、俺が!?」
「そうだよお前だよ。今さっき言ってたよなぁ、金欠で困っててもアイツがいたら遊べたのによ……って」
「は!?聞いてたのかよ!?キモッ」
「キモイのは人をサイフ扱いしてるお前だよ。それに、否定しないってことは認めるんだよな?」
「〜てめぇっ!」
側近男が顔を赤くして飛びついてきた。
「死ねっ」
俺の顔を殴ろうとする側近男。
「ふんっ」
俺はその手をしゃがんで掴み、そのままその勢いを使って背負い投げする。
「フハッ」
側近男は地面に叩きつけられ空気を吐き出して白目を向いた。
「おい藤瀬、認めろよ。椎名さんに言ったことを」
「ヒッ」
「認めて、謝れよ」
じりじりと藤瀬に迫っていく。
「謝れ」
「み、認めます、ごめんなさい椎名さん」
「は?土下座しろや」
藤瀬の綺麗だった顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
「すみませんでしたっ!だから、お願いします!殴らないでぇっ」
額を地面にガンと打ち付けて椎名さんに謝る藤瀬。
「どうする?椎名さん?」
「……なら藤瀬君、一発殴らせて?」
「へ?」
藤瀬が変な声を出した。
「いい?」
「……た、た、鷹宮は殴らないんだよなっ!?」
「うん。俺は椎名さんの為にやってたからね。背負い投げも正当防衛だし」
「な、なら分かった」
「……録音したからね?」
椎名さんが足を踏み込み、腰に力を入れて拳を思いっきり振るった。1ヶ月間鍛えた腕から放たれた拳は、
「うぎっ!」
正座状態の藤瀬をぶっ飛ばし、軽く壁に叩きつけた。
「椎名さん、これでいい?」
「うん!」
そう言ってニカッと笑う椎名さんがめちゃくちゃ可愛いかった。
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