第7話 混沌
夏休み明けの教室、クラスメイト達は夏休みの話題で盛り上がっているが俺はイヤホンで音楽を聞いているフリをして藤瀬のグループの話に耳を傾けていた。
「おはよー!」
「お前めちゃくちゃ焼けてんじゃん!」
「いやーちょっと最後の一週間、ハワイに行っててね」
「海外!?マジかよ羨ましいぜ!皇輝!」
「お土産買ってきたから」
「流石皇輝!」
「皇輝君ありがとー!」
「どういたしまして」
「キャー!」
なにが、『どういたしまして。(キラッ☆)』だよ。
と、藤瀬の隣に居た奴が声を潜めて話す。地獄耳発動。
「なぁ……皇輝、椎名ってなんで夏休みの間LINE誰にも返さないわけ?金欠で困っててもアイツがいたら遊べたのによ……」
「僕がアイツ振ったから。そろそろ目ざわりだったし。僕にまとわりついてくるし気持ち悪いし、それを伝えたら泣き崩れてさぁ……」
「マジかよwwwくっそキモいじゃんwww」
お前なんだよそれは。
「多分もう学校来ないんじゃないかな?」
「なになに、何の話?」
「いやぁ、椎名さんのことを振ったんだけど……そしたら夏休みにストーカーしてきてさぁ……怖くて……」
は?
「椎名さんって太ってるしブサイクだしね……皇輝君優しいから……誰にでも優しいのは皇輝君のいいとこだけどそういう事になっちゃうから……」
は?
「ありがとう玲奈ちゃん」
「皇輝君……」
ぶっ殺すぞ。
イライラしていると、ガラッと教室のドアが開き、椎名さんが入って来た。
「え、ちょ、誰!?」
「誰だよあの美人」
教室がザワつく。
来た。……始まった。あぁ……素晴らしい。まさか現実でこんなものが見れるとは……。感動で涙が出そうになる。
「君、もしかして転校生かな?僕の名前は藤瀬皇輝って言うんだけど君の名前は?」
「ぶっ!」
思わず吹いた。手を出すのが早過ぎるだろ。それ罠だぞ。
「あれ?忘れちゃった?椎名真名だよ?」
「……え?」
「まぁしょうがないかぁ!私は金ヅルデブスだもんね!」
「え、この美人椎名さん!?」
「嘘だろ!?」
「なんなんだこれは」
先ほどざわついた時より更にざわつく教室。
「私、藤瀬君を見返すために頑張ったんだよ?告白したのにわざわざ人格まで否定して私の思いを踏みにじるような事言ってきた藤瀬君を見返すためにね!」
「ちょっと待ってよ!椎名さん、皇輝のストーカーなんでしょ?振られただけなのに被害妄想はやめてよ!」
玲奈とかいう女子生徒が藤瀬を庇う様にそう言い椎名さんの前に立った。
「ストーカーなんてしてないけど?」
「え、でもさっき皇輝そう言って」
「えっと、それは、その……」
「嘘ついたんでしょ」
俺は証拠を提示する為、もとい椎名さんのアシストをするためにその場に出ていく。この方が藤瀬が痛い目に遭うと判断したからだ。
「え、誰?」
藤瀬達が困惑する一方。
「鷹宮ぁ〜」
「え」
椎名さんにぎゅっと抱き着かれた。
え、……なにこれは。
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