第9話
「えっ!?て、てことは、2人って、付き合って……!?」
桜蘭が驚きながら、そう美保と坂本に問いかける。そんな桜蘭の問いに、美保は顔を下に向けたままだったが、坂本が苦笑いしながら返事をした。
「う、うーん……。そうではない、かな」
「……え?」
坂本の返事を聞いた俺は、驚きを隠せなかった。十中八九、彼氏であると思っていたからだ。
「あ、あれ?違うの?」
桜蘭も坂本の答えを聞いて、困惑しているようだ。俺としても、少なくとも坂本の方は付き合ってると言うと思っていたので、桜蘭と似たような気持であろう。
「ま、まあ、俺が斎藤さんを好きなことは、本当なんだけど……。斎藤さんから、まだ答えは貰ってないというか……」
「そ、そうなんだ……」
桜蘭は困惑しながらもそう返したが、俺はこのことには驚いたり困惑することはなかった。なぜなら、美保の中では本当に付き合っているという感覚ではなかったことは知っていたからだ。
つまりそれは、美保が坂本に押し切られたか坂本が勘違いしたかの2択ではないかと思っていたが、違ったようだ。そうでなければ、俺と桜蘭にこんなことを言わないだろう。
ならなぜ、美保は坂本と付き合っていることになっているのだろうか。坂本が告白したのは間違いないが、それでどうして、付き合っていることになったのか。
「じ、じゃあ、なんでデートを?」
その詳細が気になった俺は、坂本にそう問いかけた。デートにいたる経緯を聞けると思っての、この質問である。
「ま、まあ、僕のクラスメートに押されて……。僕としては、好きな人と出かけられるから役得ではあるけど……」
坂本の言葉から、クラスメートに何かしらの原因があったのは理解できた。それがどんなものなのかは、ここで知ることは出来なそうだ。
「斎藤さんは、迷惑じゃなかった?迷惑だったら、すぐにでも……」
「う、ううん。め、迷惑なんかじゃ、ないよ。これから、知っていきたいって、言ったし……」
こうして話を聞いていると、坂本はそこまで悪い奴ではなさそうだ。美保のことも考えてくれているだろうし、俺が心配していたような彼氏ではなかったといえる。
美保は視線を逸らしながら、そう坂本に返事をしていた。そんな美保は、少し気まずそうだ。
「こ、これ以上邪魔するのは悪いかな?」
「えっ。そ、それはこっちのセリフだよ。小田君と森さんたちは、ちゃんとした恋人なんだし……」
「え……!?こ、恋人……!?」
桜蘭がそう問うと、坂本からそんな言葉が返ってきた。坂本の返事に反応したのは、美保だった。
美保はそう呟いて、俺と桜蘭を交互に見ている。これはまた、新たな誤解が生じてしまったようだ……。
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