第6話
ゲームセンターに着いた俺と桜蘭は、予定通りプリクラの前まで来ていた。男子2人でプリクラコーナーに来ているにもかかわらず、他の女子やカップルからの視線は感じない。
やはり周りから見ると、俺と桜蘭はカップルに見えているのだろう。でなければ、もう少し視線を感じてもいいはずだ。
「ねえねえ信護君。どれにしよっか?」
「うーん……。まあ、どれでもいいぜ」
俺としては、プリクラのことなど何も知らないので、そう答えるしかない。桜蘭は数多くあるプリクラの機種を眺めてから、ある1つのプリクラを指差した。
「じゃあ、あれにしない?今、カップルが並んでるところ」
桜蘭が指差したのは、1組のカップルだけ並んでいるところだった。他に比べれば比較的空いている方だし、何の文句もないので俺は頷く。
「分かった。じゃあ、並ぼうぜ」
俺と桜蘭がカップルの後ろに並んだ瞬間、そのプリクラの中から2人組の女子たちが出てきた。女子たちはここから去っていき、俺と桜蘭の前にいたカップルがその中へと入っていく。
俺たちは何歩か前へと進み、プリクラの目の前まで来る。さっきカップルが入ったばかりなので、少し時間はかかるだろうが、そこまで長く待つことはないだろう。
「えへへっ。楽しみだね。信護君」
「ああ。プリクラやったことねえしな。どんな感じなのか、結構気になってたんだ」
「うん。僕も初めてだから、初めて同士、だね!」
「お、そうだな」
桜蘭から笑顔でそう言われたので、俺も笑みで浮かべながら頷きを返した。何も間違っているところはなかったからだ。
5分ほど待っていると、プリクラの中からカップルが出てきた。どうやら、終わったようだ。
「あ、終わったみたいだよ」
「そうだな。行くか」
「うん!」
俺と桜蘭は、そのプリクラの中に入っていく。中に入ると、そこは未知の空間だった。
「こ、こんな感じになってるんだな。プリクラって……」
「す、すごいね……」
俺と桜蘭はキョロキョロと見渡しながら、ここからどうするのかを探す。すると、お金を入れるところがあった。
俺はそこに指定の料金を入れて、プリクラをスタートさせる。その画面に、選択肢が表示された。
「モードを選択してください……。だってよ、桜蘭」
「うーん……。えいっ!」
桜蘭は選択肢を見て、ほとんど迷わずにカップルモードを選択した。これには流石に、俺は驚いてしまう。
「ちょっ!?桜蘭!?そ、それ、カップルモードだぞ!?」
「ここまできたら、やってみない?そんなに変わらないかもしれないし、良いでしょ?」
「ま、まあ、もういいけどさ……」
もう選択してしまったし、仕方ない。桜蘭も乗り気だし、覆すのは難しいだろう。
だが、桜蘭はとても楽しそうに、プリクラを進めていく。そんな桜蘭の笑みを見ていると、俺も笑みがこぼれてくる。
まあ桜蘭の言うように、カップルモードにしてもそこまでの変化はないだろう。俺はそう思ったまま、桜蘭と共にプリクラを進めていくのだった。
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