第7話

 プリクラを終えた俺は、桜蘭と目を合わせずに外に出た。その理由は、恥ずかしかったからである。


 カップルモードでもそこまで違うものではないだろうと、高を括っていた俺であったが、指示の内容がエグかったのだ。2人でハートを作れだとか、そういった指示があったのである。


 当然、しなくても撮ることはできる。だが、咄嗟に避けることができなかったのだ。


 それに、桜蘭は俺と違って積極的にやろうとしてきた。それもあって、俺は断れなかったのである。


 落書きの方は、ほとんど桜蘭に任せた。俺が手を加えたのは、ほんの少しだ。


「見て見て信護君。よく撮れてるよ」


「お、おう……」


 桜蘭は嬉しそうに、俺にそう語りかけてくる。俺はそれどころではないというのに。


「楽しかったね~……。また、やりたいな」


「そ、そうか……。俺は、ちょっと恥ずかしかったけどな……」


 桜蘭がそんなことを言ってきたので、俺は自分の正直な感想を告げた。嫌だったわけではないが、またやりたいかと言われると、恥ずかしいのでもう勘弁という感じだ。


「ぼ、僕だって、恥ずかしかったよ?でも、楽しかったな、って……」


「……そう、だな。でも、今度やるんだったら、カップルモードは止めとこうぜ……」


 カップルモードじゃなければ、あんな指示が出ることはない。それならば、恥ずかしがらずに楽しむことができるだろう。


「あはは……。このプリクラ見ると、僕ら、カップルにしか見えないもんね……」


「言うな……」


 桜蘭の言葉に、俺は頬を赤らめながら一言だけ返す。俺はチラリと自分の手に持つプリクラを見るが、どう見てもカップルなのだ。


 今日、散々カップルにしか見えないと言われ続けたが、これが一番そうではないだろうか。そう思うと、やはり俺と桜蘭のやり取りは普通なものだったということだ。


「あっ!」


「ん?どうした桜蘭」


「プ、プリクラが……!」


 見ると、桜蘭が持っていたプリクラが宙を舞っていた。どうやら桜蘭が、手から離してしまったようだ。


 そのプリクラはヒラヒラと落ちていき、ある男子生徒の足元に落ちた。俺と桜蘭と同じ制服を着ている男子生徒は、そのプリクラを拾って俺たちの元に向かってきてくれる。


「これ、落としましたよね?」


「は、はい!ありがとうございます!」


「す、すいません」


 俺と桜蘭はプリクラを拾ってくれた男子生徒に、頭を下げた。同じ学校でも、先輩か後輩か分からないので、お互いに敬語になってしまっている。


「いえいえ。それにしても、いいプリクラですね」


「そ、そうですか?」


「はい。お似合いの恋人同士だと思います」


「は、はは……」


 やはり写真を見られると、そうなってしまう。俺は、乾いた笑いを出すことしか出来なかった。


「どうしたの?……って、し、信護、君?」


 その男子生徒の後ろから歩いてきた女子生徒に、名前を呼ばれた。その女子生徒は、俺がよく知っている人物であった。


「ん?あ……。み、美保……?」

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