第77話
まさか、この療心学園に警察が来るとは。だが、俺には関係のないことだろうし、そこまで気にしなくてもいいかもしれない。
俺がそう思ってまるちゃんの方に向き直る。そして中断していた手を進めて、まるちゃんの頭を撫でた。
まるちゃんはそれを、嬉しそうに笑って受け入れてくれる。そうしてまるちゃんを撫でていると、ドタバタとこっちに向かってくる音がした。
「小田君!」
その音が収まって、この部屋のドアが開かれた。入ってきたのは、先程対応しに行った長井さんだ。
「ど、どうしました長井さん?警察って、聞こえましたけど……」
「き、聞こえてたのね……。私、これから少し警察の人と話すから、まるちゃんとここで待っててくれる?」
「は、はい。分かりました」
「お願いね!
長井さんはそう言い終えると、また急いでこの部屋から出て行った。ドアを開けに行ったのだろう。
長井さんにもここで待っていてと言われたことだし、俺が行く意味もない。俺はおとなしく、まるちゃんといることにしよう。
「パパ~!もっと撫でて~!」
「ああ。ごめんごめん」
「えへへ~」
俺はまるちゃんから撫でるのをおねだりされたので、続けて撫でる。しかし、撫でながらではあるが、チラチラと玄関の方を気にしていた。
やはり警察といわれれば、気になってしまう。例え、大したことではなかったとしても。
「え!?ま、まるちゃんですか!?」
「……え?」
玄関からまた、長井さんの声が聞こえてきた。今度は、まるちゃんと言う言葉が、耳に残る。
なぜ、まるちゃんの名前が出てくるのか。ずっと皆目見当もつかなかったが、もっと分からなくなる。
するとまた、ドタバタとこっちに向かってくる音がした。恐らく長井さんが、まるちゃんを警察の人に連れて行くために向かって来ているのだろう。
「まるちゃん!ちょっと、来てもらえる!?」
「え~……。なんで~?パパに撫でてもらってるのに~……」
「……じゃあ、俺も行くよ。それなら、いいか?」
俺はまるちゃんに、そう提案する。流石に、警察の人が呼んでいるのなら、素直に行った方がいいだろう。
まるちゃんが嫌なのは、俺のナデナデが終わることだ。なら、俺が一緒に行けば問題ない。
「うん!パパが来るなら、いいよ!」
「あ、ありがとう小田君」
俺の提案を聞いたまるちゃんは笑顔になって、それに頷いてくれる。そんなまるちゃんを見て、長井さんがお礼を言ってくれた。
「大丈夫です。それより、早く行きましょう。待たせたら悪いんで」
「そうね。まるちゃんをお願い」
「はい。ほらまるちゃん。抱っこするぞ」
「わーい!パパの抱っこ!」
俺はまるちゃんを抱きかかえて、長井さんと共に警察が待つ玄関へと向かう。玄関に着くと、そこには警察官がいた。
だが、その警察官の顔は、とても見慣れた顔だった。俺の家族で、俺が尊敬していて、俺が人助けをするようになった原点の人だ。
「と、父さ、ん……?」
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