第32話
「ありがとうございました~」
俺がお菓子とリスのぬいぐるみを買って会計から出ると、まるちゃんと美保がお土産屋から出る寸前の所で立ち止まっていた。まるちゃんと美保の前には、何かの機械がある。
「どうしたんだ?」
「あ、信護君。それが……」
「パパ!あのね、まる、これ食べたい!」
俺が二人に声をかけると、まるちゃんが機械を指差してそう言った。その機械を見ると、そこにはソフトクリームのポスターが貼られている。
「ソフトクリームか……。どれがいいんだ?」
「これ!これがいいの!チョコレート、おいしいもん!」
俺が聞くと、まるちゃんはバニラチョコレートを指差してそう言った。どうやらまるちゃんは、チョコレートが好きなようだ。療心学園で食べたことがあるのだろうか。
「分かった。食べようか」
「いいの!?わーい!」
俺が許可を出すと、まるちゃんは飛び上がって喜んだ。そんなまるちゃんを見ていると、嬉しくなると同時に俺も食べたくなってきた。
「ついでだ。俺たちも食べようぜ」
「そうだね。今度は私が払うよ」
俺が美保にそう提案すると、美保は自らお金を払おうとしてきた。そんな美保に、俺は待ったをかける。
「いやいや。俺が払うって」
「で、でも……!」
「大丈夫。金は結構余裕があるんだ」
俺はそう言って、美保を止めた。そもそもここで美保に払われたら、恰好が悪すぎる。
「そ、それでも……!せめて自分の分は……!」
「初めての家族での外出なんだ。普段会えてないんだし、俺に出させてくれ」
「う、うう……。分かったよ……。ありがとう。信護君」
「おう」
謎の粘りをみせた美保だったが、結果的には俺の意見が通った。俺は店員の元まで歩き、声をかける。
「あの、すいません。ソフトクリームを3つ貰いたいんですけど……」
「はい。1つ300円なので、合計900円になります。お味はどれにしますか?」
「1つはバニラチョコレートで……。美保はどうする?」
店員に味をどうするか聞かれ、美保に味のことを聞いていなかったことに気付いた俺は、美保にそう尋ねる。すると美保は、全く迷うことなく答えを返してきた。
「あ、バニラがいいかな」
「了解。すいません。それと、バニラ2つで」
「はい。少々お待ちください」
俺もバニラが一番好きなので、美保と同じものを注文した。すると店員がソフトクリームのコーンを取って、次々とソフトクリームを作っていく。
「はい。まずはバニラチョコレートです」
「ほら、まるちゃん」
「うん!ありがとう!」
「ええ。それから、バニラ2つです」
「「ありがとうございます」」
全てのソフトクリームを受け取った俺たちは、それを持って店から出る。そして、座れそうな場所を探した。
「あ、あそこの席が空いてるよ」
「お、そこでいいな。座って食べよう」
休憩スペースに置かれている木のベンチが空いていたので、そこに座ってアイスクリームを食べることにする。まるちゃんを真ん中にして、俺と美保で挟んで座った。
「「「いただきます」」」
俺たちはそう言ってから、ソフトクリームを食べ始める。まずはまるちゃんが、一口食べた。
「ん!美味しい!まる、これも好き!」
「よかったな。まるちゃん」
「ふふっ。よかったね。まるちゃん」
嬉しそうに食べるまるちゃんを見ながら、俺と美保もバニラのソフトクリームを食べだす。すると、そのベンチの右側にある自動ドアが開いた。
「えっ……?信護に、斎藤……?」
「な、なにやってるの……?美保ちゃんに、小田君……。それに、その子は……?」
俺は、俺たちは、一度美保の彼氏がいる集団に見つからず逃れたことで、安心や油断をしていたのかもしれない。流石にもう、知っている人には会わないだろうと。
「ま、さる……」
「照花、ちゃん……?」
そこにいたのは、俺と美保のクラスメートである柴田勝と羽木照花の二人であった。
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