第14話

 5月3日。俺は今、大型ショッピングモールに来ている。このショッピングモールには、ボーリングができる施設もあれば、映画も見ることができる。遊ぶにはもってこいの場所だ。


 ここで遊ぶことを決めたのは高畑だが、その高畑がまだ来ていない。というより、来ているのは俺だけだ。約束の時間より20分ほど早く着いたからだが、もう10分ほど待っている。


「お、おはよう小田」


 そろそろ来る頃だと思っていると、高畑が声をかけてきた。俺は高畑の方を向いて、挨拶を返す。


「おう。おはよう高畑。他のやつらとは一緒じゃないのか?」


「う、うん。会ってないし。そ、それより、アタシの服、どう?」


「服?」


 似合っているかどうかということだろうか。それでいうなら、まず間違いなく似合っているだろう。


 高畑の服装は攻めすぎてはいないが多少露出のあるファッションだった。色合いも相まって、金髪である高畑によく似合っていると思う。


「似合ってると思うぞ。高畑らしいというか、何というか……」


 俺は、これ以上のことは言えなかった。それ以外の表現が出来なかったのだ。


「そ、そう?あ、ありがと……」


 だが、そんな月並みな言葉でも、高畑は喜んでくれたようだ。俺としても、どんな風に似合っているのかを伝えたかったが、俺にそこまでの表現力がなかった。


「お、おう……」


 俺がそう答えた後、俺と高畑は黙り込んでしまった。そんな雰囲気であったが、それはすぐに霧散する。


「おはよう信護君!高畑さんも!」


「おう。おはよう桜蘭」


「お、おはよう森」


 桜蘭がやって来たからだ。桜蘭が来たということは、そろそろ他の人たちも集まりだす頃だろうか。


「お、もう3人来てんのか。おはようさん」


「勝か。おはよう」


「おはよう勝君」


「あ、柴田。おはよう」


 そう思っていると、すぐに勝が現れた。この調子だと、もうすぐ全員集まるだろう。後は斎藤と羽木だけだ。


 集合時間まで5分を切ったし、遅れなければもうすぐにでもくるだろう。すると、斎藤と羽木が並んで歩いてきた。


「あれ?もしかして私たち、遅れちゃった?」


「えっ!?嘘!?ほんと!?」


「いや、まだ集合時間にはなってねえよ。だから大丈夫だ。おはよう斎藤、羽木」


「そっか。よかった。おはよう皆」


「よ、よかった~!皆おはよ~!」


 俺がそう告げると、斎藤と羽木はホッとした様子を見せて、挨拶を返してくれた。勝たちもまた、斎藤と羽木の挨拶に返事をしていく。そしてそのまま、何から遊ぶか話し合い始めた。


「で、何して遊ぶんだ?」


「んー……。午前中は、ボーリングでいいんじゃない?」


 俺の問いに、高畑がそう答えた。そんな高畑の言葉に反対する人はおらず、全員が頷く。


「そうだね。そのあとお昼ご飯を食べて……。どうしよっか?」


「無難なのは、映画じゃね?」


 桜蘭が午後からどうするかを聞くと、勝がそう答えた。確かに、映画はいいかもしれない。午後から一本見ると、解散するのに丁度いい時間になる。


「さんせーい!今、大人気のアニメ映画やってなかった!?それにしようよ!」


「うん。それでいいと思うよ。見ちゃった人、いたりする?」


 羽木の提案した映画を見たかどうか、斎藤が確認を取った。すると俺を含めた全員が首を横に振る。


 羽木が提案した映画は、長編漫画をアニメ化した作品で、毎年新作映画が公開されている。4月に公開されていたが、幸いなことにまだ誰も見ていなかったらしい。


「じゃあ、先に映画のチケット取っとかないか?席がないってなったり、離れたりしたら嫌だし」


「よし、それでいこう!まずは映画館に向かおうぜ!」


 俺の提案によって、まずは映画館に行くことになった。勝が先導して歩き出し、俺を含めた他の皆もまた、勝に続いて歩き出した。

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