第15話
先に映画のチケットを取り終えた俺たちは、ボーリングをしに来ている。1レーンに6人まで入れるので、ピッタリだ。
「よぉーし!まずは俺から行くぜー!」
「お、いいねいいね!いったれ柴田くーん!」
まず、勝がボーリングボールを持ってレーンに向かっていった。それを、羽木が盛り上げる。
勝は席の端に座っていたので、このままいくと席順になりそうだ。勝の次は勝の隣に座る羽木。羽木の次は、その隣に座る桜蘭だろう。
俺は恐らく、斎藤の後になりそうだ。最後は高畑だろう。
勝がボーリングボールを転がす。そのボールは見事ピンを倒したが、全て倒すには至らなかった。
「お。結構惜しいな」
「うん。スペアは狙えるんじゃないかな?」
俺の言葉に、斎藤が頷いてくれた。勝が残したピンの数は残り三本で、1か所に固まっている。
これならば、もう一投するだけで全て倒せるだろう。前一緒にボーリングに行った時も、勝は割とスコアが高かったはずだ。
「勝君、ボーリング上手かったもんね。信護君もすごかったよね?」
「えっ、そうなの?」
「うん。勝君より高いスコアだったよ?」
「そうなんだ。ちょっと以外かも」
桜蘭が話した内容に、高畑と斎藤が食いついて俺の方を見てきた。俺は首を横に振って、そこまでのことじゃないと否定する。
「そんなに上手いわけじゃねえよ。人に自慢できるようなレベルじゃない」
「えー……。僕と行った時はほんとにすごかったけどなぁ……」
「森くーん!次おねがーい!」
「あ、うん。いいよー」
桜蘭は俺の言葉に納得できなかったようだが、羽木が終わったことでボーリングをしに行った。桜蘭はいなくなったが、高畑は未だ気になるようだ。
「森と一緒に行った時は、どれくらいだったん?」
「いやー……。詳しいとこまでは覚えてねえな……」
「何々?何の話?」
「森君によると、小田君ってボーリング得意なんだって。柴田君よりスコアも高かったらしくて……」
高畑の問いに答えると、帰って来たばかりの羽木が食いついてきた。そんな羽木に、斎藤が簡潔に説明する。
すると、羽木が目を見開いて驚いた。そして、勝に俺のことについて問いかける。
「えー!?ほんとなの?柴田君!」
「ん?おう。確かに信護はボーリング上手いぜ」
「勝まで……。やめろよ」
どんどん俺がボーリングが上手いということが、広まっていってしまう。本当に自慢できるほどのものではない。
このままでは、どんどん投げづらくなる。これでガターとかいったら目も当てられない。なぜかプレッシャーにさらされている俺である……。
「終わったよ~。次は、斎藤さんかな?」
「あ、そうだね」
桜蘭が戻って来たので、斎藤が次に向かう。だが、斎藤は一瞬で戻ってくることになった。なぜなら、ストライクを取ったからだ。
「すげえ!ストライクだ!」
「うわー!すごいね美保ちゃん!」
「へー……。美保ってボーリング上手いんだ」
「すごいよ斎藤さん!」
「……マジ?」
俺以外の皆が斎藤を褒める中、俺一人だけ違った反応をする。ここでストライクを出されて、プレッシャーがすごいことになったからだ。
「うん。私もボーリング割と得意なんだ。小田君ほどじゃないかもだけど……ね」
斎藤はそう言いながら、俺の方をチラリと見てくる。まさか、斎藤にこんな風に言われるとは思ってもいなかった。
……上等だよ。
「……やってやるよ」
俺は立ち上がって、ボーリングボールを持つ。この状況、ストライク以外は許されない。絶対に決める。
俺の放ったボールは見事全てのピンを倒した。俺は安心して息を吐く。
「おー。本当に得意なんだね。これは負けちゃうかなー?」
「挑発したのはそっちだし、容赦なくいくぜ?」
俺と斎藤は目を合わせ、火花を散らす。そこまでのプライドを持っているわけじゃないが、あそこまで言われたら負けたくなくなる。
「え、えっと……。じゃあ、次アタシ行くね?」
俺と斎藤が作り出した勝負の雰囲気の中、気まずそうに高畑が投げに行く。こうして俺たちは、ボーリングを楽しむのだった。
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