第13話

 まるちゃんとの再会から数日がたち、五月に入った。放課後の教室は、浮足立っている。


 なぜなら、明日から大型連休が始まり、学校が休みになるからだ。教室では俺のクラスメートたちが、やれ遊ぼうだのやれデートをしようなどと予定を話している。


「ね、ねえ小田」


「ん?どうした高畑?」


 俺が帰る準備をしていると、隣の席に座る高畑が俺に話しかけてきた。俺は手を止めて、高畑の方を向く。


「そ、その……。ゴ、ゴールデンウィーク、どっか遊びに行かない?」


「え?ま、まあいいけど……」


「ほ、ほんと!?」


 俺は断る理由もなかったので、高畑の提案に頷いた。すると、高畑が少し大げさじゃないかと思えるほど驚く。


「あ、ああ。別にいいけど」


 皆で遊ぶぐらい、どうってことはない。だが、高畑が言い出したなら、まだ男子連中は誘えてないのではないだろうか。


 すると、俺と高畑のところに俺の友人たちが集まってきた。俺はその友人たちの方を向いて、遊べるかどうかを尋ねる。


「なあお前ら。ゴールデンウィークに遊ぼうって話に高畑となってるんだが、遊べないか?」


「えっ、ちょっ……!」


 俺が勝たちにそう尋ねると、なぜか高畑が驚いた。だが、何も言わないので俺は答えを待つ。


「い、いやそれ……。いいのか?」


 勝はチラリと高畑を見ながら、俺にそう尋ねてくる。そんな質問に、俺は迷わずに頷く。


「いいに決まってるだろ」


「じゃあ、行かせてもらおうかな?信護君と遊べること、割と少ないし」


「確かに、桜蘭おうかと遊ぶことは少ないかもな……」


 最初に俺の誘いにのってくれたのは、友人の一人であるもり桜蘭おうかだった。桜蘭は男子にしては少し長い髪をした可愛い男だ。


 俗にいう、男の娘といわれる容姿をしている。困っている人を放っておけないという俺と似ていて、一緒に人助けをしたこともあるのだ。


 その容姿故かどうかは知らないが、前に俺と出かけた時はカップルと間違えられた。遊ぶのはそれ以来になる。


「勝と利光としみつ秀明ひであきはどうだ?」


 俺は残りの友達全員に遊べるかどうかを問う。すると、木下きのした秀明ひであき前田まえだ利光としみつは申し訳なさそうに謝ってきた。


「悪い!俺は家族と旅行だ」


「俺も彼女と旅行だ。悪いな」


「……まあ秀明は分かった。利光は、彼女のこと言う必要があったか?」


「ん?まあ、事実だからな」


 俺は利光の言葉にため息をついた。利光には家族ぐるみの付き合いの幼馴染が彼女なのは知っているが、ぞっこんすぎるのだ。


 惚気が過ぎて、もう聞き飽きてきている。しかも、それをナチュラルにやってきているから質が悪い。


「……それで、勝は?」


「……ああ。分かった。行かせてもらう」


「よし。ってことだから、勝と桜蘭も一緒に行くことになった。斎藤と羽木にも伝えといてくれ」


 俺がそう言って高畑の方に振り向くと、高畑は呆然とした様子で俺を見ていた。俺の言ったことが聞こえていなそうだったので、もう一度尋ねる。


「えっと、高畑?聞こえてるか?」


「……あっ。ご、ごめん。何?」


「勝と桜蘭も一緒に行くことになったから、斎藤と羽木に伝えといてくれって……」


「あ、ああ。うん。分かった……」


 高畑は肩を落としながらもそう頷いてくれた。これで大丈夫だろう。後は、具体的な日付と場所を高畑から聞くだけだな。


 そう思っていると、俺のスマホがブーッと震えた。マナーモードにしてあるので音はならなかったが、その震えで何か通知がきたことに気付く。


 俺がスマホの画面を見ると、そこには斎藤からの連絡が表示されていた。斎藤は今日、買い物があるからと一人で先に帰っていたはずだ。


【まるちゃんが、ゴールデンウィークに会いたいって言ってるの。だから、療心学園の遠足についてこない?5月5日にあるんだけど……】


 ……予定が入ったから、5日は無理になったな。まあ、斎藤も行くはずだし、日にちが被ることはないだろう。


 もうこれで大型連休の2日分、埋まったことになる。俺の今年のゴールデンウィークは、割と忙しいことになりそうだ。

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