第4話
授業を終えた俺は、勝と一緒に帰る約束をした高畑と共に、校門の近くで妹を待っている。羽木は用事があるからと先に帰ってしまった。
斎藤は一緒に帰る人がいるからと、違うクラスに行ってしまった。あの言い方的に、恐らく彼氏ではなかろうか。
まあ、斎藤は男子からの人気もすごいし、彼氏がいてもおかしくないだろう。それより、高畑に彼氏がいないのが驚きだ。
正直、高畑と羽木と斎藤は、この学校の中でもトップレベルの男子人気がある。容姿の要因もあるが、それぞれの性格も関係しているだろう。
まさか、俺がこの三人と関わることになるとは思っていなかった。二年生になって、一番の衝撃だ。
「ど、どうしたん?なにかあった?ずっと見てきてるけど……」
「あっ、わ、悪い。ちょっと、今更ながら驚いてさ。まさか、高畑たちとこうやって関わることになるとは思ってなかったから」
「そ、そう?アタシが小田と関わるの、そんな変……?っていうか、嫌……?」
「いや、変というか……。高畑って綺麗じゃん。斎藤に羽木もそうだけど、こんな人たちと関わってるのが驚きというかなんというか……」
俺がそう言い終えると、高畑はすごい勢いで俺から視線を逸らした。俺はそんな高畑の行動に驚きながらも、まだ言いたいことがあるので言葉を続ける。
「と、とにかく、嫌ってことは絶対ねえから。むしろ、嬉しいし」
「そ、そっか!」
高畑は俺に視線を戻さずに、そう返事をしてくれた。しかし、こっちに顔を向けてくれないのは少し悲しい。まさか、俺の言葉が嫌だったのだろうか。
「ま、お前らと関わるのが嫌なわけないってこった!それよりさ、あれ市菜ちゃんじゃね?」
「お、ほんとだ」
勝が言った通り、こちらに向かってきている市菜が見えた。その隣には、見覚えのある女の人がいた。
「お兄ちゃん!ごめんね?待たせちゃった?」
「す、すいません!私のせいで、待たせてしまって……!」
市菜と共に来たのは、市菜の友達の
よく、俺たちの家にも遊びに来てくれていて、市菜を除けば唯一俺が面識のある中学二年の後輩といえる。
「いや、全然待ってないから、大丈夫だぞ。伊野宮。それより、勝と高畑とも一緒に帰るんだが、いいか?」
俺がそう市菜に問うと、市菜は首を傾げる。高畑という名前が、初めて聞く名前だったからだろう。
「勝先輩は分かるけど……。高畑さんって、誰?」
「あー……。えっと、高畑?そろそろこっち向いてくれないか?妹が来たんだ」
「そーだぞー。ほれ、自己紹介しとけ。これからのためにも、な!」
勝にそう言われてピクリとした高畑は、息を吐いてからこっちに向きなおしてくれた。俺は高畑が嫌なのに無理をしているのではと思い、無理をしなくてもいいと伝える。
「だ、大丈夫か?俺の方を向くのが嫌なら、妹の方を向いておいてくれれば……」
「ち、違う!違うから!嫌なわけないし!ち、ちょっと、恥ずかしかっただけで……」
「そ、そうか。それならいいんだが……。それより市菜。彼女が高畑心南。俺のクラスメートだ」
俺は市菜に、高畑のことを紹介する。すると市菜は、驚いた顔をした後、なぜか考え事をするような仕草を見せた。
何を考えることがあるのか。市菜も自己紹介すればいいだけのことだと思うが。
「……うん。よし!初めまして高畑先輩!私、小田信護の妹の、小田市菜です!市菜って呼んでください!よろしくお願いします!」
「う、うん!よろしく!い、市菜!」
どうやら、うまくいったようだ。まあ、ただの自己紹介だし、本当は何の問題もないはずなんだけどな……。市菜は一体、何を考えていたんだ?
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