家の中

 陽の射す畳を見つめて寿江が言う。

「緑色したお猿さんがいる」

 どのあたりにいるのか問うと、寿江はぷいっとそっぽを向いた。

 その晩、寿江が誠司を起こして、こそっと告げた。

テーブルの下に、女の人がいる」

「…………どんな人?」

「髪が白い……」

「……おばあさん?」

「きれいな人」

 明かりをつけて、ふたりしてのぞいてみた。

「いなくなっちゃった」

 肩を落とした寿江を寝かせて、明かりを消してふりかえると、テーブルの足元に細く月の光が射していた。

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