第2話 八月 二日



俺はネタのように回転ずしの渦の中に飲み込まれた。

無数のチェーン店に応募し続けていると、回転ずしの虜になっている事に気付いた。それでも仕方がなかった。応募する度に新しい店が推されてくる。聞いた事の無い店が脂っこい指で俺をシャリの流砂に放り込もうとしているんだ。

無意識に手がポケットに滑り込む。

くしゃくしゃになったティッシュを取り出して俺はあのティッシュ配りの事を思い出した。

あれも悪くないかもな。

普通ならティッシュ配りという退屈を伝染病かのように避ける俺だが、なぜか今日はそういう考えが生じない。ガチで考慮している。

今度は「ティッシュ配り」と検索してみた。あの娘もこのあたりで仕事をしているんなら一緒に働けるかもしれない。

俺の住むあたりでティッシュ配りが欲しいという会社を見つけた。

ティッシュを配って欲しい人から直接仕事を貰うのではなく、この会社にティッシュ配りとして所属すれば色々な所の仕事を勝手に持ってきてくれるんだ。

俺はそこにも応募した。



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