レベル21

 インターナショナル・ハイスクールに戻って翌朝。朝食をみんなと食べていると、周りに人集ひとだかりが出来始める。

 しかも男だけの……。


「あの子可愛いよな、行って話しかけてこようかな?」


「フレイアと同レベルの美人が3人もいるなんて、これは奇跡だよ」


「あの美人達のいるパーティーがボスを倒したんだって、信じられるか?」


「日本人の2人って美人だよな。でも、何で男が1人いるんだ。邪魔なんだけれど……」



 えーと……。

 どうやらナンパしようとしている男達が集まったみたいで、オレの存在が邪魔らしい。しかも、オレに聞こえるように話しているヤツもいる。


 朝食を食べ終わると、行き先をみんなと相談する。


「この近くにいるボスは横須賀市になるんだけれど、数日かけて行こうと思うんだ。みんなはどう思う? それに、フレイアの父さんが見つかるかもしれないので」


 フレイアの父さんは、横須賀市に支社がある商船会社で貨物船の船長をしている。もしかして、横須賀市のどこかの学校で避難しているかもしれないからだ。


「もちろん行くわよ。フレイアのお父さんに会いたいし」


 クレオが即答で言ったのだけれど、フレイアの父さん目当てなの……? それって、ボーイフレンドを探しているって言った事と繋がっている?


「私も賛成。朝日区のボスを倒したら、ここに居る人達から感謝されてボスを倒すやる気がガゼン出ているんだ」


 エリーも賛成してくれた。でも、ジュリアは黙ったままだ。


「ジュリアはどう思う」


 オレの問いに対して、まだ考え込んでいる。もしかして反対なのか?


「えーと〜。行ってもいいかな〜。

 私の両親は魔物に殺されたけど、フレイアのお父さんは助かって欲しいから」


 なんだかフレイアのお父さんが、見つかって欲しくない様に感じに聞こえるのはオレの思い過ごしか? ジュリアの両親が魔物に殺されたから、同じようにフレイアのお父さんも死んでいて欲しいって事……?


「皆さん、ありがとうございます。父と連絡が取れないので生存を諦めかけていた所だったのです。父は武術をやった事が今までなかったので、おそらく……。

 でも、生きている可能性はありますよね」


 フレイアは申し訳なさそうにそう言う。

 今生き残っている人達はTWでゲームをしていた人達か、武術の経験がある人達が殆どで、普通の人は生存の可能性が極端に低い。でも、運が良ければ安全地帯に逃げ込む事ができる。

 だからこそ、フレイアのお父さんには生きて欲しいとオレは強く思った。



 それからオレ達は、横須賀市に向けて出発する。魔物を殺すのは苦労はした。けれど途中、学校に泊まりながら3日かけて横須賀市に着いた。

 海岸線を歩いていると、巨大な船が数隻遠くに見えてくる。画面を見ながら歩いていたクレオが、お驚きの声を上げ始める。


「みんなマップを見て! 船が安全地帯になっているわ!」


 それって、フレイアのお父さんが生きている可能性が高くなった……?

 オレもすぐに画面からマップを呼び出すと、確かに大型船は安全地帯の色になっていた。


「お父さんの船の名前を教えて、フレイア!」


 クレオが早口でフレイアに言った。


「メイフラワー号です。マップで見ると、停泊している最も大きな船になります。

 もしかして、父さん生きている……」


 それからオレ達は、急いで船に向かった。


 メイフラワー号が接岸している埠頭まで行く。巨大な木造船の船上で人が居るのが確認できた。向こうもこちらを見ており、デッキには人が増えてくる。

 今にも壊れそうな木の階段の下まで来ると、船の上から誰かが急いで、木のきしむ音を立てながら下りて来た。

 それを見たフレイアは涙を流し始める。


「父さん、生きていた……。よかった……」


 フレイアのお父さんが下船して、オレ達の方に来るとフレイアを抱きしめる……。フレイアは涙を流しながらお父さんを抱き返していた。


「フレイア、無事だったんだね」


「父さんも無事で良かったです。船が安全地帯なので少し驚いています。それでお父さんが助かったんだと」


「ここから出ていないので外の様子が殆ど分からないんだよ。

 ジュリアも助かって良かったよ。それでご両親は?」


「亡くなりました。魔物に殺されて」


 それだけ言うと、ジュリアは黙ったままになった。


「彼らが亡くなったとは……。ジュリア、気をしっかりと持つんだよ。

 それで、この方達はフレイアの友達なのかい?」


「はい、父さん。こちらがクレオに、息子さんのマサトとエリー。彼らのおかげで、ここまで来る事が出来ました。

 皆さん、父のフランクです」


「皆さん、本当にありがとうございます。娘が大変お世話になりなりました」


 フランクは背が高く、フレイア似の美形の男性。それを見ているクレオが、いつも以上に元気になっていくんですが……。


「初めましてフランクさん。娘さんと再開できて良かったですね。少し……、もらい泣きをしてしまいました」


 そう言ったクレオを見ると、涙を少しだけ流している。

 涙を流しているクレオを見るのはオレは初めてで、フレイアとフランクの再会に感動したみたい。


「ありがとうございます、クレオさん。

 ここでは何ですから、乗船してお話の続きをお聞かせ下さい」


 それからオレ達は巨大な木造船に乗船する。

 娘を肩越しに抱いている、幸せそうな親子を見ながら。

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