レベル14

「マサトは右側に回って。エリーは左側。クレオは私の横に移動して!」


 3人が、フレイアに首を軽く縦に振って移動する。フレイアがこの4人の中では最もレベルが高いので、戦闘場面では彼女の指示に従うことに決めてあった。

 エリーは少し不満だったみたいだけれど……。


 最初のクエストは公園のぬしを殺す事。ここに来るまで雑魚の魔物は問題なく殺せた。

 しかし、今回のクエストは上位にあったので手こずっている。巨大なヘビの魔物で動きは遅いのだけれど鱗がかたく、同じ箇所を何回も切り込まないとダメージを与えられない。


 既に二箇所、大きな傷を作ってダメージを与えたのだけれど、その箇所をかばう様にうごいているため、同じ方向からでは苦労して負わせた傷を狙えない。


「エリーは、もう少し後ろに回って!」


 ハヤビとウルシの攻撃力ではダメージを与えるのは困難だけれど、二箇所ある傷を狙えているので、それなりに巨大ヘビのライフゲージを減らせている。


 フレイアの使い魔であるウルシは、黒豹の使い魔で巨大ヘビの鱗に爪を立てて頭の方に今度は移動している。ヘビの目を狙っているみたいで、もうすぐ頭に到達する。


「みんな、もうすぐウルシがヘビの目を攻撃をするわよ!」


 フレイアが言った次の瞬間、ウルシは前足でヘビの両目を潰した。そしてウルシは地面に着地して、フレイアの側に戻った。しつけの行き届いたウルシの動きに思わずウルシの能力の高さを感じる。


 巨大ヘビは両目を失ってのたうち回り、手がつけられないくらい暴れ出す。しかし、オレたちが見えてないので、雑な動きになった。それをオレ達は見逃さず、傷口に切り込んだ!


 ドサァァァ〜〜〜〜―〜!!


 巨大ヘビが力尽きて、ついに地面に倒れこむ。


「ヤッタァー!」


 大喜びしているのはエリーだ。


「フレイアの使い魔はかなり有能ね」


 そう言ったのはクレオ。

 ウルシが有能なのは、始めたばかりのオレから見ても分かる。エリーよりもフレイアの方がレベルが上なのでみんなが彼女に従ったのだけれど、その指示も的確で数々の戦闘を経験してきたのがオレでも判った。


 クレオがフレイアに近寄って、頼み込むように言う。


「ウルシはフレイアの言う通りに動いていたみたいだけれど、特別の訓練をしていたの?

 もしよかったら秘訣を教えてくれないかしら。シャネも同じくらいになって欲しいから」


「ええ、喜んで教えます。

 実は……」


 それからフレイアは、ウルシを育てた方法を教えながら歩いた。

 オレも使い魔を育てるのが初めてなので、後ろから熱心に聞いていた。

 エリーは既に知っているので、ハヤビを飛ばして魔物が近くに居ないかを、見張りなが歩いて行く。




 次のクエストは、ダンジョンのボスを殺すクエスト。

 さっきの巨大ヘビよりもクエストのランクが下だ。けれど、ダンジョンに潜ってボスを倒しても、迷路で脱出に苦労しそう。


 目的地のダンジョンに近付くと、巨大な岩山が見えて来た。この辺りは以前に来たことがあり、高層ビルが立ち並んでいた地区だ。


「ビルの群れが岩山に変わっているのには驚きね。

 この辺りには取引先の会社があってよく来ていたのに」


 クレオがそう言うと、エリーとアレイアも驚きを隠せないでいる。

 オレは嫌な予感がしてならなかった。もしかして、想像以上の迷路をしたダンジョンではないかと。


 ダンジョンの入り口はすぐに見つかったけれど、嫌な予感通り、入ってすぐに分かれ道になっている。


「どうする、マサト?」


 エリーがオレに聞いてくる。クレオとアレイアもオレを見ており、オレの意見を聞きたいみたい。もしかして、オレって信頼されているのか……?


「あっ」


 どっちの道に進もうかと迷っていると壁から小さな白いヘビが現れ、右の方を向いている。しかも、前見た時よりも大きくなっている白いヘビ。最初見た時は小指くらいだったのに、親指ぐらいの太さになっている。白いヘビは成長しているのか……?


 それに、みんなも見える位置にいるのに、誰も白いヘビに気が付いていない……。もしかして、オレにしか見えないのかこの白いヘビは……?


「どうしたのマサト?」


 クレオがオレに聞いてくる。


「いや、何でもない。右側に行こう」


 オレはそう言って右側に進み始める。

 それにしても白いヘビの正体が気になる。オレにしか見えないのは間違いない。しかも、過去3回とも正確にオレに進む方向を教えてくれた。ゲームのAIが、白いヘビをオレにだけ見せているとは到底思えない。


 とすると、外部から入ったバグか……? ヘビだけど……。

 外部からの干渉か……。そう思うと、辻褄が合う。


「宝物発見〜〜!」


 そう言ったクレオは、1人だけ別の道を進み始める。白いヘビが再び現れて首を横に振っている。俺はそれを見て叫んだ。


「そっちに行ってはダメだ、クレオ!」

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