レベル13

 フレイアから信頼されているみたいで嬉しいけれど、昨夜の事を思い出してしまい長く彼女を見れない……。

 フレイアも同じみたいで、目が合ったと思ったら視線がずれる……。


「マサトにいちゃん。おはよう、ございます」


 マイちゃんは、お盆にオレの朝食を持って来てくれた。それは和食で、ご飯、納豆、塩ジャケ、ノリ、味噌汁、そして生卵まである。


「これは和食ですよね……。

 言いにくいのですが、腐った臭いがしているのですけれど……?」


 アレイアが困惑した顔で言った。

 でも、腐った臭いって……? もしかして、納豆の事か?


「それは腐っているのではなくて、発酵しているのよ。

 生卵と混ぜて食べるのが私の大好物」


 クレオがそう言うとフレイアは固まったみたい。でも、何で固まるの?

 目を見ると、非常に驚いているのが分かる。


「生卵を食べるんですか!?

 先程の臭いが発酵食品だとは分かったのですけれど、生卵を私は食べた事がありません。それに、アメリカ人は誰もそれを食べないと思います」


「生卵を食べるは、どうやら日本人だけみたいなのよね。同僚のイギリス人が言っていたわ。

 でも、とっても美味しいのよこれ。普通は醤油と混ぜて、あったかいご飯に混ぜて食べるの。

 挑戦してみる、フレイア?」


 エリーと俺は卵を割って、醤油と混ぜ合わせ初める。それを食い入る様に見つめるフレイア。あったかいご飯にそれを混ぜ合わせて、エリーと俺が食べると、一瞬だけ彼女の目が一段と大きくなった。


「私も……、挑戦してみます!」


 すごく気合の入った言葉を発すると、フレイアは生卵を割った。

 オレ達と同じ手順を、正確に再現したフレイア。彼女が左手に持っているのは卵かけご飯。

 茶碗を口に持って行き、彼女は一口食べる。最初は硬い表情だった彼女は笑顔に変わっていった。


「これ……、とっても美味しいです。まさか、生卵がこんなに美味しいなんて意外です!

 発酵した豆も頂きたいのですが、これはどうやって食べるのですか?」


 フレイアは生卵かけご飯を気に入ったみたい。

 でも納豆は、日本人でも好き嫌いが分かれる。オレは好きだけれどエリーは大っ嫌いだ!


「マサト、フレイアに教えてあげてよ。私は生卵と納豆を混ぜてしまったから」


「え〜〜と。オレの気に入ったやり方でいいかフレイア?」


「ええ、もちろんです。それでお願いします!」


 真剣に返事をするフレイア。でも、真剣すぎないか……?


「納豆は混ぜれば混ぜる程、味が良くなるんだ。粘り気が出ればそれで完成」


 オレは納豆を左手で持って、箸で混ぜ合わせる。


「俺の場合、いつも40回以上混ぜて、最後に醤油を数滴混ぜるだけ。それを、あったかいご飯で食べるんだ。

 今回は生卵かけご飯と一緒に食べるけれど」


 40回混ぜ合わせた納豆は糸を沢山引いて、それをフレイアに見せた。彼女の目が大きくなっていき、更に口がポカ〜ンとなった。

 そんなに……、驚く事なんだろうか?


「まるで、そのう……。腐った物の、末期症状みたいです……」


 腐った物の末期症状だって!?


「あははは。当たっているよね。

 私、納豆大っ嫌いなんだ。そのネバネバと臭いが嫌い」


 エリーが嫌なものでも見る様な目付きで、オレの混ぜた納豆を見て言う。


「マサトを信じて、納豆を混ぜてみます!」


 又しても、真剣に言うアレイア。何で、そこまで真剣になるんだ彼女は?

 そのあと彼女は真剣に納豆を混ぜ合わせ、最後に醤油を加えた。そして、少量だけ卵かけご飯に乗せると一口食べる。最初硬い表情だったのが、又しても笑顔に変わって行く。


「信じられない事ですが、腐った……。ごめんなさい……。

 発酵した豆が、こんなに美味しいなんて! 匂いは慣れるのに時間掛かるかもしれませんが、私……、これ好きになりそうです」


 そう言ったフレイアは、納豆と生卵かけご飯を食べ続けた。無理に食べているのではなくて、初めて美味しい物を食べる様な表情で。


 みんな食べ終わって食後のコーヒーを飲んでいる時、フレイアがシャネを見て言う。


「クレオの膝にいる使い魔、もしかしてスカンク系ですか?」


「そうなのよ。シャネって言うのよ。エリーは買うのを止めたんだけれど、最強の使い魔だと聞いて。でも、最悪だとも言っていたのよ。それって本当なの?」


 クレオ……、エリーの言ったこと信じていないのか?。


「最悪と言われているのは間違いないですけれど、私のスキルと相性がいいかもしれません。最近、風神のスキルを身につけましたから」


 風神のスキルだって!

 特定の人だけが発動できる特殊スキル、風神剣。

 レベルがかなり上がらないと、習得出来ないとエリーが言っていた。


「風神のスキルって風?」


「まだ初期のレベルなんですけれどシャネの毒がこちらに来た場合、魔物の方に誘導できるだけの風力はあります。ですから、風神のスキルを持った人が近くにいれば問題ないです」


 エリーを見ると、口が一文字になっている。風神剣をまだ習得していないので悔しいみたいだ。

 ライバルとしてフレイアを見ている様で、この先が思いやられる……。


 でもオレは、フレイアと一緒に行動できるので楽しみでもあるな。

 って、何でオレはそう思っているの……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る