僕ときみの誕生日

翌日の早朝。どんよりとした空模様だった。



いつもより早く教室に着いた。まだこの校舎には、ほとんど誰もいない。

「ふぅー」とため息をつき、その鞄を自分の机に下ろす。


…思いのほか、ちょっと早く来すぎちゃったみたい。

おかげで一息、休憩できる時間が増えた気はするけど。



「よっ、七瀬!元気か?」


すると廊下の方から、村野くんの声がして、とっさに振り向く。



うう…彼に絡まれると、休憩どころじゃない。

私は少し引き気味に、距離をとる。


「村野くん…。今日は早いね」

「あ?それはコッチのセリフだよ!俺は部活の朝練だったからさっ」

「…え、そうだったんだ。」

「______そんな事より!!!」


ガタンッ!!


ひっ!?


突然食い気味にこっちを見て、教室の扉を叩く村野くん。

……私はビビって、更にその足を後退させた。



「どーなんだよ神崎とは!…告白したか?付き合えたか?」


…ある程度予測はしてたけど、ほんとに聞かれてしまうとは。



ふと昨日、雨の公園で神崎くんに抱きしめられたことが、猛烈にフラッシュバックする。

イヤイヤ!恥ずかしすぎる。神崎くんとの事は、しばらく考えたくない。



「そ、それは…____」

「どうかしたの?二人とも」

「__……え」


事情を言おうか迷っていた矢先、廊下にいた神崎くんが、話しかけて来た。

え!?村野くんもそうだけど、神崎くん、登校するの早すぎ…!


「よっ、神崎!もしかして、俺たちの話全部聞いてた?」

「あの……『どーなんだよ神崎とは』辺りから聞いてた」



それって…ほとんど全部聞いてんじゃん。

村野くんはそれを聞き、さっきまでの話を誤魔化そうとする。


「あ…そうなのね。んじゃ、この話は無かった事で____」

「いや確かに告白はされたけど……」


えっ!!?

それ言っちゃうの!?神崎くん!?


「はっ!?そうなのか!?おい、やったな七瀬っ!!」


うっ……二人とも、もうやめて……

恥ずかしすぎる感情を抑えながら、床の方を向く。



「でも今は、何も言いたくない」

「………は?どゆこと?」

「最近…、色々あったから。自分のをつけたいんだ」


ぽかんとする村野くんを向いて、神崎くんはそう話していた。


……心の整理…とは?

それじゃあ神崎くんはいつ、心の整理がつくのかな。




やがて休み時間になり、私は1年生の教室にいた。

さっきと比べると人がかなり増え、この校舎も、いつもみたいに活気がでてきた。


「はぁ?フラれた…!?」


自分の席に座るりんちゃんと、長野ちゃんと私、三人で話していた。

私と長野ちゃんは、彼女の席の左右側に立つ。


「う、うん。でもねその後に、その事に関して謝られて…ハグされました」

「はっハグ…!?」


私の発言に一々驚く長野ちゃんに対し、りんちゃんは突っ込む。


「あの、驚きすぎじゃない?」

「いやっいや!だってヤバいでしょ!

そんなのもう、恋愛感情以外の何ものでもないよ!?」


そう熱く話す長野ちゃんに対し、苦笑いするりんちゃん。


え。恋愛感情!?

神崎くんが私に恋愛感情なんて…あるのかな…?



そんな中、りんちゃんは廊下の外を見て、誰かの存在に気づく。


「あっ……新田あらたくん!」



新田…くん?

りんちゃんは笑顔になって、教室の外の廊下へと駆けつける。


整った黒髪に、黒縁眼鏡をかける、イケメンな男子高校生。

身長は蒼ちゃんより少し高いぐらいで、ざっと165センチぐらい。


一瞬真面目そうな人かと思ったけれど、

その人はニコッと微笑み、りんちゃんと仲良さげに話していて、爽やかな印象を受けた。



あの生徒、私はあまり見かけたことはない。

「新田くん」とか言ってたけど、一体誰なんだろう…?


「な、長野ちゃん、あの人だれか知ってる?」

「ああ、あの人は新田慎一あらたしんいちくん。

けっこう表は真面目な性格なんだけど、優しさが…もう…、滲み溢れてて…すっごいよ?」


後半恥ずかしそうに、にやけて語る長野ちゃん。

……たぶん長野ちゃん、彼に好意がある、かもしれない。



直後、長野ちゃんはさっきの話に戻した。


「そんで…、ななちゃんはこれからどうすんの?」

「えっ?…これからって___」

「決まってんじゃん!神崎くんと、どう接していくわけ?」


これから神崎くんと、どう接していくか……?

そんなこと、考えてなかった。



「ええっと…それは、成り行きで…」

「いや成り行きかよっ!!」


私の「成り行き」という言葉を、バン!と机を叩き、ツッコまれてしまう。

その時、顔を一瞬で近づけられ…何も言い返すことができない。



「いい?確かに『成り行き』もアリかもしんないけど、

あーゆー鈍感ボーイにはね、こっちから進まなきゃ何も始まらないから!」


長野ちゃんは真剣な目で、その人差し指を、私の目の前に突きつける。

え…鈍感ボーイって。神崎くんの事、ひどい言い方するなぁ…。


でも、こっちから進むって言われたって…、

これから神崎くんと、どう向き合っていけばいいのかな。


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自分の教室に戻り、ふと席で神崎くんの存在をきょろきょろと探す。

けれど、ここにはいない。今日も彼は、学校図書館にいるかも。


だけどあんまり、そっちに行く勇気は無かった。



……ちょっと、心の整理をつけたい。

そう思い、机の中にあった国語の教科書を、机の上に置く。


授業中にあんまり分からなかった所を、ちゃんと復習しておこうかな。

そして私は、教科書のページを開いた。




_____数分後。


さ、さぶら……わび……



私は、古文のところで鉛筆を止めた。ううっ、これは…ムズカシイ。

どうやら基本的に古文は、私の苦手分野のようで…


鉛筆を持って、震えるこの手。

しばらく経って持つことが辛くなり、その鉛筆を机の上に置く。


そして、教科書のページの上にだらーんと両手を置き、頭を乗せる。

なんだかやる気も湧かず、そのまま顔を俯かせた。



「……七瀬さん?」


はっ、これはもしかして、神崎くんの声。

私は顔を上げると、目の前に彼は立っていた。


え、だらしない所を見られちゃった?は、恥ずかしい。


これまで幾度となく、だらしない所見せてるけど……



「う…こ、こんにちは……」


心がもやもやして、あまり大きな声は出せなかった。



「もしかして、勉強してるの?」


神崎くんは私の教科書を見て、そう問いかける。

たしかに、勉強はしてたけど……


「え?あっ、そうだよ。復習みたいな」

「そうなんだ!もし分からない所があれば、何でも答えてあげるよ」



えっ、答えてくれるの!?

神崎くんがそのまま自分の席に戻ろうとしていたので、私は「あの!」と引き止める。


「…じゃあコレ、分かります…?」


その声に反応して神崎くんは振り向き、こっちを振り向く。

私は、国語の教科書を片手で持ち、指で分からない箇所を指し示す。


「あ、古文……?そっか分かった。じゃあ、ちょっと待っててね」



神崎くんは自分の席にあったイスを、私の席に持ってくる。

そして私の机の前に、イスを置く。そんな様子を、私はじっと見ていた。


そこには、正真正銘、神崎くんがそばにいる。

……ぁ!!恥ずかしくて、思わず目を逸らしてしまう。


「えーと、この部分…だったよね。」


神崎くんにそう言われて、私は逸らしていた目を彼に向ける。



………その時、耳がぴくっとして動揺してしまう。

教科書を見ていた神崎くんの顔が、さらに目の前に接近していたのだ。


ちらっと神崎くんは、そのままこっちを向く。



い、イケメンすぎる……!!!



…って、ダメだ…!!集中……!

動揺を隠せないまま、私は、横にあった自分の鉛筆を取ろうとした。


「「…ぁ」」


しかし…その途端。

同じく鉛筆を取ろうとした神崎くんの手が、私の右手に触れる。

……お互いに恥ずかしくなって、声が出てしまった。



ぁ……ぁ…ぁ……


「っ……!!は、はなし……!!」

「あ、ごっごめんなさい!!」


動揺した状態で、お互いにその手を離す。

私のその右手は、電気で痺れたように震えている。


顔の急接近。暖かい彼の手。

……心臓がばくばくして、今にも破裂しそうだった。


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夕方、学校の帰り。神崎くんと、二人きり。

彼の提案で、途中で公園のベンチに寄り、勉強を教わる事になった。


一緒に教科書を見ていると、ふと神崎くんに話しかけられる。



「ごめんね、付き合わせちゃって」


私は神崎くんの言葉に対して「ううん」と言って、首を振った。


…神崎くんと一緒に勉強できるなんて、半年前までは夢にも思わなかった。


二年生になりたての頃、一目惚れした神崎くん。

そんな彼と二人きりで勉強…だなんて、まるで夢みたい。



「…あれ!実花ちゃん?」

「えっ…りんちゃんじゃん!」


すると、たまたま通りかかった制服姿のりんちゃんに気づく。

そんな彼女の横には…ちょっぴりだらしない、男子高校生。


「はぁ…めんどくせぇーな…」


鞄を片手で背中に持った中島くんもいた。

二人も、この様子からすれば多分、学校帰りかな。


りんちゃんは私たちを見かけると、こっち側に寄ってきた。

中島くんも頭を掻き、嫌そうに、私たちの元にやって来る。



「何してるの、二人とも?」

「今、国語の勉強してるんだ」


りんちゃんが私たちに問いかけてきて、神崎くんが答えた。

するとりんちゃんは「へぇ〜!」と、興味を示すような仕草を見せた。


一方中島くんは、大きくため息をつく。



「……勉強なんて、何の役にも立たねーだろ」


ひっ、中島くん。勉強してる人の前で、なんてことを。

りんちゃんもそんな彼を見て、ちょっと焦りだした。


「蓮木くん、そんな事ないよ!?将来、就職する時とかは大事だよ?」

「そういう事じゃねーから」


中島くんは呆れたように、りんちゃんから目を逸らした。



「ふう。日が暮れそうだし、もうそろそろ帰ろうか」

「え?う、うん!」


神崎くんは教科書をパタンと閉じる。


「あ、ごめん。私たち、お邪魔だった…?」

「いやいや、たまたまキリのいい所だったから」


蒼ちゃんは申し訳なさそうにしていたものの、神崎くんの発言を聞いてほっとした。

「せっかくなら、みんなで帰る?」と提案する。


神崎くん、りんちゃんはすぐに賛成してくれた。

ちなみに中島くんも、ちょっと遠慮気味に参加する。




四人で住宅街の帰り道を歩く。

りんちゃんが歩きながら空を見上げ、笑顔を浮かべていた。


「いやぁ〜…もう冬だねっ!雪とか降るかなぁ…?」

「こんな地域に降るわけねぇだろ」

「えー!そうかなぁ…」


中島くんの一言に反応する蒼ちゃん。


「そんなの分かんないですよ。沖縄とかでも、雪が降るとか聞くし」

「へー!そうなんだ!」

「……一瞬だけ、ですけどね」



そんな会話をしながら、帰路をゆっくり歩いていた。




やがて神崎くんらとお別れして、一人で家に帰る。


…ふう。あと五分ほどすれば、もうすぐマンション。

気温も低くなってきたし、早く家に……ん?



ポツン。


ザ──ッ…


ひっ!?雨!?

やばいやばいっ!傘持ってない!!

私は鞄を頭に乗せ、びしょ濡れの状態で、急いで家へと向かった。



「おいっ待てよ!!」


すると後ろから誰かに声をかけられ、私は立ち止まってその場を振り返る。

中島くんが、藍色の傘を持ってそこにいた。


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マンションの部屋で、少し制服の濡れた男子高校生が、キッチンの方にいた。

冷蔵庫の目の前で、ひたすらコップのオレンジジュースを飲んでいる。


ゴク、ゴク、ゴク、ゴク…


に、冷蔵庫のオレンジジュースを飲んでいる。



「……はやく帰ってください」


私は中島くんに、そう説得した。

それに対して、中島くんは私に鋭い目を向けた。


……その直後、衝撃の返事が返ってくる。




「____しばらくここに泊めろ」



え?



ええええ──────!?!?



私は、動揺を隠せなかった。

いやいや!!ただでさえ男の人を家に入れるのも初めてなのに、

泊めるとか、ありえない……!!


「む、む、無理です!だいたい、じょ、女子高生の家に上がり込む時点で、頭の中が混乱して…!」

「あ?勘違いすんな、俺はそんな事しねーよ」


いや!そ、そういう意味じゃなくて!


「ほら、うちに帰りなよっ!お父さんお母さんが心配してるかもよ!?」

「……家出した」

「……え?」

「家出した、だからココに泊めてくれ」



家出した……?中島くんが?


もしかして中島くん、家庭内で何らかの事情があるのかな?

よく分かんないけど…、彼の目を見る限り、とても真剣そうに見えた。


「……うう。でも先ず…お父さんに許可を取らなきゃ」

「あっそう」


それを聞いた中島くんは、再びオレンジジュースを飲みだした。



「…んで、話したいことあんだけど」


えっ…この期に及んで、今度はなに…?

中島くんはジュースを飲み終え、キッチンのカウンターに置く。


「ど、どうしたの」

「……お前の家、放火されただろ」

「えっ?あ、うん。そうだね」


あれ、私の家の話かな…?


「村野の野郎も、いじめが発覚して大怪我を負った」

「あれ、そうだったね。」

「……不自然だろ」

「…えっ?」


確かに。いくらなんでもこの短期間に、色々事件がありすぎ。

…そういえば!神崎くんも、広瀬さんに命を狙われてた事あったよね。



「あ……!前に神崎くんも、殺されかけてた事があったよ?」

「はぁ!?…それいくらなんでも無理があるだろ!!」


え…?じゃあどうして、こんな短時間に、同じ市内で、

同じ学校の生徒が、バラバラな事件に巻き込まれるんだろう。


「………。」

「…犯罪の裏サイトとかで、知り合った…のかな」



そう考えると、ちょっと恐ろしい。

私たちは知らない間に、命を狙われてるのかもしれない。


「…明らかに、俺たちを狙ってるな。」

「えっ?」


確かに…。狙われてるのは、村野くんとか神崎くんとか…

私自身や、同じ学校の友達が狙われていることが多い。



すると中島くんが目の前にやって来て、そこで立ち止まる。

頭一個分ほど背が高くて、見上げると、私の方を見つめていた。


「……妙に胸が騒ぐ。また、が起こるかもな」


そう言って、中島くんは首を掻き、私の横側を通り過ぎていった。



「次の事件」。もし次に、狙われるとしたら…




やがて夜になり、雨が止む。

リビングで中島くんと夕食を食べた後、私の部屋に移動した。


「…俺はさ、布団敷いてリビングで寝るわけ?」

「うん、そうだよ」

「しょうがねーな……

てかこんなトコ、お前の好きな奴にでも見られたら修羅場だよな」


え?


「……中島くん…神崎くんと私とのコト、知ってるの!?」

「あのな、村野と居れば、嫌でも情報が漏れてくんだよ」


えぇー…村野くんが情報源だったんだ…。

村野くん、どうしてこんなに口が軽いのかなぁ?



「…大丈夫かよ。俺とお前がカップルだとか誤解されたら、お前と神崎も終わりだろーが」


う、そうか…

特に、村野くんや長野ちゃんに知られたりしたら、暴れ出すよ…?


「で、でも、中島くんとはないからね!!」

「は?そういう問題じゃねー…そもそも俺、好きな子いるし」

「え!?」



中島くん、好きな子いるの!?

こ、これってもしかして、大スクープ…!?


「そんな驚くことかよ…」

「す、好きな子って、誰!?」

「……厳密には、好きな子が

「…いた?」


過去形?

中島くんは、これまでの事を淡々と語る。


「元々中学の頃から好きだった、初恋の奴。

いつも、元気で優しいような、俺とは正反対のタイプだった。

でもな…その後、すぐにそいつは死んだ」

「え、死んだ……?」

「学校で飛び降り自殺だ」


中島くんは私から目を逸らし、頭を掻く。



「けど、明らかにで納得がいかなかった。そのさっきまでは、普通に笑顔で俺に話しかけてきたのに。

……ま、お前なんかに言ってもしょうがねーけど」


中島くんは、そう私に打ち明けてくれた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おはよう!実花ちゃん!」

「…あ、りんちゃん」


再び雨が降る中、傘を差し、中島くんと学校へと向かう直前。

家の近くで水色の傘を差していた、りんちゃんとばったり会う。


さらーっとした長い黒髪が少し湿ってて、妖艶な印象を受けた。



「あぁ゛?なんでお前ここに…」

「あっ蓮木くん!いつもみたいに合流場所に来てたのに、今日蓮木くん来なかったからさっ。

だから実花ちゃんと学校行こうかなーと思ってたんだけど…、ここにいたんだね!」


そう説明した直後、満面の笑みを浮かべるりんちゃん。

中島くんはその笑顔を見た直後、横を向いてため息をついた。


あれ、普段から中島くんとりんちゃんは、同じ通学路なのかな?




私たち三人で、学校に向かう。

すると中島くんはあっという間に、前の方に離れてしまった。


「…ねぇ実花ちゃん。今日の夕方、女子会あるの知ってる?」

「__え!?女子会!?」


初耳だった。

そうなの!?りんちゃんだけ、どうして女子会があるって知ってるんだろう。


彼女はその場で立ち止まって、私の方に体を向けた。

つられて、私もりんちゃんの方を向いて立ち止まる。


「昨日私、穂花ちゃんに誘われて。ついでに実花ちゃんも誘ってきてって言われてさ」

「あ、そうだったんだ…!てっきり仲間外れにされたのかと」


穂花ちゃん…って、長野ちゃんのことだっけ。



「実花ちゃんも…行く?」

「__うん!行く!」


りんちゃんにそう誘われて、私は即答した。


「…おい、早くこっち来いよ」


そう言って口で急かす中島くん。私たちは、その声のした方を向く。

……かなり、距離がある場所にいた。中島くん足早すぎ…!



そんなこんなで、私たちは学校へと向かった。


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夕方。下校時間の帰り道に、村野くんの家の前に着いた。

どうやらここが、女子会をする場所らしい。


家の中に入り、いつもの村野くんの部屋に着く。



「……あ!ななちゃんじゃん!」


そこには制服姿の、長野ちゃんに奥原さん、りんちゃんに村野くんがいた。

四人らは机の上で、ポテトチップスをパーティ開けして食べていた。


ちなみに、奥原夏目おくはらなつめさんは、長野ちゃんと同じクラスの女の子。



「あーっ!私のいない間に、なんで勝手に食べてるの!?」

「残念だったな!早い者勝ちってやつだよー!」


私を見て、村野くんはそう言った。

えぇぇ…それなら、一刻も早く食べなければ。



「ほら、早く急いで!」

「ちょっと手洗ってくるから!そのあいだ待っててよ!?絶対だからね!?」


長野ちゃんは、焦っていた私を気にかけてくれていた。

私は猛ダッシュで、洗面所の部屋に移動した。





なんとか間に合い、十分に食べ終えた。

蒼ちゃんはお菓子の袋を、畳んで片付ける。


「……ごちそうさま!」

「はぁー!たまには友達と食うのも、悪くねぇかもな!」


そんな風に、自分のお腹を摩りながら村野くんは言った。

……それにしてもなんでなのに、村野くんがいるんだろう。



「…ねーねー凛ちゃん!前に会ってた眼鏡の男のコ、知り合い?」


すると長野ちゃんが、ゴミ箱にお菓子のゴミを詰めるりんちゃんに向かって、そう聞く。


「ああ、新田くんのこと?私の彼氏だよ!」

「へぇ!そうなんだ、かれし______」



……え?


「「「ええぇ─────!?!?」」」



私たちは、声を上げて驚く。

村野くんは一人だけ、ただ呆然としていた。


「う…うそ、お前、付き合ってる奴いたのかよ…??」

「うん!いつかみんなにも話しておこうと思ったんだけど、タイミングが分からなくって」


それを聞いた村野くんは、更に呆然として固まっていた。


そうなんだ。あの「新田くん」って人、彼氏さんだったんだ。

前に二人が話してた時、あれだけ仲良さそうに話してたのは、恋人同士だから?



「新田くんと付き合ってたの!?ショック!!

…てかゆっるさんっ!みんな私を差し置いて、リア充だなんて!!」

「だいじょうぶ!長野ちゃんもかわいいし、いつかきっと素敵な彼氏ができるよ!」

「あ、そう?えへへ!それほどでも」


りんちゃんの言葉によって、がらっと態度を回転させる長野ちゃん。

それ以降は、しばらくりんちゃんの恋バナで持ちきりだった。




しばらく経つと、奥原さんが時計を見て何かに気づく。


「ああーっ!もう夕方じゃないですか!!」

「ええ?」


焦る奥原さんに対し、長野ちゃんは首を傾げる。



「私…あと10分でも遅れたら、親に怒られちゃいます…!」


そう言ってドタバタと鞄を持ち、急いで机の横から立ち上がる奥原さん。

……奥原さんの両親って、厳格な人なのかな。


「じゃ、さよならっ!!」


奥原さんは軽くお辞儀した後、すぐに立ち去っていった。

そんな奥原さんの焦った様子を、私たちは見ていた。


「…あはは!夏目ちゃん、今日もドタバタと可愛いなぁー」


長野ちゃんは、おかしそうに笑っていた。



「…そういえば蒼、4日後に誕生日だったよな?」

「え?…あ、うん、そうだよ!覚えててくれたんだ!」


村野くんが、りんちゃんに対してそう問いかける。



……あ、そうだ。今日は、11月6日。

4日後の、11月10日がりんちゃんの誕生日である。



「ふぅ!よかった!やっぱ確認しとくべきだったな」

「え?もしかして…サプライズとかあったりして。私、期待しちゃっていいかな!?」


そんな風に、胸を躍らせて話すりんちゃん。

サプライズ…かぁ。りんちゃんに、今のうちにプレゼントでも買っておこうかな。


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「おっせぇ」


夕暮れ、マンションの部屋の前。

玄関の扉に体を寄せ、中島くんが不機嫌そうにこっちを見ていた。

あっしまった。彼に部屋の鍵、渡してなかったっけ。




二人で玄関の部屋に入り、私はため息をつく。


「……長かったな、女子会」


すると彼に、疲れ果てていたオーラを感づかれる。

あ、女子会のこと知ってるんだ、中島くん。



私はカバンを玄関の棚に置き、もう一つため息をついた。


「ちょっと…疲れた、かな。喋り疲れてノドがいたい」

「あ、そ。大丈夫なのかよ」


あれ、心配してくれてる…?


「ありがと、でも大丈夫。水を飲みさえすれば…」

「は?ちげーよバカ」


え?

今の、心配してくれたんじゃなかったのかーいっ!!



「このまま、ぼけーっとしてて大丈夫なのかよって話。次のターゲット…見当ついてるよな」

「つ、次のターゲット?」

「次に事件に巻き込まれる奴だ」


次にに巻き込まれる…って

もしかして、中島くんが前に言ってたやつ?



「……蒼が、一番ヤバいだろうな」

「りんちゃんのこと?」

「そうに決まってんだろ」


りんちゃんが事件に巻き込まれるって?


「最近、あいつとやけに関わってる人間がいる」

「え?もしかして、新田くんのこと?」

「そいつが怪しい」


新田くんが、怪しい?

中島くんはいつにも増して、真剣な顔をしていた。



「おい、しばらくじっとしてろよ七瀬。俺がしっかりつけてやる」


中島くんは私にそう言い、玄関からリビングの方へと向かっていった。



決着…って、一体どうやって、決着をつけるつもりなんだろう。

後でそれを聞いても、話してはくれなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



時は経ち、11月10日。

この4日間は、特になんの変化もない日々だった。


今日は、よく晴れた日。カーテンから空を見上げれば、広々とした青空が広がっていた。



朝日の光が窓から差す中、お父さんとマンションの部屋で朝食を食べている。

ちなみに中島くんは、ここにはいなかった。


「「………。」」


お互いに、どんよりとした空気のまま、朝食を口の中に入れる。

…それは当たり前。男子生徒を、この部屋の中に住まわせたことを知られたのだ。



「あの、お父さん」

「………。」

「…ご、ごめんね、勝手に知らない人、部屋に住まわせちゃって…」


お父さんは、何も言葉に出さず、ひたすら箸を動かしている。



「……お前も、彼氏が出来たんだな」

「え?」

「この前ばったり会った。随分と、ハンサムな男じゃないか」


私はつい、動かしていた箸を止めた。


え!?そういう事!?

あらぬ誤解をされて、ちょっとばかり困惑してしまう。


しばらく誤解を解こうと必死だったけど、誤解が解けぬまま、朝食を食べ終えてしまった。



自分の部屋に戻り、スマホを確認する。

…すると村野くんから、数件のメッセージが来ていた。


『おい!?中島が入院したってよ!?』


一番最初のメッセージが、それだった。

私は、一緒に送られてきた病院の住所を見て、すぐに出かける準備をする。




「大丈夫!?」

「うっせーな…大丈夫に決まってんだろ」


病室で、ベッドに横たわる中島くんに声をかけた。

…いつも通りだし、大丈夫そう。だけど、頭には包帯を巻いていた。


私は、隣にあった丸椅子に座る。

何があったのかと聞くと、中島くんは今日の朝、外を歩いていた時、階段から突き落とされたみたい。


その時に、頭を強く打撲して出血したそうで…

彼曰く、新田くんに突き落とされたって言ってる。



「どうして、こんな朝っぱらから外に行ってたの?」

「……昨日学校で、アイツに直接話そうと誘われた。

言っとくけど俺は、突き落とそうとした奴の顔を見たからな…!」


悔しそうに歯を見せながら、片手でベッドを叩く中島くん。

その時の中島くんの目は、怒っている様に見えた。


…りんちゃんの誕生日だっていう時に、こんなことが起こるなんて。




そのあと村野くんがやってきて、それからすぐに私はここから立ち去った。

すると、病室の廊下にいたりんちゃんとばったり出くわす。


「あ、実花ちゃん。どう?蓮木くんの様子は」

「うん…大丈夫そう、だけど…」


ふと、りんちゃんの瞳を見る。

まるで全てを明るく照らすような、純粋な目だった。



「…あのね」

「ん?どうかした?」

「……今日、りんちゃんに着いていっていいかな。なんだか心配なんだ」


私はつい心配になり、りんちゃんに着いていっていいかと、許可をもらう。

きょとんとした表情をしていたものの、すぐにオーケーしてくれた。


今日は、幸せな誕生日にしてあげたい。




その後再び、病室で中島くんと話す。

中島くんはその時、新田くんの件に関しては一言も話さなかった。


その後、帰り道の、街の歩道をりんちゃんと二人で歩く。


「中島くん、よかったね!いつも通り元気そうで」

「う、うんまあね…」



…私から、話しておくべきかな。

思い切って、その場に立ち止まる。


「……あのさ、りんちゃん」

「ん?どうかした?」


彼女はこっちへ振り返り、首を傾げる。


「りんちゃん、彼氏いるって言ってたよね」

「新田くんのこと?…うん。それがどうかした?」



私は下を向いて、思い切って言った。


「……新田くんって人、りんちゃんの命を狙ってるかもしれない」



りんちゃんの顔を見ると、首を傾げたままの状態だった。




「あっ!二人とも〜!」


すると、その横から長野ちゃん、奥原さんがやってきた。



「二人とも丁度良かった!ななちゃん、いいから着いてきて!」

「えっ_____うわっ!?ちょっと!?離してください!?」


すると長野ちゃんに、半ば強引に腕を掴まれ、引かれる。


「み、実花ちゃん!?」

「あ、気にしないでください!蒼さんには、私がついていますので!」


りんちゃんの背中に手を置く、奥原さん。

そっちへと近づこうとしても、強引に引きはなされてしまった。




「……ちょっと長野ちゃん!?どうして引き離したりなんかしたの!?」


ようやく長野ちゃんの手が離れた私は、ついつい彼女に怒ってしまう。



「あっごめんね、ななちゃん。村野くんに指示されて」

「村野くんに指示された?」

「うん。今からアイツん家で、誕生日サプライズをするつもりなんだけど…」


えっ。誕生日…サプライズ?

もしかして、村野くんはこれまで、それを計画してたの?



「ななちゃんにも、飾り付けを手伝って欲しいんだって。蒼ちゃんの事は夏目ちゃんに任せて、とっとと行こ?」

「…うーん…」

「ねえ、今日はあの子の、さいっこうの誕生日にしようよ!」


そう言われて、ハッとする。

…ひとまず今日は、村野くんの家に向かうことになった。


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「連れてきたよ!重要な助っ人!」

「うおぉ!助かるぜ、ありがとな!」


やがて、村野くんの家に着き、部屋に向かった。

部屋に着くと、色紙で作った飾り付けが、壁一面に貼られていた。


「す、すごい…!これ全部、村野くんたちが作ったんだ…!」

「まあな!ほらそこで突っ立ってないで、早く手伝ってくれよ!」


私は「うん!」と返事してテーブルの前に座り、すぐに取り掛かった。



その後、村野くん、長野ちゃんと三人で色紙を切りながら、色んな事を話した。


特に気になったのは、村野くんがもっぱら図工が苦手だった事を知った時。

確かによく見てみると形はいびつだったけど、

「気持ちがこもってればそれでいい!」と村野くんは話した。



そうこうしていると、神崎くんもやってきた。


「おっ!神崎!」

「その…僕も何か、役に立つことあるかな」

「いいぜ!んじゃ、七瀬の隣座れよ!」


え、いやいや!一言余計だよ!?

心の中で焦っている私をよそに、神崎くんは私の隣に座る。

彼も横にあったオレンジ色のハサミと、作りかけの装飾を手に取り、作業を始めた。


終始、神崎くんとはわずかに反対の方向に体を向けた。



「…んじゃ、俺たちは食べ物買ってくるわ!」

「あ、私も行く_____」

「まあまあ!お前らも、いちゃつきたいだろ?」


はっ、む、村野くん!?

にやけた表情を見せながら、村野くんは部屋から去っていった。

その時、神崎くんも少し焦った様子だった。


長野ちゃんも「ひゅーひゅー!」と言いながら、その場を立ち去っていった。

……あの二人が合わさると、ちょっと厄介だね…。




また、沈黙の二人っきり。


「た、誕生日プレゼント、買ったんだ…」

「……えっ。あっそうなんだ…。」

「その…りんちゃんに気に入ってもらえたら、喜べる、かも…」


なんだか変な日本語みたいになっちゃった。

すぐにそんな他愛のない会話は、終わってしまった。



「……あのね」


すると、神崎くんの方から口を開く。

「なに…?」と返事すると、緊張気味な面持ちで、私にこう話してくれた。


「……少しだけ、本音を言ってみてもいいかな」

「う、うん。いいよ。言ってみて」


すると神崎くんは作業を中断して、私の方に体を向ける。

私もハサミなどを置いて、神崎くんの方を向いた。


神崎くんは私の方をじっと見て、深呼吸した。



「あの時から……七瀬さんが、ずっと可愛く見えてしょうがないんだ」



_______っ!?!?!?


えっ、えっ…!?

動揺を隠せず、顔が熱くなってゆく。


え、神崎くんが私のことを、可愛いって言った……!?


ガチャッ。


「しまった!上着忘れて…ん?もしかしてお邪魔だったか?」



村野くんが戻ってきて、私たちはとっさに体の向きを逸らした。

彼はそれを見て、何やらニヤついているように見えた。


─────────────────────────────────


「よし、できたっ!!」


そう言って、大きなメッセージ付きの紙を、部屋に貼り終えた長野ちゃん。

そんな様子を、私たち三人は後ろで見ていた。


「うおー!すげー!『りんちゃん 誕生日おめでとう!』だってよ!」


ようやく、この部屋の飾り付けが終わったみたい。

壁一面には、色紙の装飾。机の上には、コンビニのショートケーキが四つ置かれていた。



「よーし、みんなありがとな!」

「ううん!せっかくの誕生日だし、みんなでお祝いしてあげなくちゃ!」


村野くんと長野ちゃんは、満足そうに床に座った。


「完成して良かったね」

「うん…!あとは、蒼ちゃんが来るかどうかなんだけど」


そんな風に神崎くんと話していた。

蒼ちゃんは、やって来るのか。私はそれだけが心配だった。



「うーん?時間的に、もうすぐ夏目ちゃんと一緒に来るはずなんだけど…」


その長野ちゃんの一言で、不安が徐々に募ってゆく。




………。


「…もしもし夏目ちゃん?」


しばらく経ってから流石に不審に思ったのか、

長野ちゃんはスマホを取り出し、奥原さんに電話する。



「…え?うん。わかった…けど…」


電話を切った長野ちゃんは、どこか困惑した表情だった。


ゆっくり休憩を取っていた私たちは、長野ちゃんからあることを聞く。



「…今蒼ちゃん、新田くんの家にいるって。夏目ちゃん、公園で待ってるみたい」

「はぁ?なんで彼氏の家なんかに?」


……え?

それって、まさか……



「ん?お、おい?どうしたんだよ七瀬?」


私はすぐにカバンを持って、急いでこの家から出た。




公園に着き、走って奥原さんを探す。

私はベンチに座っていた奥原さんに気づく。


「あれ、七瀬さん!?どうかしましたか?」

「はぁ…はぁ…!あ、新田くんの家はどこですか…?」


彼女の目の前に立ち止まり、息を荒げながら、そう聞いた。



「えっと…新田くんの家なら、あっちの方に____」


私は奥原さんの指さした方向に、すぐに走っていった。



「え、ちょ、七瀬さん…!?!?」


困惑げな大声で、私を呼ぶ奥原さん。

けれど、今はそれに構っている場合じゃなかった。




やがて、「新田」と書かれた名札のある家を見つけた。

……黒い屋根に真っ白い壁の一軒家。定期的に手入れされているみたい。


私は、息を切らしながら、すぐにドアのチャイムを鳴らそうとする。



ガラガラガラ……


しかしその直前、ガレージから扉の開く音がして、

チャイムを鳴らそうとした自分の手を止めた。



私は物陰から、ガレージの方を覗き込む。


……そのガレージには、新田くんがいた。



私の方には気づいていないみたいで、

むしろ駐車されていた黒い自動車のトランクを、じっと見つめていた。


するとその人は突然、不気味に笑みを浮かべ、何かを話す。


「…今日は、僕ときみの誕生日だ」



……その瞬間、何もかもがぞっとする。

新田くんは、トランクの中にいる「何か」に話しかけていた。



『僕ときみの誕生日』……って、まさか……



新田くんは、横にあった扉を開けて家の中へ入っていった。

その隙に、私はその車のトランクの中身を覗く。




……りん……ちゃん……?



りんちゃんが腹から血を流し、トランクの中に詰められていた。

私は思わず、口を両手で塞いだ。そして恐怖で、後ろの方に倒れ込む。


う、うそ…?どうして…?

「次の事件」…それがまさに今、この場で起こっていた。



「………何をやっているのかな」

「っ__!?」


声の方へと振り向くと、新田くんが、右手に包丁を持ってそこにいた。

普段とは豹変した目つきで、私のことを見ている。


その鋭い包丁は、真っ赤に染まっていた。


「っ……嫌っ!!?お、お願いだから、来ないでください…っ!!」

「…ねえ、君は凛の友達だよね。どうして、ここに来たのかな。誰かに言わないよね?絶対に、言わないよね?」


座り込んだまま、ゆっくり後ろに後退りする。

しかし新田くんは、少しずつそれに応じて、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。


やがて、どんどん壁に追い詰められてゆく。



「…僕らの愛を邪魔するやつは、とっとと消えろ……ッ!!!」



すると、自分のお腹から、鋭い激痛が走った。

包丁を腹に刺されていた。そこからは、赤い血が溢れ出す。


「___っあ……!?!?」


必死に助けを呼ぼうとするものの、刺された箇所が痛んで大声が出せない。



「……あっははははははハハハ……ッッ!!!」


新田くんは不気味に笑いながら、包丁から手を離す。



そのまま新田くんは、ガレージの扉から、この場所を立ち去っていった。




……もう………だめだ……っ……


私は、このガレージで、絶望状態だった。

まさか私がりんちゃんと、同じところで、死ぬなんて……




………。


意識がもうろうとする中。目の前に、黒ずくめの人が、現れた。

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