力の結論
カチャッ。
スピナーが止まった。
視界がぼんやりとしていたので、まず時間を置いて、意識をはっきりさせる。
辺りの光景・状況が、少しずつ分かってくる。薄暗い場所である事、その次に屋内である事……そして、自宅の寝室でベッドに横たわっている事に気付いた。
窓際の青いカーテンは閉まっている。すぐに起き上がり、サイドテーブルのデジタル時計を確認する。
──10月28日、朝だ。今日の昼頃に、また村野と七瀬さんが僕の家に上がり込んでくる。
タイムリミットは明日。まだ余裕はある。しかしこんな早い時間に戻ってきても、何かできるだろうか。
……それにしても、何だろう。この
そんな事を考えながらも、僕は暫く、時間を持て余していた。
昼になる。家のチャイムが鳴った。
黙々と座っていたダイニングの椅子から、すぐに立ち上がって玄関へと駆けつける。
「おっ、じゃまっ、しまーす!!」
「か、神崎くん……おはよう」
玄関の扉を開けると、私服姿の村野と七瀬さんがいた。二度目なので、僕は多分、真顔だっただろう。
二人は手を上げて挨拶。にやにやと笑う陽気な村野の隣、上げている手も震えていて、俯きながら、申し訳なさそうに僕を伺う七瀬さん。
──村野はいつもの如く、元気そうだった。
「あんな事」に巻き込まれている素振りなんて、僕は一度も見たこともない。僕の入院初日、村野のアザを見た時。あれが唯一、最初で最後のそれだった。
もしくは、ただ単に僕が……今まで気づけなかった、だけなのか。
「『おいおい、また村野が来た』って思ったろ? 神ざ──」
「ううん。どうぞ中に入って」
僕は腕を退け、玄関に入れる隙間を作る。「え? い、いいのか?」と唖然とする村野と七瀬さん。
……まさか、そこまで驚かれるとは思わなかった。僕の対応が、よほど意外だったのか。
「神崎くん。そ、その、急に私たちが押しかけて迷惑とかじゃ……」
「……んま、いいんじゃねーの? 外寒いから、さっさと中入ろうぜ!」
調子のいい村野はそう言うと、僕の横をすり抜けて玄関の中に入ろうとする。
だが。僕は中に入ろうとする村野を、瞬発的に腕で止めた。──やっぱり、まだ僕の家には入れられない。
「……は!? どーして止めんだよ、気が変わったのか!?」
「いいや。その代わり、質問に答えてほしい」
僕はゆっくり首を振ると、村野はこの事態に驚いている様子だった。
入る寸前で止められ、眉を
「村野──暴力を受けてる、とかないか」
「は……?」
半ばストレートに言うと、唖然とする村野。その直後に顔を斜め下に向けた。
七瀬さんも驚いている様子だったので、僕の発言で初めて知ったのだろう。
「えっ? 神崎くん、どういう事……?」
「前に聞いたんだよ、先生に。4人組グループに、いじめられるって」
「う、うそ……そうなの、村野くん?」
心配そうに村野を見つめる七瀬さんに対しても、彼は気まずそうに目線を逸らしている。
沈黙の空気。そよ風の音が、鮮明に聞こえてくる。
もはや村野の反応を見れば明らかだ。やっぱり……。
「──ぷっ、あっはははっ!!」
え?
鮮明に聞こえていたそよ風の音を打ち破るかのように、村野は大声で笑う。
「お前、あっはは! はぁー! 俺がそんな、いじめられてる訳ねーじゃん!!」
村野は腹を抱えて、ふざけているかのように笑った。
僕と七瀬さんは、その笑い声に混乱する。
「えっと、あの。村野くん、ほんとに? 嘘とかじゃ──」
「いやいや! 嘘なんかじゃねーよ! あれ、もしかして……変な誤解とかさせちまった!?」
七瀬さんは心配そうにそう言うが、陽気げに村野は、彼女を横目に見てそう返す。そんな風に言う村野は、あまり嘘をついているように見えない。
……何でだ? 先生の言っていた事が間違っていたのか、村野が演技派なだけか……?
僕には、こいつの考えている事が、全く理解できなかった。
「あのさー、もう中入っていい?」
考え込む僕をよそに、村野が玄関の中を指差してそう言う。
質問には応じてくれた。なので、約束を破るわけにはいかない。僕が渋々腕を退けると、村野はすかさず中に入っていく。
──その時、七瀬さんも少し不安そうな表情をしている事に気づいた。
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「ありがとな、神崎! もう俺お腹いっぱいだわ」
「こ、このお礼は、いつかするね」
「ううん。こちらこそありがとう」
その後、また料理を振る舞うことになった事に関しては、言うまでもない。玄関で靴を履き終えた二人と会話する。
……七瀬さんが、過去に戻る前よりも元気が無いように見えるのは、気のせいだろうか?
「じゃ、またな〜っ!」
「あ、また明日……!」
その後、家の外で手を振る二人を、僕は静かに玄関で見送る。
二人はしばらく手を振った後、背中を向けてそれぞれの家に向かっていった。
このまま帰らせてしまって大丈夫だろうか、と頭によぎる。だが引き留めた所でどうする事もできない。
しかし──しばらく僕が玄関で見送っていると、七瀬さんが突如、その場でピタッと立ち止まった。
村野はそれに対し、心配そうに彼女の様子を伺って声を掛けていた。
遠くからだったので、ハッキリとは聞こえなかったが。「どうした、七瀬?」と言っていたのだと思う。
何も言わないまま七瀬さんは、少し経ってから早歩きで僕の前に引き返してくる。
村野は置いて行かれ、遠くから不思議そうに、僕らのことをじっと見つめている。
真剣な表情の七瀬さんは、内緒話をするように、僕に数歩ほど近付いて小声で言った。
「……あのね、神崎くん。私も、一回聞いたことがあって」
「……え?」
「
えっ? じゃあやっぱり、本当にあいつは……。
「じゃあなんで、村野は僕らに言ってくれないんだろうか」
「……それぐらい、自分の弱いところを、見せたくないんじゃないかな」
自分の……弱いところ? 僕にはピンと来なかった。
「そういう事情、村野くんにとっては、きっとコンプレックスなんじゃないかなって思う。なんというか……村野くんの心は複雑な気がするんだ。単に私の想像だけど……」
明るく陽気な印象をもつ村野だが……その胸の奥には、一体何があるのだろうか。
もしかして、僕にすら分からない事も──。
「おーい! なーに話してんだよ! さっさと行くぞっ!」
「あっ、うん! ……じゃ、じゃあバイバイ、神崎くん」
待ちくたびれていた様子の村野は、手を口に当てて七瀬さんに叫ぶ。
七瀬さんは村野の方を見て、僕と軽く手を振り合った後、彼のほうへ向かっていった。
──村野に対して、僕ができる事は、命を救う事だけなのだろうか。
そんな物憂げな気分に陥りながらも、元気そうな村野の後ろ姿が見えなくなるまで、ただその場で見送っていた。
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翌日、10月29日。
いつもより早く、学校に来てしまった。今日の昼頃に、村野は死んでしまうはずだ。……その事を考えていると、夜も眠れるはずがない。
眠気覚ましに運動場を散策していると、辺りには人が少ないこの場所。
部活の練習を個人で行なっている生徒も、少なくはない。大きなグラウンドにぽつんといたユニフォーム姿の村野も、その一人だった。
……あれ? 村野も学校に来るの、早いんだな。
早朝の静寂な運動場に、砂をザッと蹴る音がよく響く。
村野はサッカー部だし、一人で朝練でもしているのだろうか。
けれどあいつ、部活はサボってるとか言ってなかったか? ……案外、真面目なのかもしれない。
離れた所で村野の様子をじっと見ていると、彼が思いっきりボールを蹴ったせいで、僕の足元にボールが勢いよく転がってくる。
村野はその場に立ち止まり、こっちの方を見た。……どうやら僕の存在に気付いたようだ。
「……おーい! そのボール、俺にパスしてくれーっ!」
少しにこっと笑顔を見せて、大声で僕にそう指示する。
足元には、サッカーボール。……仕方ない。あんまり自信ないけど、とりあえず思いっきり蹴ってみるか……!
村野の方向に合わせ、ボールを力強く蹴る。
「──ぁ」
しかし渾身の蹴りは掠っただけで、ショボい勢いのまま、ボールは真っ直ぐ右方向に進んでいく。
人の少ないこの場が凍りつく中、それが転がる音だけが、僕の耳に響いた。
「……ボール蹴るの、難しいね」
僕が苦笑いしながら、唯一出てきた言い訳がこれだった。恥ずかしい。すごく恥ずかしい。
「ぶっ……あっはっはっは!! お前意外と運動音痴かよっ!?」
村野は腹を抱えながら大笑いする。とても苦い屈辱を味わった。
笑いたければ笑ってくれ。でもこの事、誰にも言うなよ……っ。
その後、しばらく村野と、一緒にサッカーボールを蹴り合っていた。
いや、ゆっくり蹴れば、どうにか上手くコントロールできる。ゆっくり蹴れば……。
「……村野。ここでボール蹴ってたのって、朝練か?」
「ん、あーそうそう! 最近はさ、ほとんど朝練だよ!」
「えっ、そうなのか」
村野がここまで熱心なのは、かなり珍しい事だ。
……少なくとも勉強も同じように取り組んで欲しいというのが、僕の本音だ。他人の心配はあまりしないけど、こいつが留年しないかは不安である。
「……何で最近になって、そこまで熱心になったんだ?」
「ん? ああ、俺に弟がいることは知ってるだろ? その弟が理由ってのも、あるかもしんねーなー」
「えっ、どういう事だ」
「弟もサッカー部だしさ、なんつーか、負けてらんねーってこと」
村野の弟も、同じサッカーの部活。
「負けてらんねー」って、それは何の勝負なのかは知らないが。ただ、それを話す彼の声の明るさが、熱心に励んでいる想いを強く証明していた。
「じゃあ、アザも朝練で出来たのか?」
「──え? ……あ。そそ! そゆこと」
不意打ちを食らった一瞬の焦りの表情も、僕は見逃さなかった。
やっぱりこいつ……そこまで僕に秘密を隠し通したいのか。正直、あまり良い気分では無かった。
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授業が終わって休み時間になった途端、クラスの教室で自分の席に座っていた。
僕は、村野の方を確認する。村野も自分の席に座り、教科書をしまっている様子だ。
……まだ村野はいる。
けれど、あいつが事件に巻き込まれるまでには、もう時間の猶予もなさそうだ。
深呼吸した後、僕は席を立ち、村野のいる方へと歩く。
しかし同時に、村野の肩を背後から叩いている誰かに僕は気付き、そのまま立ち止まる。
「──よー、村野じゃねーか」
「……!」
その声は、荒々しくも若い男の声だった。
……折原拓海。良からぬ行為を行なっている主犯だ。
後ろには三人の男子生徒。折原含む全員、さっきまでこの教室には居なかった。……おそらく全員、他クラスの奴だろう。
四人の威圧感が半端なく、僕もそのせいで足を止めてしまった。
村野は驚いた表情をして以降、一言も喋る気配もなくただ俯いている。
「あー。今日も調子よくてさ……遊ぶ相手が欲しかったんだよな。早く行かねーか?」
「……はは。俺、今日、ちょっと用事が──」
「俺たち友達だろお前に拒否権なんてないんだよ」
村野は焦った状態で席を立って去ろうとするが、後ろの取り巻きのような男子生徒が、彼の腕をがっしり掴んで止める。
折原は鋭い目付きで、自分の右小指の爪をガリガリと噛んでいた。
村野は、青ざめた顔をしている。
あんなに怖気付いた村野の表情を見るのは──初めてだ。
……今まで村野はあんな奴らから、ずっといじめを受けていたのか……?
やっぱり、なんで僕は今まで気が付かなかったんだ……? これまでもきっと、気付けるチャンスは少しでもあったはずなのに……。
でもこんな時、一人で考え込んでいる場合なんかじゃない。こうなったらと、思い切った僕は……折原の方へと歩く。
彼の隣に来て、村野を掴んでいた折原の手首を、ぐっと強く掴む。
「──こんな事はやめてください」
口元を震わせながら、やっと言えた。後ろの三人組の身長に怯えながらも、僕は折原の睨まれる目を、そっと睨み返す。
……正直、頭の中は恐怖でいっぱいだった。後ろに回していた方の手が震えていたのも、そのせいだ。
「お前、誰? 俺たちの邪魔しないでほしいんだけど」
「神崎、です」
「あそ。別にいいじゃん友達と遊ぶぐらいとか。友達と遊ぶのがダメってあんたキチガイじゃねーの」
強引な言い方だ。折原にその手を振り払われ、四人にさらに睨まれる。村野はただ何も言わず、顔を俯かせた状態だ。
──でも僕は、こんなやり方、全然好きじゃない。
「友達と遊ぶぐらいならいいんです。でもあなたたちの
「……は? ふざけてんの?」
「いや……何もふざけてません」
折原は村野を無視し、僕の目の前に立った。
三人も折原の後ろで僕を睨む。僕の中で、ぞっと冷たい空気に覆われる。
ここまで人に嫌な目で見られるなんて、思ってもみなかった……。
冷静な表情のまま押し通そうとしているが、額には見えないような汗が滲む。
けれど、ここは僕らの教室。
他の生徒がいる中では、彼らもきっと武力行使は不可能だ。
「──かっ、神崎くんを、いじめないでください!」
そんな事を考えていると、僕らの様子を見ていた七瀬さんが、横から乱入する。
僕と折原の間に立ち、手を広げて庇ってくれて……少しだけ安堵した。正直、今度は七瀬さんが犠牲になるって、不安にはなったけれど。
「……何言ってんの?こいつらが俺たちに、ちょっかいかけてきただけ」
「そんなことっ……!」
「うるせーな! ただ話し合いしてただけだろーが。女は黙ってろ」
……案の定だ。許せない、七瀬さんを単に「女」呼ばわりするだなんて。
七瀬さんも強がっているが、背中からして……怖さと悔しさの感情が見て取れる。
「──ねえ、どうしたの!?」
そんな時、職員室か何処かにいたはずの冴島先生が、やっと教室に現れる。
……気がつけば辺りの生徒たちも、こちらの方を見て騒いでいた。
折原はそんな状況を見て、他の三人を連れてすぐに教室から出ていった。
ようやく周りの様子も、いつも通りに戻った。
「大丈夫?」
「……うん、大丈夫。あの人たち、ひどすぎるよ」
七瀬さんに心配の声をかけた。……少しこわばっていたが、僕の顔を見て冷静になったようだ。
次に村野を見ると、未だに沈黙したまま、顔を俯かせた状態だ。僕は彼に近づき「大丈夫?」と声をかけるが、返事はない。
「……って……んなよ」
「え……?」
少し経つと、村野はようやく口を開いた。でも明らかに様子がおかしい。
「頼むから、勝手な事すんなよ────!!」
何故かその時、彼は不機嫌に怒りだし、廊下の方を走り去っていった。
学校のマナーを無視する程、取り乱しているように見えた。
「む、村野…!?」
僕は村野を追いかけようとしたが、七瀬さんに左腕を掴まれて止められる。
「っ!?な、なんで止めるの……?」
「ごめん、神崎くん。今の村野くんは、もしかしたら、一人にしてあげたほうが」
そう言われて僕は何も言えず、その場に呆然と立ち尽くしてしまった。
え? 何で? 僕はただ、村野を救おうとしただけだ。なのに何故、あんな風に言われてしまったんだろうか……?
七瀬さんが暗い顔をしていたのも、あまり意味が分からなかった。僕は、「村野の気に障る」ような事をしてしまった……??
「……神崎くん、七瀬さん。もしよければ、私に何があったか説明してくれない?」
いつの間に横にいた冴島先生にそう訊かれる。
僕らは先生に、これまでの事情を説明した。
説明を終えた後、冴島先生はうーんと考えるような素振りを見せた。
「いじめ……薄々気付いていたけれど、あの四人組は確かにおかしいのよね。けどまさか、そこまで酷いとは思わなかった」
先生は額に手を当てて、僕と七瀬さんに対してそう話した。
横にいた七瀬さんは、冴島先生に疑問を抱く。
「先生は気付いていたんですか?」
「ごめんなさい。それに関しては本当に初耳なの。だけど、あの四人は全員問題児だって噂だけは聞いたことがある。特に、あの折原くんって子は」
どうやら折原には、何らかの事情があるらしい。それに関しては、詳しいことは聞けなかった。
「何にせよ、教師として見過ごせない問題だし、今から上の先生に報告してくる。だから安心して……!」
「そうですか……あ、ありがとうございます」
「いえいえ! その、本当にごめんなさい。私たちもこの事に気付くべきだったから」
僕はお礼を言うと、冴島先生は優しい表情で、教室を出ていった。
……先生ですら気が付かなかった。村野はそこまで、この件を隠し通したかったのか……?
村野の様子を確かめにいった方がよさそうだ。
そう思っていた矢先、蒼さんが先生と入れ違いでやってきた。
「あっ、実花ちゃんと……神崎くん!」
「りんちゃん! どうしてこの教室に?」
「うん、勉強も終わったし、退屈だったから。実花ちゃんと会いたくなっちゃって!」
その会話を、僕は二人の横で聞いていた。
直後。笑顔とは一変して、蒼さんは不安げな表情になる。
「……あのね、さっき村野くんとすれ違ったんだけど、明らかに様子がおかしかったんだ。たしか生徒四人に絡まれてて……」
生徒四人……って事はもしかして、折原達?
あいつらは、まだ諦めてない……?
──まさか。
この時まで、明らかに油断していた。すぐに二人を置いて、理科室へと向かう。
「あ、待って神崎くん!? 廊下走っちゃ……!?」
蒼さんに一言注意されながらも、僕は振り向かず、少し歩幅を緩めながら、それでも間に合うようにと走り出した。
「──お、おい、ちょっとあれやばすぎるだろ……!」
「いやいや! 先公にバレたらガチでやばいやつ! あの野郎、いい加減すぎるだろ……!」
そして、廊下の途中。
男子生徒三人が逃げるように僕の横を通り過ぎ、二人がそう話しているのを聞いた。
その途端、僕の中ではもう、半分諦めがついていたのかもしれない。
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教室の自分の席に戻ると、七瀬さんが俯いて僕に謝罪した。
「ごめんなさい。私が……神崎くんを止めたから」
……理科室で目撃した状況は、最初の状況とほとんど、いいや。「全く」一緒だった。
折原は髪の毛をぐしゃぐしゃに荒らしながら、村野の死体を見て、不気味に笑っている光景。
その直後、七瀬さんも後から僕に付いてきたため、状況を目撃してショックを受けてしまった。
村野を追いかけようとした僕を、止めてしまった自分を責めてしまっているのだろう。
「──いいや、七瀬さんは、何も悪くない」
でも違う。それは違う。悪いのは僕だ。
おそらく、僕が先生と話している合間に……村野から目を放してしまったから。
元々そう簡単に、過去を変えられるとは思っていない。
少しずつ試行錯誤を繰り返せば、きっと。きっと、「物事の構造」が見えてくるはずなんだ。
放課後、家に帰った僕は、すぐにポストの中に入っていたスピナーを回した。
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「……おーい! そのボール、俺にパスしてくれーっ!」
目の前には、ユニフォーム姿の村野。
ぼんやりとしていた辺りの景色が、やがて鮮明になってくる。……ああ、ここは朝の学校の運動場だ。
まさかと思い、足元を見てみると、サッカーボールがある。
僕は、村野が朝練をしていた時間に戻ってきたようだ。
だと、すれば……。
僕はボールを真っ直ぐに、優しく蹴る。
「ん!? 上手いじゃねーか! うわー、意外と下手かと思ってたけど」
今度は真っ直ぐ、村野の方にボールが進んだ。
ふう、よかった。運動音痴な僕は、スピナーのおかげで屈辱を味わわずに済んだ。村野の一言は、鼻についたが。
その後もしばらくは、二人で村野とボールを蹴り合っていた。
「……村野」
「あ?どうかした?」
「何かあったら、僕に相談してほしい。力になれるかは、分からないけど」
球をパスした僕が、暗い表情になると、村野は驚く。
「どーしたんだよ? しけた顔して。……おーいおい! だいじょーぶだって! 俺には、悩みなんてひと欠片もねーから」
村野はそう言った後、確かに悩み一つもなさそうな、満面の笑みを見せる。
けれど僕の目で見たそれは、何かを抱えこんでいるような表情に錯覚していた。
……どうしてそこまで、嘘を吐きたがる? 本当の村野は、どこにいるんだ?
───────────────────────
「友達と遊ぶのならいいですけど、あなたたちの遊ぶの意味ってなんですか」
「……は? ふざけてんの?」
「ふざけてません」
休み時間、教室で四人組の一人である折原に、僕は一度目のタイムリープと同じような会話をしていた。
こちらを睨んだ状態のまま、折原は横にいた村野を無視して僕の目の前に立つ。
案の定、とても不機嫌な様子だ。後から三人も折原の後ろで、僕を睨んで威圧をかけてくる。
しかしこの光景は、僕からすれば二度目なので、恐れることはなかった。
すると表情の距離が近すぎたせいか、折原は僕の視線に、妙な不自然さを感じている。
「──かっ、神崎くんを、いじめないでください!」
そんな時。七瀬さんが、僕と折原の間に来て庇ってくれた。
……だけど、ごめん。今はその気遣い、必要ないから。
「えっ?」
両手でそっと七瀬さんの肩を持ち、優しく右側にどける。
唖然とする彼女をよそに、気が付けば僕は、これまでの鬱憤を晴らすためにこんな行動に出ていた。
ドンッ……!!
僕は両手で折原の胸ぐらを掴み、手前にあった誰かの机の上に思いっきり押し倒す。
思いの外、机から強烈な音がして、この教室の生徒達は、みんな僕らに注目している。
こんなの全然ガラじゃない。でも、これで何かが変わるなら。
「いいか。これ以上村野に何かしたら、僕が絶対に……!!」
自分が思っている以上に、怒りの感情がこみ上げてきた。
七瀬さんと、横にいた三人組は、その状況に驚いていた。何より僕が驚いている。
折原すら、突然の事に驚いている様子だったが……一瞬で表情を戻した。
「ハッ! ……そう気取ってられんのも、今日までだからな」
僕を見て、鼻で笑う折原。言い残した後、僕の手をバッと振り払い、三人を連れてこの教室を去っていった。
さっきまで僕らに注目していた周りの生徒たちは、いつも通りの雰囲気へと戻った。
「ちょっと神崎くん!? 何してるの!?」
「あっ……ごめんなさい」
教室に入ってきた冴島先生に、割と怒られてしまった。
うん。行動を大胆にしすぎた気はする。良くも悪くも、いずれにせよこの行動で、何かが変わるだろうか……。
──あれ、村野がいない?
辺りを見てみると、いつの間にか教室を出ようとする村野が目についた。
僕は追いかけようと足を動かすが、七瀬さんに左腕を掴まれ止められる。
「……お願い、止めないで七瀬さん」
「ごめん、神崎くん。今の村野くんは、もしかしたら、一人にしてあげたほうが」
七瀬さんはそう言うが、僕は一度それに従って、失敗した事がある。
僕は、自分の左腕を掴んだ彼女の手を、右手でそっとつかんで降ろさせた。
「いや……ダメなんだよ。僕は行かなきゃ。早くしないと、村野を救えない。どうしても僕には、あいつを救う理由があるんだ」
「えっ? それって、どういう……」
「僕は、村野の親友だから。村野は何を思っているのか、その事をハッキリさせなきゃ、僕は村野を救えない。そうなんだよ」
思わず、自分に言い聞かせるような言い方になってしまった。
その途端。七瀬さんは僕と目を合わせたまま、驚いたように何も言わなくなる。
僕はその隙に、早歩きで村野の後を追った。すると、七瀬さんが何であんな反応をしていたか分かった気がした。
僕の目から──不意に、涙が零れていたからだ。
いつの間にか、僕の頬に何粒もの雫が伝って、それは制服のシャツに落ちて染み込んでいた。
「……いた。村野」
人気のない廊下のベンチに座っていた村野を見つけて、僕も隣に座った。
こんな静かな所で、何をぼーっとしているんだろうか。
僕はふと、横にいた村野の顔を見つめる。
いつも元気な印象の村野。だが今だけは、横にいた僕に気付いても、どこか物思いに浸っているような横顔だった。
「ねえ、どうしてそこまで、いじめを隠してるの? ……僕に話したくないの?」
「……そんなんじゃねーから」
「確かに言ったよね。何かあったら、相談してほしいって。教えてほしいんだ」
…………。
何も、反応はない。僕のことをそれほど信用していないのだろうか。
僕は口を開き、何かを言おうと言葉を考えていた途端──。
「よー、神崎」
折原と三人組が、再び僕らの目の前にやってきた。
ここまで来るだなんて、かなりしつこい。何でこんな所にまで……!
「い、言いましたよね……!? こ、これ以上村野に何かしたら──なっ!?!?」
すると僕は最も簡単に、背の高い三人組の一人に胸ぐらを掴まれる。
無理に抵抗して離そうとしても、どうしても離れられない。
それに運悪く、ここは人気が少ない廊下だ。誰も助けに来てくれる気配もない。
「アッハハハ……! 馬鹿みたいにおめでてーな! 俺たちに太刀打ちできるとか本気で思ったわけ? かーんーざーきーくん?」
後ろにいる折原は、僕を見て嘲笑っている。
もし村野の立場になって、こんな奴らと関わると思えば、確実に気が狂いそうだ……。
僕が身動きも取れない隙に折原は、村野の腕を掴み、理科室の方へと無理やり連れて向かった。
「ま、待て……折原っ!!」
「じゃあ早速、かわいがってやるか? 神崎?」
「はぁ……っ!?」
折原と村野がいなくなった今、ここにいるのは僕と三人組だけだ。
その三人組に両腕を掴まれて、そのまま別の場所に連れて行かれた。
誰もいない男子トイレ。僕は、再び彼らに胸ぐらを掴まれ、そのままトイレの汚い壁際に追いやられてしまう。
この三人組、僕よりも身長が高すぎて、妙な威圧感がある。
「じゃ、どうする? とりあえず、一発か?」
「つまんね。トイレの水持ってこいよ。でないと気が済まねーし」
そう言いながら、その内の一人が足で床をドン!と叩いた。
……やばい。やばいぞ。本当に焦ってきた。何で今まで、こんな奴らの行為に気が付かなかったんだ。
いや、落ち着け。考えるんだ、まだ方法はある。考え──。
「──何してんだよお前ら」
その低い声に、全員が反応した。
後ろから、三人組にも勝るほど背の高い、男子生徒が現れる。
「おい、誰だよお前……!?」
「あ? クソ野郎に教えてやれることはねーよさっさとどけ」
三人組はその人が近づくと、彼に怖気付き、僕から手を離して逃げ去っていってしまった。
男子トイレに二人きり。口の悪い男子生徒は、僕の目の前にやってくる。え、これまずいんじゃないか……?
……ん? この人、どこかで見た事あるような……。
あっ! 思い出した。前に村野の家で会った、髪の毛ボサボサの不良らしき人物……中島蓮木、さん。
その姿に少しだけ安堵するものの、どうしてここに……?
困惑していると、中島さんに無理やりグッと袖を引っ張られた。
「ちょっ……!?」
中島さんは黙り込んだまま、僕を男子トイレの外へと連れ出す。
男子トイレの外に着くと、彼は握っていた裾を突然離し、反動で足を崩した。
半ば強引だが……中島さんは、僕を助けに来てくれたのだろうか。
「……あ、あの。ありがとう、ございます……?」
「礼ならこいつに言えば」
「えっ」
中島さんは、右側の方を睨む。
僕も釣られて同じ方向を見る──蒼さんが、その場で心配そうにこちらを見ていた。
「あ。蒼さん」
「神崎くん、大丈夫? えっとね、たまたま廊下で見つけたんだ。神崎くんがやばそうな人たちに連れられていた所……誤解だった?」
……そうか。どうやら僕は、この二人に助けられたようだ。
余計な事をしたように申し訳なさそうな表情だったけれど、今の僕にとっては大助かりだ。
「ありがとう、蒼さん。と、中島、さん? えーと、では……!」
「え。あ、うん!」
二人には説明不足で申し訳無いけど、このままだとまた村野が殺されてしまう。
僕は急ぐように理科室へと向かった。今度こそ、間に合ってほしい……。
途中、短髪の女子高生と一人、すれ違ったような気がする。
理科室に着くと、折原と村野がそこにいた。
……非常事態だ。アザだらけの村野を棚の壁際に追いやって、両手で彼の首を絞めている状況だった。
「──や、やめてください……!!」
すぐに僕は、折原の両手を掴んで、そこから引き離す。
多少抵抗はあったものの、なんとか村野のいる棚の壁から距離をとらせることができた。
「くそっ、くそが……ッ……!!」
だめだ……いつまで折原を抑えていられるかも分からない。
それに今、村野の意識もない。もしかすればもう──。
そんな時、折原が口を開く。
「足りない……足りないんだよ……! 何度やっても、何も変わんねぇ……! 全部、お前が『俺の過去』を侮辱したせいだ……何もかもが、邪魔なんだよ!!」
「過去を侮辱した」? 何を言っているんだ……?
ただ、村野に向けた折原の怒りが、一気に溜まっていくのを感じる。
「──だったらこの世から……オマエを消し去ってやる……!!」
その瞬間、折原は感情を解き放ったかのように、強い力で僕を振り払った。
僕は再び、村野の方へと歩くやつの腕に触れ、抑えようとする。
だが、尻目でそれに気付かれ、血の巡った目付きで睨まれる。
ドゴォッ!
「っあ゛……!!」
折原に腹を蹴られてしまった。
激しい力を受けて汗が滲むほど強烈に痛い。打ち所が悪く、僕はその場に倒れ込む。
……動く事すらもやっとだ。腹を片手で抑えながら、それでも折原を止めようと手を伸ばす。
しかし、届かなかった。
折原は、僕を一瞥した。そして頭に血が上っていたのか、恐ろしい行動に出た。
椅子を使い、棚のガラスを割り、実験器具のフラスコを取り出す。細い筒の部分を持って、村野の目の前で振り上げる。
……嘘だ、まさか……!
「そ、それは……っ……止めろ……!!!」
僕は目を見開き、僅かな声を上げた。
彼は激情のままに、それを振り下ろした。
パリ──────ン!!
ガラスの割れる音が、理科室中に響き渡った。言葉になって発せられた僕の願いも、同時に呆気なく潰えた。
その末には、目を覆いたくなるほど、惨い光景が広がっていた。
───────────────────────
……自分自身が、ただ情けなくて仕方なかった。
「……神崎……くん……」
下校時間。運動場の隅に移動し、口元を押さえて一人で泣ける場所を見つける。
七瀬さんが現れたのは、その最中だった。泣いていた僕の背中を、そっと撫でている。
一人になりたかったはずなのに……彼女の優しさが、今唯一安心できるものだった。
僕は目撃した。
頭部から出た赤が、フラスコの破片と同時に飛び散ったのを。初めて現実で、そんな瞬間を目撃した。
その犠牲者も、村野だったという事が、何より僕の心を抉るようになっていた。
「……なんで村野は……なんで、なんであんな目に合わなきゃいけなかったんだよ……?」
こんなにも動揺するなんて、僕らしくもない。
──死というのは、あまりにも残酷だ。特に出血によるそれは。あの時の事を思い出す度、落涙が止まる事は無い。
ふと折原が、村野を殺す直前に言っていた事を思い出す。
『足りない……足りないんだよ……!何度やっても、何も変わんねぇ………!』
折原が……これまでずっと村野をいじめてきた意味はあったのか?
そうして村野に対して振るった力は、最悪の『結論』を生んでしまった。
こんなものと真っ向から立ち向かうなんて、今の……高校生の僕なんかには、出来ない。出来るわけがない。あんなの、もう無理だ。
僕にはもう、村野を救える気が……しない。
「──行こうよ」
「……えっ?」
「気晴らしに……どこか行かない?」
唐突な七瀬さんの言葉に、僕の涙はピタリと止まった。
その誘いの意味も分からず、七瀬さんの方を見る。
僕の方を見て、ウェーブのロングヘアを風でなびかせながら、少しだけにこっと微笑んでいる。
「どうして?」
「あ、ごめん! その……村野くんを失ったのを見ちゃったばかりで、こんなの
その時、ふと思った。こんな子がどうして僕なんかに構ってくれるのだろうか。
……ただ、苦笑いしている彼女の表情を見ていると、時間と共に少しずつ、心が癒えていた事は確かだった。
──そうか。こんな所で、僕が諦めてちゃダメだ。
現に七瀬さんを死から救って、ここに存在して、背中を優しく撫でてくれている。
これは決して、強がりなんかじゃない。今の僕にも、まだ何かやれるはずなんだ。
キーンコーン。
下校時間の夕方。とある家の前に着き、チャイムを鳴らす。すると隣の七瀬さんが、不安な様子を見せた。
「……ほ、本当に、ここで良かったの? 神崎くん」
「うん。ここで良かったよ」
「えっ。で、でもここ──村野くんの家、だよね?」
そう。僕の提案により……村野の家に、来てしまった。
七瀬さんがインターホンを鳴らすと、普通と音が違うチャイムが鳴る。
『……はい』
インターホンからは、若い少年の声がした。おそらく、村野の家族だろうか。
──いや、もしかして村野の弟?
「あのー……私たち、村野くんの友達で……」
『……開いてます、鍵』
「あ、はい!」
……いやいや、鍵掛けた方がいいんじゃないか。村野家は変わってるな。
僕らは家の中に入っていった。……確かに、鍵が開いている。本気で家の安全性が心配になった。
玄関で靴を脱いでいると、廊下の方から村野の弟がそっと現れた。
「………。」
やけに静かだ。
もしかして、人と直接話すのは苦手なタイプ……なのか?
「えっとね、この子は村野涼くん。村野くんの弟だよ」
「うん、知ってる」
「あれっ!? そうだったの、ごめんなさい」
七瀬さんも彼の事を知っているのか、ちょっと焦りながらも自己紹介をしてくれたが、その必要はない。
……初めて村野と出会った時、弟とも一度だけ顔見知りだったからだ。その時は、最低限の挨拶しか交わさなかったが。
「涼くん、今って、お父さんお母さんは家にいる?」
七瀬さんはしゃがんで、涼くんの方に真っ直ぐ目を合わせる。
すると彼は、七瀬さんを見た一瞬、ハッとした様子で目を逸らし、少し恥ずかしそうに後退する。
「……お母さんは……部屋」
はにかむように片手で口元を押さえ、彼はそう発した。
それに、急に顔が赤くなって……いや。もしかして、女子の前だと、特に恥ずかしいのか……?
ここは僕から話した方が、会話がスムーズに進みそうだ。
「お父さんは?」
「……仕事って言ってたけど。さっき帰ってきて、焦ってお兄ちゃんの学校に。お母さんと何か相談してたけど──僕にだけ、何も教えてくれなかった」
「……!」
思わず、七瀬さんと顔が合う。村野の件は既に、学校から電話が来ていたのだろうか。
村野の部屋に移動し、机の下に座って三人で会話した。ここは前も来た事がある。七瀬さん、蒼さん、中島さんと初めて会った場所だ。
「じゃ、じゃあまず何から話そっかー……?」
「そうだね……えっと」
涼くんはまだ、兄が死んだことは知らない。僕らが言わずとも、すぐに学校から電話が掛かってきた可能性はあるが……。
僕らが何を話せばいいのかと困惑していると、涼くんがその場から立ち上がる。
「──いじめのことで来たの?」
「「えっ?」」
僕と七瀬さんは、同時に驚いた。
……涼くんは、兄がいじめられている事を知っていたのか?
「そもそも前々から知ってたよ、お兄ちゃんがいじめられてた事。……前はお母さんに言っても、お兄ちゃんがそれを否定してるからって、信じてもらえなかったけど」
凛々しい表情で、涼くんはそう話す。
そう話す彼の姿は、さっきの内気な印象と打って変わっていた。
「その……いつから知ってたの?」
「ここ最近、中学校に行く途中に変な奴らに絡まれて。お兄ちゃんと同じ制服の高校生、四人」
七瀬さんは涼くんに、質問を投げかけた。
……四人ぐらいからして、折原達に違いない。でも、なんでアイツらは、村野の弟の方にまで絡んできたんだ?
「最後の方で、変なこと言われた。………お前の兄は、
涼くんはそう話した。
『お前の兄は、俺の妹を侮辱した』?そういえば折原、前にこんなことも言っていた。
『足りない……足りないんだよ……!何度やっても、何も変わんねぇ………!
全部、お前が
……折原は、過去に深い傷を抱えているんじゃないか。
そしてそれこそが、村野を恨んでいる「原因」。それを晴らす事ができれば、未来は大きく変わるかもしれない。
もしかすると、それが必ず何らかの糸口になるはず────。
「──僕、行かなきゃ。ありがとう、二人とも……!」
「うぇ!? ……あ、うん! どういたしまして……!?」
「……ん」
テンパる七瀬さんとは正反対に、黙りこんで頷く涼くん。
僕は急いで二人と別れ、自宅のポストの方を目指して走った。
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