第34話 戦闘 7
魔法協会。
人間界を現在も守護し続ける組織の主たるメンバー。
少なくとも魔法少女に携わる者は―――二頭身の可愛らしい動物たち。
所属するマジカルマスコットが、人間界中世の趣を残す城塞廊下を歩いていた。
幼い子供たちもぬいぐるみのような姿―――それを眺めるもぬいぐるみ。
魔法協会の城。
中世の趣をそのまま残し、人間界テクノロジーと無関係な社会を形成している。
魔力が生活の基盤となっている世界である。
「―――で、そのコンバットは言っていたのかネ? 自分は弱い―――なんてネ」
「
イグナシィとターゼルから
魔法少女の動向は彼らの仕事そのものである。
全ての情報を共有しろと迫られて、断れるわけもない。
メルテルも可能な限り説明する。
―――嘘はない。
しかし真実については、どうにも測れないメルテル。
「
自分の弱さを
あの日も勝利した。
しかし不満の吐露のはずのその際も、ピュアコンバット……彼女はにやけた笑みのままだった。
少女の笑みではあるはずだが、不気味さは見え隠れする。
「そのあとすぐに次の隊を討伐に向かったよ、好戦的なことだ」
もっと戦いたいとの意見だった。
弱い
★★★
「―――作戦終了だね」
「ああ、
潮風が吹き抜ける砂浜。
メルテルはグリーンの魔法少女の背に話しかける。
「今回は、二つの隊を相手取ったね―――苦戦を経験したのは初めて?」
「ふふふ」
微笑む少女と、潮風に揺れる髪。
「ははは……いやいや恥ずかしいところを見られて」
本当に困っているように言いよどむ。
ダメージを受けたのは明らかだった。
「前にも言ったけれど、キミの
「いやいや。 接近戦でも体験しておきたくてさ」
背を向けて、砂交じりの風を受け、目を細める少女。
銃の間合いの内側に、敵を入れたのは―――招き入れたのは。彼女の意思で行ったことだったらしい。
無論、ライフルが弾かれていた仕方なく、という事実はあったが。
「あーあ」
じゃこ、とアサルトライフルの銃口を青い空に向ける。
金属の隙間からさらさらと零れ落ちたのは砂。
そのまま吹かれて飛んでいく。
そんな景色を見つめながら呟く。
「他はないのかな?メルテル」
他の魔怪獣、と付け足され、彼女の意図を知る。
彼女の提案に、メルテルは少し考える。
グラトニーが戦っていないところを探さなければいけない。
「すぐに呼びだすよ、心配せずとも―――魔怪獣は多いからね」
魔法協会がしっかりと目を光らせている。
そのうちは相手などいくらでも見つかるだろう。
「ああ、ボクはあまり知らないけれど、キミだけじゃあないんだったね」
魔法協会のことについてはまだ
「もちろんだよ」
「接近戦も望みか……となると、キミのデータ集めに付き合うしかないね」
「データか……あはっ。 マッドネスみたいな言い方になるかな―――ただ、場数は踏まないといけないし」
きょろきょろと、視線を散らすコンバット。
「ああそうか、もう終わったんだった―――いいよ」
手のひらに収まるサイズの小箱、通信機に囁く少女。
砂浜に鎮座している鉄製の兵器が消えた。
砂にまみれているがゆえにカモフラージュされているが、戦車であることは間違いない。
その超重量が消えて―――降り積もっていた砂が散り渦巻く。
アサルトライフルも戦車も同じ瞬間に消えた。
メルテルは思案する。
……銃や、特殊な装甲だけじゃあないのか。
彼女の能力の本質は一体何なのだ。
考えはするもののの口を重くしてしまう。
戦ってはいるし強いのだが、彼女の柔和に微笑んでいるイメージが強く、メルテルの言葉数を減らす。
何なのだ、この少女。
「メルテル―――もっと強い魔怪獣がいて、厳しくなるかなぁ?」
尋ねてくる少女。
「……キミは、このまま終わると? あいつらはそこまで
言ってから、出まかせだった。
魔法少女として戦わなければならない、気を緩ませることはしなくないという想いはとっさに出たメルテルだ。
現状、魔怪獣のあらゆる敵、能力を退けている。
勝利は疑いようがないのはずだ。
グラトニーもマッドネスも、それぞれに尋常ではない点がある。
しかし……本当に魔怪獣討伐をする気、続ける気があるのか、この少女は?
★★★
「……何考えてるかわかんない子なんて、今までもたくさんいたヨ」
「それは……」
言われてみればそうだった。
だが気楽な返しをしてくる―――実際に見たことのない二頭からすればなんだって言える。
「―――好戦的な少女だよ、現時点では」
それぐらいしかわからない。
「でも、強いんだヨ?」
「うん……」
そのはずだ、彼女は。
しかし強いんだか弱いんだか。
確かにピュアコンバットと名付けられはしたけれど、なんだろう。
あの横顔からは連想が出来ない。
「あまり粗暴な性格でもないしね……よく笑うというか。……イマイチ格好がつかない子だよ」
そう締めくくる。
情報不足。
彼女はまだ新参者だ。
まあいい―――、まだ続いていくのだからいずれわかる。
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