第5話 大激闘の延長
シャーロットと俺の間には張り詰めた空気が漂っている。彼は何処で知った?俺は今までずっと影のように注目されないように過ごしていた。
「何処で・・・」
「私を倒したら教えてやろう。」
静かに暮らしたいなんて前言撤回だ。夢の大都市に来て何日も経ってないのに。
『お前のいる所はなんだかんだで風が巻き起こるな』
昔の仲間の声が脳裏を過ぎる。
もしかしたら、こいつは兄さんと何か繋がりがあるのかもしれない!
俺は腰の短剣をゆっくりと抜く、その光景を見てシャーロットは満足そうだ。
彼も腰の剣を抜き、いつでもかかって来いと笑顔で挑発してくる。
俺は短剣に魔力を溜めて一気に駆け出した、シャーロットもこちらと同じ速さで向かってきて、やがて剣同士が衝突する。
距離を取っては衝突しの繰り返し、俺は高速移動しながら短剣をシャーロットの胸めがけて放った。青い炎を帯びた短剣は真っ直ぐにシャーロットの方へ飛ぶ。
(今だっ)
シャーロットが短剣を避け、短剣が背後に抜けた瞬間俺は避雷針の如く短剣の場に瞬間移動した。
「何っ、ばかな」
(ここまでは調べられていないようだ)
シャーロットはその瞬間、生まれて初めて何かを見るような目で俺の技を見た。
俺の拳は間も無くして彼の頸椎に叩き込まれた。
「ドガガンッ」
シャーロットは数分前の俺と同じように吹っ飛ばされて石の壁に激突する。砂埃の中から笑い声が聞こえてくる。
「あははははっ、これは傑作だ。決めたよ、私はお前を殺して強くなる!」
シャーロットはステイタスで強化された耐性で大事には至らなかった。
「シャーロット様!いけません、これはファミリア勧誘の決闘です!それ以上はギルドの法律に違反します!!」
隊員の一人が声を張り上げてシャーロットに向かって叫んだ。
「私に指図いていい者は私だけだ!!」
砂埃の中から歩き出ながら隊員に向かって怒鳴りつける。
『まずいよ、シャーロット様ゾーンに入った。』
『先祖の血がまた騒ぎ出した』
『いつもと違うーー』
隊員たちの言葉から推測するに、彼は今先祖の血が騒ぎ出してゾーンに入っているらしい。
『ドゥガァァァァァン』
競技場の方から大爆音にライシャは反応した。
「たいちょぉぉぉぉ、大変。競技場でヨルガンファミリアがま・た・冒険者を虐めています!!」
ただのファミリア勧誘の延長戦でヨルガンが本気になってしまった事を全速力で走ってきた警備隊員が酸欠になりながら隊長のライシャに報告した。
「相手は?」
「眼帯の冒険者です、この前女の子を間一髪で助けたあの・・・ゲホゲホ」
隊員はむせ返りとうとう息をする事だけに集中する。
(眼帯の冒険者・・・)
ライシャはあの青い炎を纏った短剣を思い出す。
(何故だか、大昔に見たことがあるような・・・何だこの引っかかったモヤモヤは。)
初めてでは無い、だが思い出せない。
「決闘の鎮圧をする!ここにいるシャルトファミリアの隊員は全員向かうように!!」
今は考えている暇ではない、すぐさま決闘をやめさせなければ。
そこにいた隊員は皆競技場に向かうのだった。
「はぁ、さすがだ。」
「はぁはぁ、お前を倒して全てを話してもらう。」
両者ともボロボロ、口からは吐血した後、シャーロットの防具には傷がたくさん付いていた。ウィルに至っては防具などなく服という布が所々破れ、裂き傷から血が滲み出ている。防御魔法ガーディアンは使わなかった、キュウルを発動しない呪術には大量の体力を使う。
周りの野次馬なんてもうお構い無しだ。
(もう体力も魔力も少ない、キュウルは使えないとして、一撃分の魔力。)
短剣に少し呪力を混ぜた魔法を流し込む。
俺の攻撃魔法は呪術を流し込んだガーディアンの延長線上にある。相手の攻撃をガーディアンで阻止、それから呪力を流し込み相手の攻撃を一瞬無効化し、呪力でレベル上げもされている短剣で仕留めることが出来る。眼帯を外さなくても少々な呪術なら・・・
シャーロットの縛り上げた髪の毛はすでに乱れていて、外見などもう気にしていない様子だ。シャーロットの右に紫色の光が集まる、決着がつくのだ。
地を蹴りお互いの元へと飛びかかろうとした時、
『そこまでだ!!シャーロット・ヨルガン』
ウィルとシャーロットの元に電気魔法が撃ち込まれる。両者とも交わすことを優先させ攻撃元に目をやる。そこには右手に左手を添え構えを取っている女が二人。
「これはこれはシャルトファミリア。見つかってしまったか。」
「決闘はおしまいだ、このことはギルドに報告させてもらう。」
その二人の女の真ん中をシャルトファミリア隊長ライシャが通る。怒っている様子で片方の眉をピクピクさせ、キツイ目つきでシャーロットを睨む。
「あなたは本当に懲りない。ギルドへの報告は今回合わせて82回。」
ヨルガンファミリアは時にファミリア勧誘を装ってフリーの冒険者に腕試しを仕掛けているらしい。時には建造物を破壊したり、全く関係ない人たちにケガを負わせることがある。
俺はシャーロットの元に駆け寄り胸ぐらを掴んだ。
「はなから勧誘なんてするつもりはなかったんだろ。言え、どこで俺のことを知った?」
「その話はまた今度にしよう、たれにも言わない私たちだけの秘密だ、ウィル」
どこか面白がっているように見える。
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