第11話答え合わせする奴
「答え合わせ?」
「そうよ。答え合わせ。とりあえずどこでも好きなところで寛いで下さいな。」
杏は晃にそう言ってソファーに座る。当然のようにハンモックに座った晃を見て、杏は(この男はつくづく不安定な場所が好きなのだな。)と思う。
「時越交差点、あなたの世界では時声交差点だったって話。それは確か?」
「おかしな言い方をするね。あなたの世界だなんて、まるで世界が二つあるみたいじゃないか。」
晃は呑気にハンモックに揺られながら答える。
「二つじゃないわ。正確には無数に世界は存在するの。パラレルワールドって知ってる?」
「あのSFの世界でよく題材になるパラレルワールド?」
まだピンと来ていない晃に内心、
(何でこんなに勘が悪いの)
と思いながら杏は説明を続ける。
「そうよ。でもねパラレルワールドはただSFの題材ってわけでもないの。実際パラレルワールドの存在を信じる学者は結構いるの。この世界は実は無数の可能性で重なり合っていて、その選択の度に世界は枝分かれしていくのここまではいい?」
晃が頷いて話についてきているのを確認すると杏は続ける。
「今あなたはこうして私の家に上がり込むことに成功しているけど、きっと別のパラレルワールドでは私達は赤の他人なのよ。」
「それはきっと最低の世界だね。」
杏に出会えていない世界を想像して晃が真顔でそう言った。
晃にしては気の利いたいい返しだと思うのだが、興奮気味の杏はそれを無視して話を続ける。
「いい。これはあくまでも私の仮説なのだけど、あなたは事故がきっかけでこっちの世界に飛ばされたの。あなたが前いた世界では時越交差点は時声交差点だったのよ。」
晃の口が死んだ貝のように開けっ放しになっているのを見て杏は、
「コーヒーを入れるわ。」と言って立ち上がる。
杏はコーヒー豆を取り出しながら説明を続ける。
「つまりね。私が見た地面から生えてきた人達は何らかの理由でこちらの世界に飛ばされてしまった別の世界の人達だったってこと。どういうわけか、あなたのいた世界とわたしのいるこの世界は繋がってしまったのよ。」
「でも僕正直そんなに自信ないよ。時声交差点だった気がするってだけで、交差点の名前なんかそもそも関心なんてなかったら、もしかしたら僕の思い過ごしかもしれない・・・きっと。そうだよ。交差点の名前が一つ違うだけのパラレルワールドなんかを信じるよりも、僕の記憶違いをの方を信じる方がまだ論理的だよ。けどなんか少し怖くなっちゃったな。テレビつけてもいい??無音でこんな話するのは怖いよ。」
杏が頷くと晃は液晶テレビの電源を入れる。
「おっ。世界の先まで行って9だ。僕この番組好きなんだよね。」
「私も好きよ。はいコーヒー。」
「ありがとう。僕もいつか海外に行ってみたいな。今回はオーストラリアのタスマニアか。」
「世界の先まで行って9」は人気タレント達が世界の様々な場所で色々な企画に挑戦する番組だった。お笑い芸人が体を張る企画も多く老若男女、幅広い層に人気がある。
今回も二人が何となく眺めるテレビ画面の中で、女芸人が体を張ろうとしていた。
「今回イ〇トが餌やりに挑戦するのは、有袋類最後の肉食獣タスマニアタイガーだ。」
ナレーターが大げさな煽りが入る。
「彼女よくやるわよね。」
そう言って杏が晃のほうに視線をやると晃は食い入るようにテレビを見つめていた。
「杏ちゃん・・・僕のいた世界ではタスマニアタイガーは絶滅していたよ。」
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