第1話 小学校
あれから、今野さんたちが到着し状況を確認すると俺と今野さんはその他のメンバーを調査として残し、俺たちは小学校へと再び戻った。
道中、今野さんから何があったかを聞かれたが俺は何も知らない。
俺も、知りたい。
途中で出てきたモンスターは今野さんが代わりに狩ってくれた。
何度見ても、装備が拳だけなのに出鱈目な威力を持っている。
小学校に着くと、桐崎さんがちょうど出てきた。
桐崎さんは俺の血に塗れた姿を見て驚き、中に入れてくれた。
案内されたのは保健室。
そこで、カーテンに区切られた個室に入りタオルを受け取り頭と体を拭く。
拭いている最中、桐崎さんに今野さんと同じ説明をした。
俺が着いた時には、もう校舎は崩壊していたこと。
誰もいなかったこと。
ゴブリンの群れがいたこと。
巨大な何かが通ったような跡があること。
「そうなんですか……巨大な何かが通った跡……モンスター、ですよね」
「あぁ、そうだと思う。今残りのメンバーで中学校に避難していた人たちを捜索、その跡も調べている」
「せめて、避難していた人たちの安否でも分かればいいんですけど」
その言葉を聞いて、俺は左手に未だ持っている梨花さんの髪ゴムを握りしめる。
俺が見つけられたのはこれだけ。
梨花さん本人はどこにいるのかわからない。
もしかすると、あの瓦礫の下に埋まっているのかもしれない。
だけど、『気配察知』が全くあの周囲に反応しなかったから、生きている人はいない。
埋まっているとしたら服だけだろう。
身体を拭き終えると、汚れた服に再び着替える。
ビチャビチャしていて、臭いし、気持ち悪い。だが、他に服はないし仕方がない。
我慢して着替えると、カーテンの外に出る。
「さて、これからどうするか話し合うか」
「そうですね」
今の時刻は午後七時。
もう外は暗くなってきている。
暗い廊下を歩き、会議室に行く。
会議室は暗く、電気はつくはずもない。
「少し待ってくださいね……今電気をつけますので」
桐崎さんがそう言って消える。
『転移』でどこかに跳んだようだ。
少しして、桐崎さんが戻ってくる。
その手には明かりの付いたランタン。
それを会議室の真ん中に置くと、座った。
「もう少しで皆さんくるはずなので待ちましょうか」
その桐崎さんの声とともに、俺は今野さんと共に会議室の前方の席に座る。
服は全く乾いておらず、不快感がすごい。
梨花さんがいなくなったことと合わせて、俺の心にダメージが入る。
「はぁ、はぁ……ただいま戻りました……今野さん」
服を摘んでいると、会議室の扉が勢いよく開いた。
そこにいたのは中学校に置いてきた人たちの一人。
「戻ったか……それで、どうだった?」
「は、はい……人が死んだ時に残る服は一着もなく、あの崩壊が起きる前に高確率で全員が逃げたと思われます。ただ、どこに向かったのかは分からず……」
その言葉を聞いて、俺は席を立つ。
誰も死んではいない? それなら、梨花さんは生きている?
それなら……早く探さないと。
「あの、今野さん。桐崎さん……俺、探しに行っていいですか?」
席を立ったまま、俺は二人を見る。
自分勝手なのはわかっている。だが、俺は早く梨花さんを助けにいきたい。
それに、ここには何人か残った方がいいだろう。
また中学校を崩壊させた奴が来ないとは限らない。
「……ダメだ」
今野さんが俺を見てそう言う。
その目はとても厳しいものだ。
「どうしてですか? 早く探さないと、みんなモンスターに殺されるかも……!」
「冬哉一人だとダメだ。危険すぎる」
「まぁまぁ、いいじゃないですか」
今野さんが否定する中、桐崎さんは逆に賛成の方らしい。
「三神くんは『転移』が使えますよね? 危ないと思ったらすぐに『転移』で戻ってきてください。それなら大丈夫でしょう?」
確かに。それなら危険はない。
「むぅ……確かに、それなら危険はないな……だが残念ながら、俺たちも捜索はしようとは思うがここも壊されるかもしれん。先にここの人たちをダンジョンに送ってからになる」
「私も、ここの人たちをダンジョンに送らないといけません……なので、捜索出来るかどうか……なので、三神くん。押し付ける形で悪いのですが、お願いしてもいいですか?」
そうなるか……確かにここも壊されるかもしれないな。
捜索は、実質俺だけ。
時間が経つにつれて皆んなが生きている確率も低くなる。
早く見つけ出さないと。
「わかりました。みんなを見つけてきます」
「ええ、お願いします。ただ……今日はしっかりと疲れをとって明日出発してください。今日は疲れたでしょう? 寝る場所は保健室を使ってください」
「はい……」
「この後の話し合いは、私たちだけで行うので休んでいていいですよ」
「ありがとうございます」
桐崎さんの気遣いにより、俺は会議室を後にして保健室へと戻る。
保健室に戻ると、俺は汚れた上着を脱ぎ少し早いが布団へと入った。
明日は朝早く時自分の家に戻って服を着替えてから捜索するために。
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