第34話 強化



 重い足を引きずりながら、俺は丘の上へと戻る。

 そこから見えるのは、減った様子がないモンスターの大群。

 そんなモンスターの大群の先頭を見てみると、入り口付近に作った堀の手前で血飛沫がここからでもわかるくらいに舞っている。


 一体、あそこで何が起こっているんだろうか。

 

 そう思って、モンスターの先頭を見ていると、大群の中から轟音が鳴り土煙が舞っている。

 ここからでも、その場所で起きていることを見ることができた。

 あそこにいるのは今野さんだけ。


 今野さんがモンスターの大群を相手に、拳だけで切り抜けようとしている。


 ということは、入り口のところにいるのは桐崎さんだろうか?

 いや、逆にこんなことをできるのは桐崎さんしかいないだろう。


 それよりも……早く、救援に行かないと。


 MPは先ほどより回復していて、身体の調子も良くなってきている。

 あと5分もすればあのゴブリンやオオカミの大群と戦える程度には回復するだろう。


 その間の5分。見ているだけは心苦しい。

 だが、こんな状態の俺が行っても返って桐崎さん達の負担が増えるだけだ。

 それならば……残り5分。俺はオーガとの戦闘でレベルが上がったのでSPを振り分けよう。


 ステータスを開いて、どれくらいレベルが上がったのかを確認する。

 確か、前に見た時はレベル12くらいだったはず……。


「結構上がってる……」


 ステータスを開くと、目に入ったのは『20』という数字。

 レベルが20になっていた。

 オーガを倒すだけで、レベルが8も上がったことになる。


「それにしても……ステータス何に振ろうかな……」


 今日、魔法を本格的に戦闘に組み込んで使ってみたが魔力が全く足りなかった。

 いや、俺はこれでも魔力が結構多い方だ。

 問題は、俺の魔法は使うたびに膨大な魔力を使うということ。


 その問題を解決するために、MPは上げたい……けどな……。

 MPを10とか上げたところで、『転移』が二回分使える回数が増えるだけ。

 『アクセル』を使えば、10なんてあっという間だ。

 

 そのほかのステータスだが、オーガと戦ってみた感じ力が足りないと感じた。

 いや、足りないのは技量か? 桐崎さんはあのオーガの首を両断したし……いくら俺がユニークスキルを持っているからと言っても、俺本人はまだまだ未熟だ。

 これは今後の課題だな。


 その他は今のところ大丈夫だとして……まずはJPを使って職業のレベルを上げるか。

 現在のJPは20。次のレベルに上がるためには10必要だ。


 早速レベルを上げると、HP、MP、LUK以外の全ステータスに(+20)がついた。

 20の補正は、結構ありがたい。

 現在のINTは19。補正が20と実質二倍になった。これならば、上げなくてもいい。


 それにしても、INTって俺にあまり関係がないステータスだ。

 INTは魔法の威力に作用する項目で、俺の場合威力とかそもそもの問題、魔力を放出することができない。

 俺が使うのは純粋な『強化』だ。なので、この項目は俺には必要ないもの。



 戦場に目を移すと、そこは未だモンスターの大群がいる。

 今野さんと桐崎さんがものすごいスピードで減らしているので、モンスターは実際には減っている。

 だが、どちらも体力がいつまで続くか分からない。

 早く行かないと……。


 MPを見るが、まだ8しか回復していない。

 それに、まだ身体の調子も戻っていない。しかし、そんなことも言ってられない。

 MPが10まで回復して身体の調子が悪くても俺は行く。

 それまでに、なんとかステータスを強化する。


 スキルの欄をタップして、何かいい物はないかと見る。

 職業のレベルを上げたから、何かいいものがあるはずだ。



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取得可能スキル

 ・調理 (50)

 ・投擲 (50)

 ・格闘術 (50)

 ・ストレス耐性 (50)

 ・恐怖耐性 (50)

 ・索敵 (50)

 ・地図作成 (50)

 ・採取 (50)

 ・罠設置 (50)

 ・罠解除 (50)

 ・挑発 (50)

 ・夜目 (50)

 ・毒耐性 (50)

 ・麻痺耐性 (50)

 ・痛覚耐性 (50)

 ・HP回復力強化 (50)

 ・MP回復力強化 (50)

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「よしっ!」


 いいものだ。確実にいいものがあった。

 『MP回復力強化』! これがあれば回復力が上がる!


 その他に『HP回復力強化』もあるが、今はMPだけでいい。

 即座にSP50を使ってスキルを取り、残りを考える。


 残り50。これは一体何に使おうか……。


 そう考えた結果、俺のステータスはこのようなものとなった。

 

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 名前:トウヤ ミカミ

 年齢:16歳

 種族:人族

 職業:冒険者 Lv.5


 Lv.20

 HP 40/40

 MP 12/100


 STR 50 (+20)

 DEF 46 (+20)

 INT 19 (+20)

 AGI 61 (+20)

 DEX 30 (+20)

 LUK 68


 SP:0

 JP:10


 スキル

 ・精神強化 Lv.2

 ・危険察知 Lv.2

 ・気配察知 Lv.2

 ・MP回復力強化 Lv.1


 ユニークスキル

 ・刃神 Lv.1


 称号

 ・地球の加護

 ・人殺し

 ・ジャイアントキリング


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 オーガとの戦いで、俺の持っていたスキルはユニークスキル以外レベルが上がった。

 いや、もしかするとその前にレベルが上がっていた、もしくは戦いの最中にレベルが上がったのかもしれない。

 でなければ、俺はオーガの攻撃を回避できなかっただろう。


 MPを見てみると、10を過ぎている。

 身体はだるいが、それも今取った『MP回復力強化』がいつもより早く回復してくれるだろう。



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スキル 『MP回復力強化』

 MPの回復速度を上昇させる。


 レベル1……50秒で1%回復


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「それじゃあ……いきますか」


 荷物はここに置いておこう。ここなら、いつでも取りにくることができるからな。

 全ての荷物を地面に置き、オーガの棍棒から出てきた短剣を握りしめる。


 この真っ赤な短剣を握ると、不思議と力が湧いてくる。

 それが、とても気持ちがいい。


 足に力を入れ、上げたステータスを引き出し丘を降りる。


 丘を降るスピードが速過ぎて最初足がもつれていたが、それも段々と慣れモンスターの大群へと飛び込んだ。

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