第30話 ダンジョン
あれから、すぐに塔についた。
塔に着いて、上を見上げる。
「頂上が見えないな……」
東京スカイツリーでも頂上は見えたぞ? この塔はそれよりもでかいのか。
外観をよく見ると、壁一面には絵が描かれている。
絵を見ると、ドラゴン? のようなものが空を飛び、人々を焼き払っている絵が目に入る。その周りには、ゴブリンのようなモンスターも、鬼もいる。
「ダンジョンの入り口に着いた」
先頭の今野さんが立ち止まり、後続の俺たちは止まる。
ダンジョンを見てみると、確かに大きな入り口がある。
扉は開いたままだ。
「ここからダンジョンの中に入れる。この先は草原だ」
大きな入り口を見据えて今野さんは言う。
正直あの画像で見たから知ってはいたが、こんなにも入口はでかいのか。
これじゃあまるで、モンスターが出入りすることを考えたような大きさだ。
あの鬼も余裕で通れるサイズだ。
入り口を覗いてみる。
中は真っ暗で何も見えない。
この先に、草原があるとは普通に想像がつかない。
しかし──
風が、こちらに吹いてきている。
普通、室内の風がこちらに吹いてくると言うのはないと思う。
外から中に風が吹くことはあるかもしれない。しかし、中から外に向かって吹いてきているんだ。
「さて、行きましょうか」
桐崎さんが刀を左手でそっと触りながら、右手で眼鏡を直し言う。
そして、今野さんが再び先頭に立って入り口へと入った。
入り口の巨大な扉を潜る。
潜った瞬間、明らかに空気が変わった。
なんか、空気が少し重い。
奥に目を向けると、先ほどは真っ暗だった道の先に光が見える。
「これが……建物の中?」
そう呟いたのは、誰だろう。
しかし、誰もがこう思ったはずだ。
なんでここに草原が? と。
俺も思った。事前情報があっても、やはりどこか信じられず、実際に目にしてようやく知る。
爽やかで、暖かな風が吹いている。
風が吹くたびに、草原に覆い茂っている草木や花は揺れ、穏やかな気持ちにしてくれる。
「ここに出現するモンスターはウサギだけだ。といっても、角ありと角なしの二種類だけどな」
草原を見回すと、ちょうど角ありのウサギが草原をかけているところだった。
ウサギ……だよな? だけど明らかにサイズがおかしい。人間の子供くらいか?
「ちなみに、あのウサギを狩ると肉がドロップするぜ」
「そうなんですね、ちなみにどれくらいの確率で?」
「今んとこは十割は肉だな……確実に肉が出るからありがてぇ」
「なるほど……聞いた限り安全そうですね。少しこの階層を見て回って、どの辺に避難所を作るか考えますか。それで、こんなに人数が一緒にいても効率が悪いので二人一組になって行動しましょう」
そうして、俺はなぜか桐崎さんと一緒になった。
俺と桐崎さんが一緒だと、戦力に偏りがあるんじゃないか?
ちなみに、決め方は五人五人でジャンケンをし、同じ時に負けた二がチームという決め方だ。
「みなさん腕時計は持っていますね? それでは……五時ごろにこの入り口に集合ということで……解散!」
桐崎さんはそういって、みんながグループごとに行動し始めた。
現在の時刻は午後三時半。小学校を出発してから三十分が経過している。
「それじゃあ、少し走りますか」
「……え?」
桐崎さんが俺の方に来ると、いきなりそう呟いていなくなる。
え? なんで急に走るの⁉︎
とりあえず、『転移』を利用して桐崎さんとの離れた距離を限りなくゼロにする。
使ってみて気がついたが、『転移』は目に見える範囲だとすぐに飛べるらしい。
さっきはどこに飛ぶかにもイメージしたから遅かったが、今回は早い。
それに、MPを右端を意識してみてみるが消費も5と同じだ。
「あの、どうして走るんですか!」
走りながら、桐崎さんに向かって質問する。
避難所を作る場所なんて入り口近くでいいのに!
「私と三神くんが一緒の班ということは、多少遠くへ行っても『転移』があるのですぐに帰れます。それに、戦力的にも安心です」
「それで、遠くへ行って何するんですか!」
ウサギを無視して、ひたすらに走り続ける。
「決まっているでしょう? この階層が安全だということを確かめに行くんですよ」
桐崎さんのスピードが上がる。
安全かを確かめるのに、なんでこんなに奥へ来るのか。
川を飛び越え、丘を越え、走り抜ける。
そういえば、川の端っこってどうなっているんだろう?
ここはダンジョンの中だから、どこかで途切れているんだろうか?
「止まってください」
10分程度走っていると丘の途中、桐崎さんが静止の声をかけた。
その声と共に止まると、桐崎さんが丘の向こう側に視線を向けた。
「あれは……森、ですね」
「はい、おそらくこの1階層の大半は草原でしょう。しかし、ここからみる限り森の範囲も広いです……少しあの森を探索してみましょう」
再びそう言って走り出す。
丘を下り、川を越え森に着く。
森の木は、普通の木に見える。
大きさも普通くらいだ。
「行きましょう」
木々が揺れ、鳥が飛んでいる。
あの鳥も……モンスターなのだろうか?
「はい」
右手に持った片手剣を少し構えながら歩く。
何が出てきても、対応できるように。
森は、道がない。
草原よりも草木が多く、高さがある。
足もとも悪い。
でも、避難所ができたらこの森に木を取りに来ることもあるだろう。
そのために、安全かどうかを確かめないと。
「ストップ」
桐崎さんが手を挙げ、止まる。
その時、俺の『気配察知』にも反応があった。
この反応は……
「ゴブリン……ですね」
「はい。森にゴブリンがいた……それだけでも収穫です」
桐崎さんが刀を構えたまま一気に飛び出し、ゴブリンに接近。
ゴブリンの首が飛んだ。
刀を少し鞘から出したのはわかった。
しかし、それを認識した途端ゴブリンの首が飛んで、桐崎さんをみると刀をの汚れを布で拭き取って鞘にしまう所だった。
「さて、行きましょう」
何事もなかったかのように戻ってくる。
桐崎さんだったら何十体のモンスターでも相手にできそうだ。
森の中をまた進んでいく。
そこで、気がついた。
「桐崎さん、この辺草木が分けられた跡がありますね」
「はい、おそらく私たちがここにくる前に入ってきた人がいるか……またゴブリンでしょう」
その跡は俺たちが進む方向とおなじであり、いずれ出会うだろう。
「誰か……助けて!」
男の声が聞こえた。助けを呼ぶ声だ。
その声はこの跡の先から聞こえた。
「行きますよ!」
「はいッ」
足元に群がるように絡みついてくる草を力任せに振り切り、走る。
木々もかわし、開けたところに出た。
そこには、ゴブリンが三体いて男の人が囲まれている。
「はあッ!」
「ふッ!」
そのゴブリンを、俺と桐崎さんで切り倒す。
ちなみに、俺が一体倒す間に桐崎さんは二体倒していた。
「あの……ありがとうございます」
「いえいえ、それよりもなんでこんなところに……?」
桐崎さんが男の人に声をかける。
その間、俺はゴブリンの魔石を回収し──
──全身に、鳥肌がたった。
反応したのは『危険察知』。
この森の奥から危険を感じる。
そして……『気配察知』には大多数のモンスターの反応があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます